《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第81話~決着Ⅱ~
しばらくマッシュとセイはにらみ合っていた。セイは槍で突きかかる隙をうかがっていた。
「キリアはオレの大切な仲間です。これ以上、傷つけることはオレが許しません」
腰を低く構えた。
マッシュは一歩後ろに下がった。
「いいだろう。貴様は強い。私の敵う相手ではない。まさか〝無限剣印〟に〝斬印〟まで会得していたとはな。それがわかっただけでも、収獲だ」
マッシュがそう言ったとき、マッシュの背後にトツジョとして一枚のトビラがあらわれた。タギールのときと同じだ。おそらく空間を移動する系統の魔法だろうと思われた。
「ちッ」
ここからでは槍が届かない。
それでも――とセイは駆けようとした。先に動いたのはキリアだった。〝怪力印〟の筋力増強魔法を足に込めたのだろう。キリアは弾かれたゴムのように、マッシュに跳びかかった。
「ひッ」
と、マッシュは悲鳴をひとつ残して、あわててトビラの向こうに消えた。キリアのコブシは、トビラを粉砕していた。おそらく上手く逃げられたのだろう。トビラの残骸だけが残されていた。
亡霊は消えた。
マッシュも消えた。
残されているのはセイとキリアとニヤの3人。それから炎の消えたロウソク。無数の刀剣や槍の残骸だった。
静寂が訪れた。
ぐすん。鼻のすする音がした。
「キリア?」
セイからは、キリアの背中が見えた。キリアの背中は思っているよりも小さくて、小刻みに震えていた。
ニヤは意味深な目をセイに向けると、ひとりで部屋を出て行った。
「キリア」
セイはキリアの肩に可能なかぎり、やさしく手を置いた。
「うわぁぁぁん」
キリアは大声で泣いて、セイに抱きついてきた。
普段の凛然とかまえたキリアらしくなかった。きっと装っていたものが剥がれたのだろう。キリアの女性にしては角ばったカラダを、セイはやさしく抱きとめた。それと同時に治癒魔法をかけた。
「マッシュ・ポトト。逃がしてしまいましたね
「うん」
「亡霊たちも殺してしまいました。亡霊が死ぬのかどうかは知りませんが」
「うん」
「獣人族の〝封印〟も取り返せませんでしたね
「うん」
キリアはセイの胸に顔を埋めて、ひたすら泣き続けていた。その姿は、ただのひとりのか弱い少女そのものだった。
「私は、ここで死のうと思った」
震える声でキリアが言った。
「見ててわかりましたよ。捨て鉢でしたから。敵陣に突っ込む騎士のような風格がありました」
「パパや、傭兵団の仲間たちのもとに行けると思ったのだ。仲間たちが死んだのに、私だけ残っていても仕方がない」
普段は、「父」と呼んでいる。だが、油断したときに「パパ」と呼ぶ癖があるようだ。
「そんなことはないですよ」
「私に、生きる理由があると言うのか?」
「レフィール伯爵の騎士じゃないですか。それに、いちおう立場的にはオレの部下なんですからね。わかってます?」
セイは低い姿勢で接しているが、いちおう3人のメイドはセイの部下として与えられているのだ。
「それは、わかっているが」
「オレの見てる前で死ぬなんて許しませんよ。上官命令です」
「う、うむ」
律儀なのだ。
命令とか義理とか、キリアはそういったものに弱いのだ。キリアは濡れた瞳を、セイに向けてきた。目が合う。キリアは顔を赤くして、あわてて顔をそらしていた。月明かりがそれを照らしていた。
「キリアはオレの大切な仲間です。これ以上、傷つけることはオレが許しません」
腰を低く構えた。
マッシュは一歩後ろに下がった。
「いいだろう。貴様は強い。私の敵う相手ではない。まさか〝無限剣印〟に〝斬印〟まで会得していたとはな。それがわかっただけでも、収獲だ」
マッシュがそう言ったとき、マッシュの背後にトツジョとして一枚のトビラがあらわれた。タギールのときと同じだ。おそらく空間を移動する系統の魔法だろうと思われた。
「ちッ」
ここからでは槍が届かない。
それでも――とセイは駆けようとした。先に動いたのはキリアだった。〝怪力印〟の筋力増強魔法を足に込めたのだろう。キリアは弾かれたゴムのように、マッシュに跳びかかった。
「ひッ」
と、マッシュは悲鳴をひとつ残して、あわててトビラの向こうに消えた。キリアのコブシは、トビラを粉砕していた。おそらく上手く逃げられたのだろう。トビラの残骸だけが残されていた。
亡霊は消えた。
マッシュも消えた。
残されているのはセイとキリアとニヤの3人。それから炎の消えたロウソク。無数の刀剣や槍の残骸だった。
静寂が訪れた。
ぐすん。鼻のすする音がした。
「キリア?」
セイからは、キリアの背中が見えた。キリアの背中は思っているよりも小さくて、小刻みに震えていた。
ニヤは意味深な目をセイに向けると、ひとりで部屋を出て行った。
「キリア」
セイはキリアの肩に可能なかぎり、やさしく手を置いた。
「うわぁぁぁん」
キリアは大声で泣いて、セイに抱きついてきた。
普段の凛然とかまえたキリアらしくなかった。きっと装っていたものが剥がれたのだろう。キリアの女性にしては角ばったカラダを、セイはやさしく抱きとめた。それと同時に治癒魔法をかけた。
「マッシュ・ポトト。逃がしてしまいましたね
「うん」
「亡霊たちも殺してしまいました。亡霊が死ぬのかどうかは知りませんが」
「うん」
「獣人族の〝封印〟も取り返せませんでしたね
「うん」
キリアはセイの胸に顔を埋めて、ひたすら泣き続けていた。その姿は、ただのひとりのか弱い少女そのものだった。
「私は、ここで死のうと思った」
震える声でキリアが言った。
「見ててわかりましたよ。捨て鉢でしたから。敵陣に突っ込む騎士のような風格がありました」
「パパや、傭兵団の仲間たちのもとに行けると思ったのだ。仲間たちが死んだのに、私だけ残っていても仕方がない」
普段は、「父」と呼んでいる。だが、油断したときに「パパ」と呼ぶ癖があるようだ。
「そんなことはないですよ」
「私に、生きる理由があると言うのか?」
「レフィール伯爵の騎士じゃないですか。それに、いちおう立場的にはオレの部下なんですからね。わかってます?」
セイは低い姿勢で接しているが、いちおう3人のメイドはセイの部下として与えられているのだ。
「それは、わかっているが」
「オレの見てる前で死ぬなんて許しませんよ。上官命令です」
「う、うむ」
律儀なのだ。
命令とか義理とか、キリアはそういったものに弱いのだ。キリアは濡れた瞳を、セイに向けてきた。目が合う。キリアは顔を赤くして、あわてて顔をそらしていた。月明かりがそれを照らしていた。
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