《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第87話~怪我をした物書き~
出汁巻き卵を食べて、カルボナーラをすすっていた。他の冒険者たちも少しずつ、ギルドにやってきた。朝食を食べている者もいれば、クエストボードを見つめている者もいた。トウゼンながら、全員が女性だ。
「そう言えば、今朝がた物書きがケガをしたらしいよ」
と、不意にエインが話題を切り出した。
「こんなご時世に物書きがいるんですか」
セイは、多少驚いた。
物書きを軽んじるわけではない。むしろ不思議なことに、時代が陰惨で暗くなるほど、フィクションは求められる。物語を語る者は、牢獄でも人気になる。ただ、この状況でもめげずに物語を書いている者がいるというのは、意外でもあった。
「知らなかったの?」
と、エインが意外そうな声をあげた。
「エインは知ってるんですか?」
「サファリアではかなり有名な物書きだよ。男性をいろいろとエッチな目に遭わせる物語なんだけど……」
「げほォ」
食べていたカルボナーラをノドにつまらせてしまった。
「たしか〝英雄印〟を持つ男も物語に出てきたはずだよ」
「ぐはァッ」
あわてて飲んでいた水も、吹き出してしまった。
「大丈夫かい?」
と、セイの反応を面白がるように、エインは見ていた。
「その物語の中で、〝英雄印〟を持つ男はどんな目に遭わされてるんです?」
私もちょっと興味あるんで、と怪しまれないように付け加えておいた。
「たとえばねぇ、縄で縛りあげて……」
「やっぱりいいです」
あわてて遮った。
聞かないほうが良さそうだ。
「そういう物語のひとつやふたつないと、やってけないんだよ。男がいないんだから」
はあ、とエインは艶然とした吐息を落とした。
「エインはそれを読んでるんですか?」
セイは吹き出した水を、フォルモルがハンカチで拭き取ってくれていた。
繊細な問題だったのかもしれない。エインはやや顔を赤らめた。
「私だけじゃないよ。みんな読んでるよ」
「みんな?」
セイの服を拭いてくれているフォルモルの顔を見つめた。
「ええ。全巻買ったわよ。宿に置いてるもの」
とフォルモルは平然とこたえる。
こういうことに動揺しないのは、さすがフォルモルだ。
キリアだって熱心に読んでるし――とフォルモルが付け加えると、今度はキリアが水を吹き出していた。
「わ、私は、気になってちょっと手に取ってみただけだ」
「あら、鼻息荒げて読み進めてたくせに」
フォルモルがからかっている。
「ウルサイッ」
キリアは顔を真っ赤にして、うつむいてしまった。
話がそれている。
セイが軌道修正することにした。
「それで、どうしてその物書きがケガを?」
「ああ。なんだか、ドラゴンに襲われたとか――って話だよ。たしか《セルヴィル薬剤店》どことの双子じゃなかったかな。しかし、ドラゴンなんてホントウにいるもんなんだねぇ」
エインは感心するように言った。
ドラゴン――。
気になる。
「ちょっと詳しく教えてもらっても良いですか?」
と、セイは身を乗り出した。
「いいよ」
と、エインは快くうなずいてくれた。
クロニル・セルヴィルという物書きと、カール・セルヴィルという薬師がいる。双子らしい。2人は《セルヴィル薬店》という店を構えている。そこの妹であるクロニルがドラゴンに襲われたということだ。
「私が聞いたのは、それぐらいだよ」
と、エインは話をむすんだ。
白いドラゴンというのは、シラティウスのことだろう。
その2人から話を聞いてみる必要がありそうだ。
「そう言えば、今朝がた物書きがケガをしたらしいよ」
と、不意にエインが話題を切り出した。
「こんなご時世に物書きがいるんですか」
セイは、多少驚いた。
物書きを軽んじるわけではない。むしろ不思議なことに、時代が陰惨で暗くなるほど、フィクションは求められる。物語を語る者は、牢獄でも人気になる。ただ、この状況でもめげずに物語を書いている者がいるというのは、意外でもあった。
「知らなかったの?」
と、エインが意外そうな声をあげた。
「エインは知ってるんですか?」
「サファリアではかなり有名な物書きだよ。男性をいろいろとエッチな目に遭わせる物語なんだけど……」
「げほォ」
食べていたカルボナーラをノドにつまらせてしまった。
「たしか〝英雄印〟を持つ男も物語に出てきたはずだよ」
「ぐはァッ」
あわてて飲んでいた水も、吹き出してしまった。
「大丈夫かい?」
と、セイの反応を面白がるように、エインは見ていた。
「その物語の中で、〝英雄印〟を持つ男はどんな目に遭わされてるんです?」
私もちょっと興味あるんで、と怪しまれないように付け加えておいた。
「たとえばねぇ、縄で縛りあげて……」
「やっぱりいいです」
あわてて遮った。
聞かないほうが良さそうだ。
「そういう物語のひとつやふたつないと、やってけないんだよ。男がいないんだから」
はあ、とエインは艶然とした吐息を落とした。
「エインはそれを読んでるんですか?」
セイは吹き出した水を、フォルモルがハンカチで拭き取ってくれていた。
繊細な問題だったのかもしれない。エインはやや顔を赤らめた。
「私だけじゃないよ。みんな読んでるよ」
「みんな?」
セイの服を拭いてくれているフォルモルの顔を見つめた。
「ええ。全巻買ったわよ。宿に置いてるもの」
とフォルモルは平然とこたえる。
こういうことに動揺しないのは、さすがフォルモルだ。
キリアだって熱心に読んでるし――とフォルモルが付け加えると、今度はキリアが水を吹き出していた。
「わ、私は、気になってちょっと手に取ってみただけだ」
「あら、鼻息荒げて読み進めてたくせに」
フォルモルがからかっている。
「ウルサイッ」
キリアは顔を真っ赤にして、うつむいてしまった。
話がそれている。
セイが軌道修正することにした。
「それで、どうしてその物書きがケガを?」
「ああ。なんだか、ドラゴンに襲われたとか――って話だよ。たしか《セルヴィル薬剤店》どことの双子じゃなかったかな。しかし、ドラゴンなんてホントウにいるもんなんだねぇ」
エインは感心するように言った。
ドラゴン――。
気になる。
「ちょっと詳しく教えてもらっても良いですか?」
と、セイは身を乗り出した。
「いいよ」
と、エインは快くうなずいてくれた。
クロニル・セルヴィルという物書きと、カール・セルヴィルという薬師がいる。双子らしい。2人は《セルヴィル薬店》という店を構えている。そこの妹であるクロニルがドラゴンに襲われたということだ。
「私が聞いたのは、それぐらいだよ」
と、エインは話をむすんだ。
白いドラゴンというのは、シラティウスのことだろう。
その2人から話を聞いてみる必要がありそうだ。
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