《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第55話~カンオケの中身~

 雨に降られる中、フォルモルはセイの胸元に顔をうずめていた。女になっているセイの乳房が、フォルモルの頭をつつみこんでいた。お互いに泥だらけになっている。フォルモルの髪についていた泥を払った。



「大丈夫ですか?」



「ええ。もう大丈夫よ。ありがとう。君がこんなに頼りになるなんて思ってなかったわ」



 フォルモルの目は真っ赤になっていたが、笑顔を取り戻していた。ただその笑顔はいつもの妖艶ようえんな笑顔ではなく、か弱い女性の笑顔だった。



「そりゃみんなから、印をもらいましたから」



「そうじゃないわよ。耳、ふさいでくれたでしょ。セイに耳をふせがれると、厭なことが何にも聞こえなくなって、すごく安心できたから」



「そういうもんですか」
 そう言ってセイは苦笑した。



 ただ耳を塞いだだけで、こんなにも感謝されるとは思ってもいなかった。



「逃がしちゃったわね」
 フォルモルはさして残念そうでもなく、そうつぶやいた。



「まあ。そのほうが良かったかもしれませんよ。これ以上、被害を増やされたらたまりませんし。それにほら――」



 セイは指差した。



 多くの冒険者たちが駆けつけてきた。きっとケルベロスが出たと聞いて、都市サファリアからあわててやって来たのだろう。百人近く武装した女性が駆けてくる。なんと美しくも物々しい繚乱りょうらんだろうか。



 拍手の音がひびいた。
 イティカが手を叩いているのだった。



「私は今日、2度助けられた。1度は英雄王の印を持つ青年の圧倒的なチカラを見せつけられた。そして今度は、青年ほどのチカラはないが、君たちに助けられた。スバラシイ実力だった」



 男であるセイと、女であるセーコが同一人物だということに、イティカはまだ気づいていないのだ。完全に別人だと考えているようだ。



「ケガのほうは?」



「もう大丈夫だ。そこのフォルモルくんだったかな? 彼女の治癒魔法で傷は癒えた。スバラシイ魔法だ。元凶を仕留められなかったことは残念だが、ケルベロスはもう出ないだろう。ひとまずメデタイことだ」



「ええ」



 イティカは一歩一歩踏みしめるようにして、セイのもとに歩み寄ってきた。



「君たちはもう冒険者として登録はしているのかな?」



「いえ。まだ」



「なら、ぜひ都市サファリアの冒険者にチカラを貸してもらいたい。君たちの実力は《キングプロテア級》だ。私のほうから推薦状を冒険者ギルドに渡しておこう」



 都市サファリアを、活動拠点にするのも良いかもしれない。



「わかりました。ありがとうございます」



 イティカが握手を求めてきた。



 あらためてイティカを見る。整いすぎた顔にプラチナブロンドの髪が張り付いていた。なにより異様にスタイルが良い。もしかして男に戻ったときのセイよりも、背が高いかもしれない。



「ところであの女は、いったい何を残して行ったのだろうか?」



 イティカが不審そうに目を向けた。
 目線の先には、カンオケが置かれていた。



「さあ。なんでしょうか」



 もしかすると何か危険なものかもしれない。容易に触れて良いのかもわからない。警戒していたのだが、カンオケのほうから勝手にフタが開いた。また何かバケモノでも出てくるのではないかと身構えた。



 違った。
 カンオケの中に入っていたのは――。



 首の――
 首のない人間の死体だった。

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