《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第63話~ゴルゴン鉱山へ~

 獣人族は、おもに山岳地帯に暮らしているということだった。都市サファリアからは、けっこう距離があった。国境も越えなければならない。



「馬車で行くと何日かかるかわからんな」



 龍になって飛んで行こうということになった。霧は朝よりも濃くなっており、もはや1メートル先を見るのにも目を凝らす必要があった。この霧の中だ。ドラゴンになって空を飛んでもバレやしないだろうという判断だった。



 セイはドラゴンとなって、キリアを乗せた。



 フォルモルとシラティウスは留守番だ。数日続いた雨のせいか、シラティウスが風邪気味だった。治癒魔法でも病は治せないが、フォルモルは看病として残った。



 獣人族たちの王都とも言えるゴルゴン鉱山に関して、キリアは多少の土地勘があるということだった。



「ぐるるるっ」
 ドラゴンになっているあいだは、人語を発することができない。唸るような声になる。



「北東へ真っ直ぐ行くと、ゴルゴン鉱山につく。その向こうは獣人たちの国になっている」



 霧で何も見えない。
 指示にしたがって飛ぶしかない。



 ミルクの海をさまよっているような感覚になった。悪魔の霧が立ち込めるなか、女たちを救うというのは、この先の見えぬ霧を飛ぶようなものかもしれないとも感じた。



「私の父が傭兵団を率いていたことは言ったと思う。みんなモンスターになって、そして死んでしまった。だが、傭兵団になる前は、ゴルゴン鉱山の近くにある都市に仕えていたのだ」



 だから獣人族たちのいる土地に詳しいのだろう。



 しゃべれないセイの返答を聞くまでもなく、キリアは言葉を続けた。



「しかしそこの領主が腐っていてな。盗賊に民を襲わせていた。なぜかわかるか? 金を奪わせて、その金をワイロとして受け取っていたのだ。よくある腐敗と言えば、そうなのだがな。父はそういうことを我慢できる人間ではなかった」



 キリアの話に興味がわいた。
 風が雑音にならないように速度を落とした。



「父はその盗賊をすべて捕縛した。結果、領主から放逐された。不器用な人だったのだ。しかし、私にとっては尊敬に値する不器用だったがな。剣しかできなかった父は仕方なく傭兵に身をやつした」



 霧の向こうに何かの輪郭が見えてきた。
 山だ。



 あれがゴルゴン鉱山なのかもしれない。セイはさらに速度を落として、徐々に下降していった。



「当時、父とともに傭兵になることを決心したひとりの女性がいた。私が幼いころに死んでしまったが、それが私の母だった。だから、このあたりは私にとっては故郷のようなものだ」



 鉱山に足がついた。



 久しぶりに硬い地盤の感触が足につたわってきた。どうやら足場が岩になっているようだ。霖雨りんうを受けてもなお頑健としていた。



「キリアは、父親が好きなんですね」
 人の姿に戻ったセイはそう言った。



 キリアは小さく笑った。



「そう露骨に言われると照れ臭いな。父のように自分自身に胸を張っていられるような、真っ直ぐな人間でありたいと私はそう思っている。元傭兵のセリフではないかもしれんがな」



 傭兵と聞くと、あまり良い印象を受けない。しかし、キリアの父が率いていた傭兵団は、もしかすると一般的な金さえもらえれば何でもするという無節操な輩ではなかったのかもしれない。



 父親か――とセイは思う。
 セイには両親がいない。



 ロイラング王都で雑用をまかされるまでは、城下町の孤児院で育った。父親という存在にたいして、どういう念を抱くものなのか、興味深いものがあった。



「結局、レフィール伯爵のもとに傭兵団ごと雇われたんでしょう?」



「そうだ。レフィーさまには感謝している。父もレフィーさまに忠誠を誓っていた。忠誠なんて傭兵団らしくないがな」



 フォルモルと違ってキリアは、メイド服の下にチェインメイルを着こんでいる。鎧だけでなく、武器もいろいろと仕込んでいるようだ。



 その中からキリアは錆びついた短剣をとりだした。



「それは?」



「これは父が使っていた短剣だ。いまでも捨てられずに持っている」



 キリアはその短剣を名残惜しそうに見つめていた。

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