《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第92話~蜥蜴族の集落へ~

 森の中を駆けた。



 アムマイトから逃げることはできなかった。怖ろしい速さで追いかけてくる。フィーは四足歩行で素早く駆けるのだが、見知らぬ土地なうえに、足場が悪いので、セイはそれほど敏捷びんしょうに動けなかった。



 男の姿ならもう少しは駆けることができたかもしれないが、胸や尻の肉が邪魔だ。



「早く逃げないと、食われてしまいますよ――とフィーは忠告します」



 感情の起伏がない。
 フィーは淡々とそう述べる。
 どことなくシラティウスの口調を彷彿ほうふつとさせられる。



「わかった。私が倒すことにする」
 セイはそう言って、向かってくるアムマイトにカラダを向けた。



「それは、やめたほうが良いのです」
「もしかして、知り合いの蜥蜴人なのか?」



 知人がモンスターになったのであれば、殺したくないはずだ。



「そうではないのです。蜥蜴族の者たちは、ただでさえ人族よりも運動神経にすぐれている。それがアムマイトになって、さらに強くなっている。人族の勝てる相手ではない。やめたほうが良いとフィーは助言するのです」



「いや。問題ない」



 アムマイトが、セイたちに向かって猛進してくる。



 龍になる必要はなさそうだ。〝怪力印〟のチカラさえあれば、なんとかなりそうだと踏んだ。



 セイは槍を構えた。



 腰を低くする態勢はいまだに、改善されていない。改善どころか最近は、実戦が多くて、むしろこの構えがシックリくるようになっていた。キリアにも何度か稽古をつけてもらっているのだ。



「グラァァァ――ッ」
 アムマイトがワニの口を開けた。



 上下にパックリと割れた口の中には、鋭いキバがビッシリと生えていた。たしかにオドロオドロしい見た目をしているが、ケルベロスやドラゴンに比べれば威圧感はすくなく感じられた。



「行くぞ」
 セイも駆けた。



 穂先側をにぎる左手は添えるだけだ。石突き側をにぎる右手にチカラを込めた。全力を込めて槍を滑り出させる。槍がアムマイトの大きく開いた口の中に刺しこまれた。



 緑の血。吹き上がる。致命傷にはいたらなかったようだ。アムマイトは激しく身動ぎした。



 槍をすぐに引き戻す。



 この引き戻しがセイは苦手だった。槍は突きだすという仕草のため、どうしても突いた後が隙だらけになる。引くことこそが、槍の神髄と言っても良い。敵に隙を与えないために、素早く引き戻すことが肝心なのだ。



 ふたたび、構える。
 もう一度突いた。



 今度はアムマイトの獰猛な光をやどした瞳を突いた。



「ギエェェェッ」
 断末魔。



 まずは1匹。
 返り血がセイを緑色に染めた。



 残る2匹は怯えるように2、3歩後退した。セイは槍を構えつつ慎重に間合いをはかった。



 風に吹かれたのか木の葉が数枚落ちてきた。それを合図にセイは駆けた。槍。突き出す。アムマイトはあわてたように、横に跳び退いた。アムマイトのライオンのような胴体を、穂先がかすめた。



 2匹のアムマイトは、背を向けて退散していった。
 逃げたのだろう。



 別に仕留める必要はないので、深追いすることはない。



「とりあえず、これで安全だろう」
「すごい……。あなたはいったい何者なのです?」



 相変わらず抑揚のない声で尋ねてきた。が、尻尾が激しく揺れて低木を激しく揺らしていた。興奮すると尻尾を揺らす癖があるのかもしれない。



「悪い。名乗り遅れた」



 レフィール伯爵のキュリンジ城から来ており、今は都市サファリアの冒険者をやっているクロカミ・セーコだと名乗った。



「聞いたことあるのです。なるほど、あなたがウワサの《キングプロテア級》の冒険者でしたか」



「ウワサ?」
 こんなところにまで、オレのウワサが伝わっているのかとセイはドキッとした。実は男だという情報が広まっているんじゃないかと危惧したのだ。



「8獣長のニヤ・ノ・レから手紙をもらったのです。近日中に、クロカミ・セーコという女が行くはずだから、歓待してやれ――と」



「そうだったのか」



 獣人族の里に行ったときは、ホントウに8獣長の自覚があるのか疑わしいものだった。だが、そういった手配をしてくれていることを考えると、さすがだ。



「あまり関係ないことなんだけど」
「なんです?」



「獣人族や蜥蜴族も手紙でヤリトリしてるのか?」



 人族もふつうは郵便配達人が手紙を運ぶ。レフィール伯爵のように連絡能力に特化している人間は決して多くないのだ。



 ただ、例外はある。シルベ教は各地に教会を持っており、各教会から即座に情報を発信できるようになっていると聞いたことがある。きっと情報を扱うのに長けた印の持ち主が、シルベ教にはいるのだろう。



「フィーは……フィーは詳しいことはわかりません」



 何かヤマシイことでもあるかのように、フィーは顔をそむけた。



「そうなのか」



 もしかすると蜥蜴族ならではの、極秘の情報網があるのだろうか。他人に打ち明けられない事情があるのだろう。



 幼いように見えるが、いちおうは族長。まさかホントウに自分の種族の情報伝達方法を知らないことはないはずだ。



「とりあえず、襲われていたところで割りこめて良かった。蜥蜴族の住処までは、オレが護衛させてもらうよ」



 最後の〝封印〟でもある。
 容易に奪われてはならない存在だ。



「よろしくお願いします。と、フィーは頭を下げるのです」



 ペコリ。

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