《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第78話~ケイテ城・連絡橋~
マッシュ・ポトトは、もしかすると領主の部屋にいるのかもしれない。キリアがそう言った。たしかにかつての領主ならば、領主の部屋にいる可能性は大きい。
「城内じゃなくて、領主館のほうですかね」
「かもしれん。たしか連絡橋でつながっていたはずだ。ついて来い」
「城内の構造がわかるんですか?」
「多少な。父に入れてもらったことがある。小さいときのころだが、記憶が曖昧ではあるがな」
石段をのぼる。石造りの連絡橋が見えた。いまにも崩れそうな橋だった。窓があった。下をのぞきこむ。死体の散乱している中庭の様子が見えた。死臭がせりあがってきていた。
「しかし、よくこんな場所を根城にしようと思いましたね」
「……」
「皮肉じゃないですよ」
キリアの父親が使えていた城だというから、失言だったかもしれないと思った。
「貴殿がそんな皮肉を言うような人間でないことは、知っているつもりだ」
「そうですか」
そう言われるとすこし照れ臭い。
「正面。来るぞ」
キリアはそう言って、身構えた。
亡霊が2人、剣を構えて斬りかかってくる。セイは剣の柄の部分を槍で突いて剣を落とさせた。キリアは剣の面の部分をコブシで叩き砕いていた。さすが〝怪力印〟のキリアだ。武器を失くした亡霊たちはケムリのように姿を消した。
「今の亡霊もキリアの知り合いですか?」
「間違いない。傭兵団だったころの仲間だ」
「キリアの知り合いが、どうしてキリアに襲いかかって来るんでしょうか」
「操られているから――なのだろうな」
そうじゃな、とニヤがうなずいた。
かつての知り合いに襲われるというのは、あまり気持ちの良いものではないだろう。傭兵団がモンスターになったとき、それを処理したのはキリアだと言う。亡霊とはいえ、ふたたび敵対するのはあまりに酷だ。いまだにキリアの顔色が悪いのもうなずける。
「キリアはニヤを連れて戻ってください」
セイは言った。
「なに?」
とキリアは眉をひそめた。
「傭兵団の亡霊が操られているというのであれば、キリアにとって戦うべき相手ではないでしょう」
それぐらいの配慮はセイにもできる。
それにニヤを、これ以上危険にさらすわけにもいかない。いまさら言っても仕方のないことだが、やはりニヤを案内に連れてくるべきではなかった。
キリアの目が鋭くなった。
「たしかに亡霊とはいえ、傭兵団の団員を相手にするのは心苦しい」
しかし――とキリアは続けた。
「マッシュ・ポトトという人物は、傭兵団を操って私に仕掛けているのだ。私にケンカを売っているとしか思えん。そいつの頭蓋を叩き割ってやらんと気が済まん」
「この先に待ち受けているのが、誰だかわかっていても行きますか?」
察しはついている。
傭兵団が亡霊として呼び出されている。そしてさっき〝霊媒印〟でキリアの父親を呼び出すことができなかった。別のところに呼び出されているからだ――とニヤは言っていた。
つまり、先に待ち構えているのは傭兵団長であるキリアの父親だろう。会って謝りたいとキリアが言っていた相手だ。
「むろん」
とキリアは足をすすめた。
強い。
これがキリアという女性なのだと、セイは感動した。
「ワラワの心配も無用じゃ」
とニヤが続いた。
あんたはもう少し、8獣長の1人だという自覚を持ったほうが良い――と思ったが、口には出さないでおいた。
「城内じゃなくて、領主館のほうですかね」
「かもしれん。たしか連絡橋でつながっていたはずだ。ついて来い」
「城内の構造がわかるんですか?」
「多少な。父に入れてもらったことがある。小さいときのころだが、記憶が曖昧ではあるがな」
石段をのぼる。石造りの連絡橋が見えた。いまにも崩れそうな橋だった。窓があった。下をのぞきこむ。死体の散乱している中庭の様子が見えた。死臭がせりあがってきていた。
「しかし、よくこんな場所を根城にしようと思いましたね」
「……」
「皮肉じゃないですよ」
キリアの父親が使えていた城だというから、失言だったかもしれないと思った。
「貴殿がそんな皮肉を言うような人間でないことは、知っているつもりだ」
「そうですか」
そう言われるとすこし照れ臭い。
「正面。来るぞ」
キリアはそう言って、身構えた。
亡霊が2人、剣を構えて斬りかかってくる。セイは剣の柄の部分を槍で突いて剣を落とさせた。キリアは剣の面の部分をコブシで叩き砕いていた。さすが〝怪力印〟のキリアだ。武器を失くした亡霊たちはケムリのように姿を消した。
「今の亡霊もキリアの知り合いですか?」
「間違いない。傭兵団だったころの仲間だ」
「キリアの知り合いが、どうしてキリアに襲いかかって来るんでしょうか」
「操られているから――なのだろうな」
そうじゃな、とニヤがうなずいた。
かつての知り合いに襲われるというのは、あまり気持ちの良いものではないだろう。傭兵団がモンスターになったとき、それを処理したのはキリアだと言う。亡霊とはいえ、ふたたび敵対するのはあまりに酷だ。いまだにキリアの顔色が悪いのもうなずける。
「キリアはニヤを連れて戻ってください」
セイは言った。
「なに?」
とキリアは眉をひそめた。
「傭兵団の亡霊が操られているというのであれば、キリアにとって戦うべき相手ではないでしょう」
それぐらいの配慮はセイにもできる。
それにニヤを、これ以上危険にさらすわけにもいかない。いまさら言っても仕方のないことだが、やはりニヤを案内に連れてくるべきではなかった。
キリアの目が鋭くなった。
「たしかに亡霊とはいえ、傭兵団の団員を相手にするのは心苦しい」
しかし――とキリアは続けた。
「マッシュ・ポトトという人物は、傭兵団を操って私に仕掛けているのだ。私にケンカを売っているとしか思えん。そいつの頭蓋を叩き割ってやらんと気が済まん」
「この先に待ち受けているのが、誰だかわかっていても行きますか?」
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傭兵団が亡霊として呼び出されている。そしてさっき〝霊媒印〟でキリアの父親を呼び出すことができなかった。別のところに呼び出されているからだ――とニヤは言っていた。
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