《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第80話~決着~

 マッシュの言った通りだった。亡霊たちはその手に武器を取って、次から次へとセイやキリアに襲いかかってくる。



 剣。はじく。また剣。
 その繰り返しだった。



 亡霊本体に攻撃がとどかない。槍を突き出しても、剣で斬り払っても、ぼーっ、とかすみのように消えてしまう。消えては再び現れる。こんなデタラメな存在があって良いはずがない――とイラダチさえおぼえる。



「これじゃあ、ラチがあきませんね」



 キリアは襲いかかってくる剣やら槍をコブシで撃ち砕くという、とんでもない荒業で対抗していた。キリアの〝怪力印〟によるチカラがあるからこそできることだ。が、コブシが血まみれになっている。



「オレの〝治療印〟のチカラで」
「構うな。大丈夫だ」



「ですが……」
「これは私の戦いなのだッ」



 ふたたびキリアに刀剣が振り下ろされる。刀剣を振り下ろしたのはキリアの父親の亡霊だった。キリアはそれをコブシで撃ち砕いた。できるだけ刃の部分は避けているようだ。が、どうしても当たってしまうのだろう。



 血だらけのコブシでキリアは、父親の腹にコブシを叩きこむ。しかもぼーっと霞むだけだ。父親は床に落ちている剣を拾い上げる。キリアに襲いかかる。キリアはそれを砕く。



 父と娘。
 悲しい対決だった。



 亡霊としてあやつられているキリアの父親には、何が見えているのだろうか。あるいは何も考えられないのかもしれない。ただ、操られる亡霊として、そこにいるのかもしれない。



 見ている暇はない。



 他の亡霊たちも、セイとニヤに襲いかかってくる。セイは自分だけでなく、ニヤを守るように立ち回る必要があった。



 なんとかしなければならない。



 セイは焦った。
 このままではジリ貧だ。



 いずれ追い詰められることになる。逃げるか? 否。キリアがそれを良しとするはずがない。キリアはここでみずからが朽ち果てるまで戦うだろう。そういった激しさがあった。



 どうする?
 どうすれば良い?



 斬っても突いても、手ごたえがない。
 空気と戦っているようなものだ。



「亡霊を倒せる者など、〝斬印〟を持つあの暗殺者ぐらいであろうなぁ」



 他意はなかったのだろう。
 マッシュはそうつぶやいた。



 それを聞いてセイは、ハッとした。



 なんの偶然か――。
〝斬印〟をすでにセイは会得しているのだ。〝無限剣印〟と〝斬印〟でいっきに亡霊たちを片付けることができるのではないか?



 しかし――。
 キリアの大切な傭兵団を傷つけることにもなる。



 剣が、走った。



 キリアの父親が振ったものだった。キリアはそれをかわしきれなかったようだ。顔を斬られていた。



「キリアッ」
「構うなッ!」



 キリアは父がにぎっていた刀剣をコブシで砕いた。しかし、いくら潰してもこの部屋には無数の武器があるのだ。亡霊たちは新たに武器を拾って、襲いかかってくる。



 キリアはここで死のうとしている。わかってしまった。亡霊たちと戦って戦って、朽ち果てようとしている。



 そんなことは、させられない。



 セイは亡霊たちの攻撃をかいくぐって、キリアのもとに駆けた。キリアのことを背後から抱きとめた。



「よせッ。なにをするんだッ!」
 キリアは暴れた。



「キリアの大切な人たちを傷つけることを許してください」
 セイはキリアの目を、手を覆い隠した。



 そしてセイは己のカラダ中から剣を生やした。この技を、もとの持ち主であるイティカはこう名付けていた。――《剣山》。空気や水すらも切り裂くという〝斬印〟の能力がくわわって、セイのカラダから生える無数の剣が、部屋にいる亡霊たちを切り裂いた。亡霊たちのカラダは切り裂かれ、つらぬかれていった。



 剣の一本は、キリアの父親の腹をつらぬいて、マッシュの腕を傷つけていた。



「ぎゃぁぁぁッ」
 と、マッシュはオオゲサな悲鳴をあげた。



 亡霊たちは、ケムリとなって消えていった。しかし、キリアの父親の亡霊だけはそこに留まり続けた。セイの手が、キリアの目元から離れた。



「パパ……」
 キリアはそうつぶやいた。
 キリアの父は――気のせいかもしれないが――微笑んで、うなずいたように見えた。一瞬のことだった。



 他の亡霊と同じく、亡霊となって霧散した。



「バ、バカな……亡霊を斬っただと……ッ。〝無限剣印〟にくわえて、ま、まさかあの小娘の印まで……」



 マッシュの唇がわなないでいた。



「あまり人の魂を、もてあそぶものではありませんよ」



 セイは槍を構えた。

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