《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第71話~レリル・ロロナⅢ~

 奇妙な女だという印象を受けた。クロカミ・セーコ。獣人族ではない。ロロナと同じく、人族だ。まず1つ奇妙なのは〝無限剣印〟を持っているということだ。鎌を交えればわかる。次から次へと、己のカラダから剣を生やすその魔法は、間違いなくウワサに聞く〝無限剣印〟だった。



 そしてもう1つ。
 構えが妙なのだ。
 剣士の構えではない。



 腰を異様に低く落としてから、突っ込んでくる癖がある。レイピア――いや、おそらくは槍遣いだ。それも独特な構えだ。



〝無限剣印〟を持っているのに、なにゆえ槍の構えなのか。たしかに槍も持っているのだが、なぜ槍を主体にして戦うのか。



(剣より槍のほうが得意なのか?)
 それも不思議な話だ。



〝無限剣印〟を持って生まれた者であれば、ゼッタイに剣を主体とした戦い方をするはずなのだ。



 決して剣術に優れているわけではない。印のチカラに頼っている。そういう印象を受けた。しかし、癖のある槍をつかう。間合いが曖昧で、動きが読めない。不気味なのは妙な胆力があることだ。何か奥の手を隠している。そういう気配があって、深いところまで踏み込めない。



 しかも――。



「てやッ」
 と鎌を振るう。



 鎌はクロカミ・セーコのカラダに軽く傷をつくる。その傷はたちまち回復してしまう。おそらく特殊な魔法で治癒しているのだと思われる。



 それも、変だ。



 フィルドランタに生まれた者は、みな平等に印を持っている。しかし、2つも印を持っている人物がいるなんて聞いたことがない。



(なんなのだ?)
 わけのわからない存在だ。



 考えれば考えるほどに、イラダチが強くなる。



 鎌を振るう。大振りはできない。
 隙を突くように槍が伸びてくる。



「さっさと死ぬのだ。このクソアマ!」
 わからない存在は、壊してしまいたくなる。



 なぎ払いを発した大鎌は、剣で受け流されてしまった。何度か刃先が交わりあって、つばぜり合いに持ち込まれた。



「暗殺者って聞いてたからいったいどんな人物かと思ってたが、まさか女の子だとは思わなかったぜ」
 セーコと名乗る者が言った。



「脳みそが腐ってやがるのか? 悪魔の雨が降って、悪魔の霧がたちこめているのだ。女に決まっているのだ」



「そりゃ女だろうけど、まだ子供じゃないか」



「関係ないのだ。子供ってなんなのだ。いったいどこからが大人なのだ。貴様も子どもなのだ!」



「たしかにな」
 お互いに後方へと飛びずさった。



 この騒動を聞きつけたのか獣人族たちがその手に武器を持って、集まりはじめていた。霧の向こうの多くの獣の気配がした。



 ここはロロナにとっては敵地。長期戦は不利だ。次の一撃で決めようと思った。ロロナはおのれの脇にある印を意識した。〝斬印〟。森羅万象を切断する。空気だろうと水だろうと、実体のないものであろうと斬ることのできる魔法だった。



「これで終わりなのだ。クソアマ!」
 鉱山の硬い地を蹴る。
 疾駆した。
 それに合わせてセーコも駆ける。



 勢いにまかせてロロナは大鎌で払い切りを放った。重量のある鎌なので、上段から振り下ろしたり、下段から振り上げたりするのには向いていない。どうしても横に振ることになるのだ。まるで作物を刈り取る鎌のように、バッサリと人を刈ることができる。



 セーコは槍を下段から、突き上げた。
 なるほど、と思う。



 大鎌は面の部分が広い。ファルシオンのように身幅がふくらんでいるのだ。その分、上から叩きつけられたときや、下から突き上げられるのに弱い。それを補うのが、この大鎌の重みだ。



 勢いを乗せて振った大鎌の払い切りと、〝斬印〟を防げる者はいない。また1人。この大鎌は命を刈り取ることになる――はずだった。



 ガイーン!



 重厚な金属音が響きわたった。



 両親を殺してからずっと背負い続けてきた大鎌の刃が、粉々に砕け散っていた。陽光を受けて、大鎌の刃が燦然さんぜんとかがやきガラス片のように散っていた。



 唖然とした。
 まさか砕かれるとは思っていなかった。



「はい。捕まえた」
 セーコに手を握られた。
 温かい手をしていた。



 負けた。悔しさはあった。立腹もあった。でも、妙な安心があった。なぜ鎌を潰されて心が安らいでいるのか――ロロナにもよくわからなかった。得物を潰されたいじょう、ロロナは抵抗しようとも思わなかった。

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