《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第68話~キリアの頼み~
しばらくこのネ・リ族の里で世話になることになった。同じ大空洞の中にある部屋を貸し与えてもらえることになった。
キリアとセイに1部屋ずつ。
ベッドとテーブルがあるだけの簡素な部屋だった。ただ洞窟の中にあると思うと、閉塞感が付きまとう。息苦しいような気分にもなる。錯覚だった。意外にも空気の通りは悪くないのだ。獣人族ならではの工夫がほどこされているのだろう。
セイは部屋に1人でいた。
ロウソクの芯切りに苦心しているところだった。
コンコンと戸を鳴らす音がした。
「どうぞ」
入ってきたのはキリアだった。
セイがロウソクの芯を切るのに苦心しているところを見ると、優しげに微笑んで手伝ってくれた。キリアは器用に芯を切った。無骨に見えるが、意外と女性らしいところもある。
「これで良い」
「ありがとうございます」
「獣人族に受け入れてもらえて良かった」
キリアはそう言うと、部屋にあったイスに腰掛けた。キリアはうつくしい女性だが、あまり女くさくはない。匂いの話ではない。細かい挙措などに女性特有の艶めかしさが付きまとわない。悪い意味ではないのだが、ときおり男と接しているような心地になることがある。
男勝りというのかもしれない。
「さっきは少々、強引に話を進めて悪かった」
「いえ。何か事情が?」
「あのニヤとかいう8獣長の1人の持つ〝霊媒印〟。どうにかセイに手に入れてもらいたいのだ
頼む、とキリアは頭を下げた。
頭をあげさせるのに少し苦労した。
「死人の話を聞けるんでしたか」
「私は父と話がしたい」
キリアは呟くように言った。あえて素っ気のない語調を使ったのかもしれないが、だからこそ哀愁が帯びられているように感ぜられた。
「それはニヤに頼めば良いのでは?」
わざわざセイが手に入れて能力を使う理由はない。
「ニヤが良しとしないだろう。私の事情で使うのであれば、取引に応じなければならない」
律儀だ。
「レリル・ロロナとかいう暗殺者に、8獣長が殺されているんでしたか」
キリアの表情がこわばった。
「傭兵暮らしのときに聞いたことがある。二つ名を《大鎌のロロナ》。傭兵のように戦争に参入するといった手合いではない。誰かを殺して欲しい。そういった個人にたいする恨みを晴らすのを生業としている」
いわゆる殺し屋だ。
「誰かが8獣長を殺すように依頼した――ってことでしょうか」
「どこかに仕官するようなタイプの人間ではないからな。金で雇われたとみるべきだろう」
ニヤの命を狙われているのであれば、頼まれずとも守るつもりだ。世界中の女性を守れというレフィール伯爵の命令もある。
ただ、殺し屋を相手にすると思うと慄然とするものがある。人を殺すことを生業としているなんて、理解できる相手ではない。
それを言ってしまえば騎士もそうだが、騎士には何か守るべきもののために戦っているのだ。殺し屋とは違う。
「とにかく、8獣長。最後のひとりであるニヤを守り。〝霊媒印〟をもらう。それがオレたちの当面の目的ですね」
ニヤはああ見えて、獣人たちの長なのだ。
このモンスター騒動のなかでも、一定の治安を保つことができているのは、ニヤの政治的な手腕だと見ても良い。
そのニヤが殺されてしまっては、獣人たちはまとまらなくなるだろう。
「ああ。それから〝封印〟を奪った亡霊というのも、気にかかる。もしかすると神の図書館とやらと関係あるヤツの仕業かもしれん」
「そうですね」
敵。
悪魔の雨を引き起こした組織がある。
霊体となって呼び出された獣人族長はそう言っていた。それを見極める必要がありそうだ。
どこからか風が吹いているのか――。
灯したロウソクの炎がわずかに揺らめいていた。
キリアとセイに1部屋ずつ。
ベッドとテーブルがあるだけの簡素な部屋だった。ただ洞窟の中にあると思うと、閉塞感が付きまとう。息苦しいような気分にもなる。錯覚だった。意外にも空気の通りは悪くないのだ。獣人族ならではの工夫がほどこされているのだろう。
セイは部屋に1人でいた。
ロウソクの芯切りに苦心しているところだった。
コンコンと戸を鳴らす音がした。
「どうぞ」
入ってきたのはキリアだった。
セイがロウソクの芯を切るのに苦心しているところを見ると、優しげに微笑んで手伝ってくれた。キリアは器用に芯を切った。無骨に見えるが、意外と女性らしいところもある。
「これで良い」
「ありがとうございます」
「獣人族に受け入れてもらえて良かった」
キリアはそう言うと、部屋にあったイスに腰掛けた。キリアはうつくしい女性だが、あまり女くさくはない。匂いの話ではない。細かい挙措などに女性特有の艶めかしさが付きまとわない。悪い意味ではないのだが、ときおり男と接しているような心地になることがある。
男勝りというのかもしれない。
「さっきは少々、強引に話を進めて悪かった」
「いえ。何か事情が?」
「あのニヤとかいう8獣長の1人の持つ〝霊媒印〟。どうにかセイに手に入れてもらいたいのだ
頼む、とキリアは頭を下げた。
頭をあげさせるのに少し苦労した。
「死人の話を聞けるんでしたか」
「私は父と話がしたい」
キリアは呟くように言った。あえて素っ気のない語調を使ったのかもしれないが、だからこそ哀愁が帯びられているように感ぜられた。
「それはニヤに頼めば良いのでは?」
わざわざセイが手に入れて能力を使う理由はない。
「ニヤが良しとしないだろう。私の事情で使うのであれば、取引に応じなければならない」
律儀だ。
「レリル・ロロナとかいう暗殺者に、8獣長が殺されているんでしたか」
キリアの表情がこわばった。
「傭兵暮らしのときに聞いたことがある。二つ名を《大鎌のロロナ》。傭兵のように戦争に参入するといった手合いではない。誰かを殺して欲しい。そういった個人にたいする恨みを晴らすのを生業としている」
いわゆる殺し屋だ。
「誰かが8獣長を殺すように依頼した――ってことでしょうか」
「どこかに仕官するようなタイプの人間ではないからな。金で雇われたとみるべきだろう」
ニヤの命を狙われているのであれば、頼まれずとも守るつもりだ。世界中の女性を守れというレフィール伯爵の命令もある。
ただ、殺し屋を相手にすると思うと慄然とするものがある。人を殺すことを生業としているなんて、理解できる相手ではない。
それを言ってしまえば騎士もそうだが、騎士には何か守るべきもののために戦っているのだ。殺し屋とは違う。
「とにかく、8獣長。最後のひとりであるニヤを守り。〝霊媒印〟をもらう。それがオレたちの当面の目的ですね」
ニヤはああ見えて、獣人たちの長なのだ。
このモンスター騒動のなかでも、一定の治安を保つことができているのは、ニヤの政治的な手腕だと見ても良い。
そのニヤが殺されてしまっては、獣人たちはまとまらなくなるだろう。
「ああ。それから〝封印〟を奪った亡霊というのも、気にかかる。もしかすると神の図書館とやらと関係あるヤツの仕業かもしれん」
「そうですね」
敵。
悪魔の雨を引き起こした組織がある。
霊体となって呼び出された獣人族長はそう言っていた。それを見極める必要がありそうだ。
どこからか風が吹いているのか――。
灯したロウソクの炎がわずかに揺らめいていた。
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