《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第97話~アムマイトVS蜥蜴族~
その義妹の名前を聞いてみた。シド・アライン――というらしかった。都市サファリアのシラティウス宛てに、シド・アラインから手紙が来たらしい。
その手紙の内容に、「私はあなたの義妹であり、あなたを憎んでいる」……などというようなことが、ツラツラ書かれていたということだ。
で――。
その手紙に誘われて、シラティウスはひとりでここまで来たのだ。
セイとシラティウスは岸辺に腰を落としていた。セイはあぐらをかいていたのだが、そのフトモモにシラティウスは小さい頭を乗せていた。
霧けぶる向こうに、目をこらせば水平線が見える。
「その手紙、なんかウサンクサイな」
「ウサンクサイ?」
「怪しくないか? そもそもホントウにシラティウスの父親が不倫していたのかも、定かじゃないんだろ」
「私はパパのことをよく知らないから、わからない。だけど、私が人間とドラゴンの子どもだって知っている人は少ないから」
「そうか」
じゃあ手紙を送りつけてきた、シド・アラインなる人物は、ホントウにシラティウスの義妹なのかもしれない。
仮にそうだったとしても、それでもシラティウスを憎むというのは、筋違いではあると思うが。
「ホントウに来るのかな」
蜥蜴族の集落にも、自分以外の人族の姿をセイは見かけなかった。誰かが訪れたという話も耳にしていない。恨みを晴らすべく現れるというのならば、早々に現れてもオカシクはないように思う。
待った。
あわただしい足音が聞こえてきた。
そのシド・アラインが来たのかと思って身構えたのだが、やって来たのは数人の蜥蜴人だった。
蜥蜴族の集落がアムマイトの襲撃に遭っている。援護して欲しいということだった。
「オレは一度、蜥蜴族の集落に戻るけど、シラティウスはどうする?」
「私も行く」
「待たなくても良いのか?」
「私がいなかったら、向こうも待つと思うから
「それもそうだな」
セイとシラティウスはすぐに、蜥蜴族の集落に戻った。浜辺にあった藁ぶき屋根の建物がいくつか倒壊していた。アムマイトの蹂躙に遭っているのだ。蜥蜴人たちは手に武器を持って、アムマイトと応戦していた。
「私がドラゴンになって」
と、シラティウスが勇む。
あわてて止めた。
「待て待て。こんなところでドラゴンになったら、周囲に被害がおよぶだろ」
実際に、カールとクロニルという双子が、シラティウスの爪に触れたというだけで、重症を負っているのだ。
「……たしかに」
「オレがなんとかするから、オレから離れるなよ」
「うん」
浜辺を駆ける。
桟橋があった。橋の上ではティルとアムマイトが交戦していた。アムマイトが浜辺側にいて、ティルは海辺側に追い詰められていた。セイはアムマイトの背後からしのびより、槍でアムマイトのことを海中にたたきこんだ。
ザバーン。
巨大な水しぶきがあがった。
「大丈夫ですか?」
「すみません。助かりました」
「援護します。――しかし、それにしても、この辺りはアムマイトが多いんですね」
もともと蜥蜴族の男がモンスターになっているのだから、多いのは当たり前と言えば、当たり前だ。獣人族のあたりが穏やか過ぎたとも考えられる。
「誰かが呼び寄せたようです」
「呼び寄せた?」
「蜥蜴族は音でヤリトリすることが多いと言ったでしょう」
海に落としたアムマイトが、不意に海の底から跳びだしてきた。セイは槍でふたたび突き落とした。緑色の血が海辺に広がった。
お見事――とティルは感心したように言った。
「それで?」
「アムマイトを呼び寄せる音を発している者が、集落の中にいるようなのです」
「そ、そんなことしますか?」
内側に入り込み、敵を招き入れる。人間の戦争ならよくある。いわゆる内応だ。あらかじめ自分の手の者を忍び込ませておいて、内側から城門を開けさせたりする。姑息な手段ではあるが、よく使われる手だ。
が――。
それは人の戦争に言えることだ。
モンスターの手引きをするようなヤツがいるとは思えない。
「また、聞こえる」
ティルが耳もとに手を当てていた。
セイも耳をすませてみる。
アムマイトと蜥蜴人のいさかいのなかに、たしかに笛の音のような独特な音がまじっていた。その音が響くと、アムマイトはどうやら興奮するようだ。
「蜥蜴族長のフィーは?」
「わかりません。はぐれてしまいました。今、探しているところなのですが」
「この隙に族長の〝封印〟を奪われてしまっては大変です。すぐに見つけ出しましょう」
「ええ」
その手紙の内容に、「私はあなたの義妹であり、あなたを憎んでいる」……などというようなことが、ツラツラ書かれていたということだ。
で――。
その手紙に誘われて、シラティウスはひとりでここまで来たのだ。
セイとシラティウスは岸辺に腰を落としていた。セイはあぐらをかいていたのだが、そのフトモモにシラティウスは小さい頭を乗せていた。
霧けぶる向こうに、目をこらせば水平線が見える。
「その手紙、なんかウサンクサイな」
「ウサンクサイ?」
「怪しくないか? そもそもホントウにシラティウスの父親が不倫していたのかも、定かじゃないんだろ」
「私はパパのことをよく知らないから、わからない。だけど、私が人間とドラゴンの子どもだって知っている人は少ないから」
「そうか」
じゃあ手紙を送りつけてきた、シド・アラインなる人物は、ホントウにシラティウスの義妹なのかもしれない。
仮にそうだったとしても、それでもシラティウスを憎むというのは、筋違いではあると思うが。
「ホントウに来るのかな」
蜥蜴族の集落にも、自分以外の人族の姿をセイは見かけなかった。誰かが訪れたという話も耳にしていない。恨みを晴らすべく現れるというのならば、早々に現れてもオカシクはないように思う。
待った。
あわただしい足音が聞こえてきた。
そのシド・アラインが来たのかと思って身構えたのだが、やって来たのは数人の蜥蜴人だった。
蜥蜴族の集落がアムマイトの襲撃に遭っている。援護して欲しいということだった。
「オレは一度、蜥蜴族の集落に戻るけど、シラティウスはどうする?」
「私も行く」
「待たなくても良いのか?」
「私がいなかったら、向こうも待つと思うから
「それもそうだな」
セイとシラティウスはすぐに、蜥蜴族の集落に戻った。浜辺にあった藁ぶき屋根の建物がいくつか倒壊していた。アムマイトの蹂躙に遭っているのだ。蜥蜴人たちは手に武器を持って、アムマイトと応戦していた。
「私がドラゴンになって」
と、シラティウスが勇む。
あわてて止めた。
「待て待て。こんなところでドラゴンになったら、周囲に被害がおよぶだろ」
実際に、カールとクロニルという双子が、シラティウスの爪に触れたというだけで、重症を負っているのだ。
「……たしかに」
「オレがなんとかするから、オレから離れるなよ」
「うん」
浜辺を駆ける。
桟橋があった。橋の上ではティルとアムマイトが交戦していた。アムマイトが浜辺側にいて、ティルは海辺側に追い詰められていた。セイはアムマイトの背後からしのびより、槍でアムマイトのことを海中にたたきこんだ。
ザバーン。
巨大な水しぶきがあがった。
「大丈夫ですか?」
「すみません。助かりました」
「援護します。――しかし、それにしても、この辺りはアムマイトが多いんですね」
もともと蜥蜴族の男がモンスターになっているのだから、多いのは当たり前と言えば、当たり前だ。獣人族のあたりが穏やか過ぎたとも考えられる。
「誰かが呼び寄せたようです」
「呼び寄せた?」
「蜥蜴族は音でヤリトリすることが多いと言ったでしょう」
海に落としたアムマイトが、不意に海の底から跳びだしてきた。セイは槍でふたたび突き落とした。緑色の血が海辺に広がった。
お見事――とティルは感心したように言った。
「それで?」
「アムマイトを呼び寄せる音を発している者が、集落の中にいるようなのです」
「そ、そんなことしますか?」
内側に入り込み、敵を招き入れる。人間の戦争ならよくある。いわゆる内応だ。あらかじめ自分の手の者を忍び込ませておいて、内側から城門を開けさせたりする。姑息な手段ではあるが、よく使われる手だ。
が――。
それは人の戦争に言えることだ。
モンスターの手引きをするようなヤツがいるとは思えない。
「また、聞こえる」
ティルが耳もとに手を当てていた。
セイも耳をすませてみる。
アムマイトと蜥蜴人のいさかいのなかに、たしかに笛の音のような独特な音がまじっていた。その音が響くと、アムマイトはどうやら興奮するようだ。
「蜥蜴族長のフィーは?」
「わかりません。はぐれてしまいました。今、探しているところなのですが」
「この隙に族長の〝封印〟を奪われてしまっては大変です。すぐに見つけ出しましょう」
「ええ」
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