《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第78話~ケイテ城・連絡橋~

 マッシュ・ポトトは、もしかすると領主の部屋にいるのかもしれない。キリアがそう言った。たしかにかつての領主ならば、領主の部屋にいる可能性は大きい。



「城内じゃなくて、領主館のほうですかね」



「かもしれん。たしか連絡橋でつながっていたはずだ。ついて来い」



「城内の構造がわかるんですか?」



「多少な。父に入れてもらったことがある。小さいときのころだが、記憶が曖昧ではあるがな」



 石段をのぼる。石造りの連絡橋が見えた。いまにも崩れそうな橋だった。窓があった。下をのぞきこむ。死体の散乱している中庭の様子が見えた。死臭がせりあがってきていた。



「しかし、よくこんな場所を根城にしようと思いましたね」



「……」



「皮肉じゃないですよ」
 キリアの父親が使えていた城だというから、失言だったかもしれないと思った。



「貴殿がそんな皮肉を言うような人間でないことは、知っているつもりだ」



「そうですか」
 そう言われるとすこし照れ臭い。



「正面。来るぞ」
 キリアはそう言って、身構えた。



 亡霊が2人、剣を構えて斬りかかってくる。セイは剣の柄の部分を槍で突いて剣を落とさせた。キリアは剣の面の部分をコブシで叩き砕いていた。さすが〝怪力印〟のキリアだ。武器を失くした亡霊たちはケムリのように姿を消した。



「今の亡霊もキリアの知り合いですか?」
「間違いない。傭兵団だったころの仲間だ」



「キリアの知り合いが、どうしてキリアに襲いかかって来るんでしょうか」



「操られているから――なのだろうな」



 そうじゃな、とニヤがうなずいた。



 かつての知り合いに襲われるというのは、あまり気持ちの良いものではないだろう。傭兵団がモンスターになったとき、それを処理したのはキリアだと言う。亡霊とはいえ、ふたたび敵対するのはあまりに酷だ。いまだにキリアの顔色が悪いのもうなずける。



「キリアはニヤを連れて戻ってください」
 セイは言った。



「なに?」
 とキリアは眉をひそめた。



「傭兵団の亡霊が操られているというのであれば、キリアにとって戦うべき相手ではないでしょう」



 それぐらいの配慮はセイにもできる。
 それにニヤを、これ以上危険にさらすわけにもいかない。いまさら言っても仕方のないことだが、やはりニヤを案内に連れてくるべきではなかった。



 キリアの目が鋭くなった。



「たしかに亡霊とはいえ、傭兵団の団員を相手にするのは心苦しい」



 しかし――とキリアは続けた。



「マッシュ・ポトトという人物は、傭兵団を操って私に仕掛けているのだ。私にケンカを売っているとしか思えん。そいつの頭蓋を叩き割ってやらんと気が済まん」



「この先に待ち受けているのが、誰だかわかっていても行きますか?」



 察しはついている。



 傭兵団が亡霊として呼び出されている。そしてさっき〝霊媒印〟でキリアの父親を呼び出すことができなかった。別のところに呼び出されているからだ――とニヤは言っていた。



 つまり、先に待ち構えているのは傭兵団長であるキリアの父親だろう。会って謝りたいとキリアが言っていた相手だ。



「むろん」
 とキリアは足をすすめた。



 強い。
 これがキリアという女性なのだと、セイは感動した。



「ワラワの心配も無用じゃ」
 とニヤが続いた。




 あんたはもう少し、8獣長の1人だという自覚を持ったほうが良い――と思ったが、口には出さないでおいた。

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