《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第73話~取り調べ~
良いことを思いついた――とニヤは、セイのことを牢屋に連れて行った。セイを捕まえるためではない。そこにロロナが捕まっているのだ。
細い洞窟になっていた。
大空洞と同じく瑠璃色の明かりが洞窟全体を照らしていた。左右には鉄格子のはめられた空間がある。
檻だ。
囚人と思われる人たちが捕まっている。罪を犯した者たちのいる場所だと思うからか、どことなく空気が禍々しく、よどんでいるように感じてしまう。
「ここはいちおう監獄として使われておるところじゃ。あのロロナとかいう暗殺者はイチバン奥の部屋に閉じ込めてある」
「どうするつもりなんですか?」
人を何人も殺しているのであれば、死刑が妥当なところだ。しかしそれは人族のセイの価値観だ。獣人族がどういった法律を定めているのかは、セイはわからなかった。
「あのロロナという少女は、雇われた者に過ぎん」
洞窟の中だから声が響く。
ときおり囚人たちの「うぅ」とか「あぁ」といったうめき声が聞こえてくる。
「ええ」
「拷問して、雇い主を聞きだすべきであろう」
「ご、拷問ですか……」
情報を引っ張り出すのに、そういった手法をとることもある。だが、あまり血なまぐさいことは好きではない。
胃が重く沈むようなセイの感覚を、ニヤは敏感にかぎとったようだ。
「案ずることはない。痛いことはせん。でも少し、恥ずかしい目には合ってもらうかもしれんがな」
ニャハハッ――とニヤはうれしそうに笑っている。
まだセイにナめられた余韻を引きずっているようで、ニヤの頬は桃色に染まったままだ。
「ここじゃ」
と、ニヤは脚をとめた。
他の檻と同じように鉄格子のはめられた壁穴があった。鉄格子の奥にはロロナがいた。あの巨大な鎌はキリアの“怪力印”を利用した槍の一突きで破壊した。鎌がないとただの小さな女の子にしか見えない。
土壁から鎖が伸びていて、両手をバンザイするようなカッコウで拘束されていた。真紅のドレスはつけたままだった。
真っ赤な双眸が薄暗闇の中でかがやいていた。充血して濁ったような赤ではない。磨き抜かれたルビーのような赤だった。
鉄格子を開ける。
ニヤとセイは牢の中に入った。
「おう。なんなのだ? 拷問とか聞こえたのだ。やれるものならやってみろなのだ。私は今まで何度か敵に捕まったこともある。そういった類のことはされているのだ。鉄の靴をはかされたこともあるし、爪をはがされたことだってあるのだ」
ロロナはそう言うと、拘束されていない脚を蹴り上げた。
靴がセイの顔面めがけて跳んできた。
受け止めた。
ロロナの脚は幼い少女のものだったが、言われてみるとたしかに酷い傷が多かった。自業自得とはいえ、拷問の痕跡に間違いはない。
「うん……?」
ロロナはセイの姿を見ると、ポカンと口を開けていた。
「あ……」
セイは、女の姿に戻っていないことを思い出してあわてた。しかし、そのままで良い、とニヤが言った。
どこからともなくニヤは縄を取り出した。暴れられないようにニヤの脚を縛ってしまった。両手をバンザイして、脚を固められて「Y」の字型になっていた。
「男――。そうか、お前が〝英雄印〟を持つ男なのか。いくつも魔法を使えたのは、そういうわけなのか!」
男?
男だって?
と、他の檻からもザワつく気配がした。
他の囚人からは顔が見えていないので大丈夫だろう。が、ロロナにはバレてしまった。男になったり、女になったりするのに忙しくて、ウッカリしていたのだ。
そんな周囲の喧騒をよそに、ニヤは愉快気に笑った。
「さてさて、雇い主が誰なのか拷問で白状させてやろう」
細い洞窟になっていた。
大空洞と同じく瑠璃色の明かりが洞窟全体を照らしていた。左右には鉄格子のはめられた空間がある。
檻だ。
囚人と思われる人たちが捕まっている。罪を犯した者たちのいる場所だと思うからか、どことなく空気が禍々しく、よどんでいるように感じてしまう。
「ここはいちおう監獄として使われておるところじゃ。あのロロナとかいう暗殺者はイチバン奥の部屋に閉じ込めてある」
「どうするつもりなんですか?」
人を何人も殺しているのであれば、死刑が妥当なところだ。しかしそれは人族のセイの価値観だ。獣人族がどういった法律を定めているのかは、セイはわからなかった。
「あのロロナという少女は、雇われた者に過ぎん」
洞窟の中だから声が響く。
ときおり囚人たちの「うぅ」とか「あぁ」といったうめき声が聞こえてくる。
「ええ」
「拷問して、雇い主を聞きだすべきであろう」
「ご、拷問ですか……」
情報を引っ張り出すのに、そういった手法をとることもある。だが、あまり血なまぐさいことは好きではない。
胃が重く沈むようなセイの感覚を、ニヤは敏感にかぎとったようだ。
「案ずることはない。痛いことはせん。でも少し、恥ずかしい目には合ってもらうかもしれんがな」
ニャハハッ――とニヤはうれしそうに笑っている。
まだセイにナめられた余韻を引きずっているようで、ニヤの頬は桃色に染まったままだ。
「ここじゃ」
と、ニヤは脚をとめた。
他の檻と同じように鉄格子のはめられた壁穴があった。鉄格子の奥にはロロナがいた。あの巨大な鎌はキリアの“怪力印”を利用した槍の一突きで破壊した。鎌がないとただの小さな女の子にしか見えない。
土壁から鎖が伸びていて、両手をバンザイするようなカッコウで拘束されていた。真紅のドレスはつけたままだった。
真っ赤な双眸が薄暗闇の中でかがやいていた。充血して濁ったような赤ではない。磨き抜かれたルビーのような赤だった。
鉄格子を開ける。
ニヤとセイは牢の中に入った。
「おう。なんなのだ? 拷問とか聞こえたのだ。やれるものならやってみろなのだ。私は今まで何度か敵に捕まったこともある。そういった類のことはされているのだ。鉄の靴をはかされたこともあるし、爪をはがされたことだってあるのだ」
ロロナはそう言うと、拘束されていない脚を蹴り上げた。
靴がセイの顔面めがけて跳んできた。
受け止めた。
ロロナの脚は幼い少女のものだったが、言われてみるとたしかに酷い傷が多かった。自業自得とはいえ、拷問の痕跡に間違いはない。
「うん……?」
ロロナはセイの姿を見ると、ポカンと口を開けていた。
「あ……」
セイは、女の姿に戻っていないことを思い出してあわてた。しかし、そのままで良い、とニヤが言った。
どこからともなくニヤは縄を取り出した。暴れられないようにニヤの脚を縛ってしまった。両手をバンザイして、脚を固められて「Y」の字型になっていた。
「男――。そうか、お前が〝英雄印〟を持つ男なのか。いくつも魔法を使えたのは、そういうわけなのか!」
男?
男だって?
と、他の檻からもザワつく気配がした。
他の囚人からは顔が見えていないので大丈夫だろう。が、ロロナにはバレてしまった。男になったり、女になったりするのに忙しくて、ウッカリしていたのだ。
そんな周囲の喧騒をよそに、ニヤは愉快気に笑った。
「さてさて、雇い主が誰なのか拷問で白状させてやろう」
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