《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第83話~幕間Ⅳ~

 シルベ教の総本山である司教座都市――カテミラルダ。白く輝く大聖堂を中心に、都市が広がっている。マッシュはその大聖堂をおとずれていた。



 霧がたちこめているというのに、日差しを強く跳ね返している。まぶしい。この大聖堂の輝きが、マッシュはあまりに好きではなかった。



 入口には大きな門がある。
 門前には騎士が構えていた。



 ここにいる騎士はみんな、シルベ教に仕える神殿騎士ばかりだ。



「これより先は、関係者以外立入禁止です」
 と、止められた。



「私は第3枢機卿のタギール・ジリアルの知人だ」



 タギールから渡されている銀のプレートを見せた。プレートには目玉の模様がきざまれている。



「はッ。これは失礼しました」
 通してもらえた。



 大聖堂の中に入る。大聖堂というよりも、もはや城塞といったほうがふさわしい。そんな作りをしている。聖堂の中は迷路のように複雑な通路が続いている。そのうちのひとつの木製のトビラがある。ノックする。返答がある。入る。



「上手くやったみてェだな。おい」
 迎え入れてくれたのはタギールだ。



 タギールの部屋には気色の悪いものが多い。動物やらモンスターの死骸が転がっている。なにより不気味な雰囲気を発しているのは、エルフの生首だ。



「それが、エルフ族の〝封印〟か?」
「ああ。そっちは?」



「これだ」
 マッシュが獣人族長から奪ってきた〝封印〟である、ネコの尻尾を、生首の隣にならべた。



 けけけッ――とタギールは不気味に笑う。もうすこし笑い方をどうにか出来ないのかと思う。



「残り1つそろえば、神の図書館アカシック・レコードへの入口ってわけだ」



「しかし、ホントウなのだろうな? 神の図書館に行けば永遠の命が手に入るというのは?」



「ホントウだとも。シルベ教の一部のヤツはみんな知ってることだ」



 人間は――いや、人間のみならず、たいはんの動物は不完全な生き物だ。男と女がめぐり合わせなければ、子孫を残すことができないのだから。



 凹と凸が重なりあって、はじめて完全となる。それは人間が、永遠に生きられないからだ。永遠に生きることができるのならば、子孫など残す必要もない。異性と巡り合う必要もない。1人で完全になるからだ。



「男を求めることもなく、女を求めることもない。1人で完全な個体となる〝完全印〟が、神の図書館に眠ってる。その〝印〟を持つ者は完全となり、孤独を感じることも、悲しみをおぼえることもなくなる。1人で完全となるからだ。――シルベ教の古い聖典に書かれてることだぜ」



 それによ――とタギールが続けた。



「〝封印〟を集めたら、実際に悪魔の雨が降りはじめたんだ。つまり、片方の性別は必要ないから降りはじめたってことだろ。着実に、私たちは完全なる種族への道に近づいているはずだ」



「そうだな」



 まさに人類の夢とも言える、永遠の命。その禁断の果実に、タギールとマッシュは手を伸ばそうとしているのだ。

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