《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第48話~イティカ・ルブミラルⅡ~

 冒険者ギルドがまだ、都市サファリアの自警団として機能していた当時から、イティカはギルド長をつとめていた。男たちもいたが、イティカを女だからと侮る者はいなかった。



 理由は2つ。



 1つはイティカが強いからだ。〝無限剣印〟といわれる印をイティカは持っている。フィルドランタ全世界でも、同じ時代に2人か3人持っているか否かという稀少性の高い印だった。



 もう1つ、イティカはもともとロダマリア帝国で帝国騎士長をやっていたからだ。ロダマリア帝国は男性社会だった。肩身の狭さからサファリアに移ってきたのだった。それでも元帝国騎士長の肩書きは威光を放つらしかった。



「イティカさま」
 と、ザンザとテルデルンが、ケルベロスへの警戒をゆるめずに歩み寄ってくる。



「皮膚は硬く、キバは鋭い」
「どこか弱点は?」
「目玉を狙おう」



 目視できるかぎり、イチバンやわらかそうなのは、獰猛にぎらつくその6つの瞳だ。



「可能でしょうか?」



「可能か不可能かではない。やらねばならんのだ」



 都市サファリアは自治都市というだけあって、自由で豊かな都市だった。サファリアが好きだった。商人たちが行き交い、旅芸人が踊り、詩人が歌って盛り上がる都市が好きだった。



 だからこそ自警団をまとめていたのだ。この憎むべき雨が降って、サファリアはメチャクチャになった。世界の滅亡を垣間見ている気がする。



 それでも――。
 それでも最後まで足掻き続ける。



 自分が好きな都市と土地のため、ギルド長としてモンスターを駆除し続けなければならないのだ。



 ザンザとデルデルンは気弱な表情を見せていた。ケルベロスの放つ殺気に気圧されているのだ。



「案ずることはない。私たちは蹂躙された都市サファリアに平和をもたらした。潰滅したかと思われた都市は、今ではちゃんと機能している。都市サファリアを守ったのは誰だ?」



「それはもちろん私たちです」
「そうだ。だから今度も――」



 やらねばなるまい。
 しかし――それにしても――。



 イティカはケルベロスと対峙していて思う。このモンスターはただのモンスターではない。男たちが変貌して生まれたゴブリンやミノタウロスとは違う。強さはもちろんだが、根本的に何かが違う気がする。



「ぐらぁぁぁーーッ」
 咆哮を放ち、ケルベロスは駆けてきた。



「来るぞッ」



 両手から生えている刀剣を交差させた。ケルベロスの突進を受け止めた。交差した剣にケルベロスは顔面を押し付けてくる。生々しい吐息がイティカのカラダをつつんだ。



 怖ろしい。
 怖ろしいが、ケルベロスはイティカの間合いに入っていた。



「《剣山》」
 つぶやく。



 イティカは右肩から生えている剣を伸ばした。カラダから生えている剣はある程度まで伸縮がきくのだ。この技名を《剣山》とイティカは名づけていた。



 剣先が槍のように突き出されてケルベロスの目玉を突いた。



「やったか!」



 槍はケルベロスの目玉をシッカリと貫いていた。しかし、ケルベロスは痛がる素振さえ見せなかった。



 ケルベロスはその巨大な口を大きく開いた。血に染まった赤い歯の向こうに、赤黒いノド奥が見えた。



 食われる……ッ。



 せめてザンザとテルデルンをこの場から逃がさなければならない。そういう考えが働いた刹那。イティカは視界の隅っこで別の人影をとらえていた。それは木の枝の上に立つひとりの青年の姿だ。



(あれは……?)
 男だ。



 青年は木の枝から真っ直ぐ、ケルベロスめがけて落下した。青年は降下してくるさなか、そのカラダをドラゴンに変身させた。そしてドラゴンと化した口で、ケルベロスのノドもとにくらいついた。



 あれだけ固かったケルベロスの皮膚は簡単に食いちぎられていった。圧倒的だった。ケルベロスは苦しむ様子すらなく息絶えていた。



「バカな」
「ケルベロスを一瞬で?」



 と、ザンザとテルデルンが顔を見合わせていた。



 ドラゴンだったものが、ふたたび青年の姿に戻っていた。



「何者だ」
 イティカは油断せずに、誰何すいかした。



 ケルベロスを倒してくれたは良いが、敵か味方かわからない。仮に敵となったら怖ろしいことだ。



「警戒する必要はありません。援護に入っただけですから」
 青年から殺気は感ぜられなかった。



「そうか」
 クト村で男が出たというウワサを思い出した。おそらくこの男だろうと判断がついた。



「もしや〝英雄王〟の印を持つ者か」



 この雨に降られてもモンスターにならない。そういう存在がかつて神話の中にいたことを、イティカは聞いたことがあった。



 しかし、青年は返答することなく、森の奥に消えてしまった。

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