《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第68話~キリアの頼み~

 しばらくこのネ・リ族の里で世話になることになった。同じ大空洞の中にある部屋を貸し与えてもらえることになった。



 キリアとセイに1部屋ずつ。



 ベッドとテーブルがあるだけの簡素な部屋だった。ただ洞窟の中にあると思うと、閉塞感が付きまとう。息苦しいような気分にもなる。錯覚だった。意外にも空気の通りは悪くないのだ。獣人族ならではの工夫がほどこされているのだろう。



 セイは部屋に1人でいた。
 ロウソクの芯切りに苦心しているところだった。



 コンコンと戸を鳴らす音がした。



「どうぞ」
 入ってきたのはキリアだった。



 セイがロウソクの芯を切るのに苦心しているところを見ると、優しげに微笑んで手伝ってくれた。キリアは器用に芯を切った。無骨に見えるが、意外と女性らしいところもある。



「これで良い」
「ありがとうございます」



「獣人族に受け入れてもらえて良かった」



 キリアはそう言うと、部屋にあったイスに腰掛けた。キリアはうつくしい女性だが、あまり女くさくはない。匂いの話ではない。細かい挙措などに女性特有の艶めかしさが付きまとわない。悪い意味ではないのだが、ときおり男と接しているような心地になることがある。



 男勝りというのかもしれない。



「さっきは少々、強引に話を進めて悪かった」
「いえ。何か事情が?」



「あのニヤとかいう8獣長の1人の持つ〝霊媒印〟。どうにかセイに手に入れてもらいたいのだ
 頼む、とキリアは頭を下げた。



 頭をあげさせるのに少し苦労した。



「死人の話を聞けるんでしたか」
「私は父と話がしたい」



 キリアは呟くように言った。あえて素っ気のない語調を使ったのかもしれないが、だからこそ哀愁が帯びられているように感ぜられた。



「それはニヤに頼めば良いのでは?」
 わざわざセイが手に入れて能力を使う理由はない。



「ニヤが良しとしないだろう。私の事情で使うのであれば、取引に応じなければならない」



 律儀だ。



「レリル・ロロナとかいう暗殺者に、8獣長が殺されているんでしたか」



 キリアの表情がこわばった。



「傭兵暮らしのときに聞いたことがある。二つ名を《大鎌のロロナ》。傭兵のように戦争に参入するといった手合いではない。誰かを殺して欲しい。そういった個人にたいする恨みを晴らすのを生業としている」



 いわゆる殺し屋だ。



「誰かが8獣長を殺すように依頼した――ってことでしょうか」



「どこかに仕官するようなタイプの人間ではないからな。金で雇われたとみるべきだろう」



 ニヤの命を狙われているのであれば、頼まれずとも守るつもりだ。世界中の女性を守れというレフィール伯爵の命令もある。



 ただ、殺し屋を相手にすると思うと慄然りつぜんとするものがある。人を殺すことを生業としているなんて、理解できる相手ではない。



 それを言ってしまえば騎士もそうだが、騎士には何か守るべきもののために戦っているのだ。殺し屋とは違う。



「とにかく、8獣長。最後のひとりであるニヤを守り。〝霊媒印〟をもらう。それがオレたちの当面の目的ですね」



 ニヤはああ見えて、獣人たちの長なのだ。



 このモンスター騒動のなかでも、一定の治安を保つことができているのは、ニヤの政治的な手腕だと見ても良い。



 そのニヤが殺されてしまっては、獣人たちはまとまらなくなるだろう。



「ああ。それから〝封印〟を奪った亡霊というのも、気にかかる。もしかすると神の図書館アカシック・レコードとやらと関係あるヤツの仕業かもしれん」



「そうですね」



 敵。
 悪魔の雨を引き起こした組織がある。



 霊体となって呼び出された獣人族長はそう言っていた。それを見極める必要がありそうだ。



 どこからか風が吹いているのか――。
 灯したロウソクの炎がわずかに揺らめいていた。

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