《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第46話~ケルベロス~

 木々が雨に打たれて哀しげに葉っぱを揺らしている。葉っぱの1枚1枚から涙を流すように雨粒をこぼしている。その一滴がセイのひたいも濡らした。



「もう濡れることに慣れてきちゃった」
 フォルモルはそう言って、メイド服のスカートのスソをしぼっていた。



 メイド服がぴったりと服に張り付いて、黒いブラジャーを透けさせていた。呼吸にあわせておっぱいがわずかに震えているのを見て取れた。そして、それはセイ自身もそうだ。女体化しているため、服が乳房の輪郭を浮かび上がらせている。



 しかし、淫らな雨に酔いしれている場合ではない。



「あれが、そうです」
 と、低木の茂みに身を隠しているピュラが指差した。



 巨木にまとわりつくように、いくつものツリーハウスがあった。それがエルフの集落なのだそうだ。その巨木の根本に黒毛のイヌがカラダを丸めていた。



 大きさは馬の10倍はある。しかも1つの胴体から、獰猛そうなイヌの顔が3つも生えている。そしてその残酷さを証明するように、エルフの下半身と思われるものを口にくわえているのだった。



「殺すべきでしょうか?」
 セイの問いに応えたのは、タギールだ。



「殺して死体を持ち帰ったら、きっと英雄だぜ。なにせ《キングプロテア級》の冒険者に向けられたクエストだ」



「なだめるとか、飼い慣らすとか」
 戦わないで済むのであれば、そのほうが良い。



「ムリムリ。ゼッタイにムリだ。ちょっとでも油断したら、そのときは頭からパクリだ」



「そうですか」



「それに、そもそも倒せんのかよ。あのバケモノを」



「ええ、まぁ……」



 キリアの筋力増強魔法では手に負えないかもしれない。でも、ドラゴンになってしまえば相手になれそうだ。



 タギールは鼻で笑った。



「あれを倒せる? 都市サファリアの《シャクナゲ級》の冒険者をもう3人は食ってるんだ。あんまりナめないほうが良いぜ」



 セイの身を案じてくれているのか、それとも、別の感情から起因しているのかはわからないが、タギールはムキになってそう言った。



 そのときだ。



「おやおや。まさか私たち以外にも、ケルベロスの居所にたどりついた者がいるとはね」
 と、話しかけてくる者がいた。



 セイは驚いた。
 ひとりはプラチナブロンドの髪をした背の高い女性だった。2人の武装した女性を連れていた。



 そして、武装していない村娘に見覚えがあった。クト村でセイが助けた女性――たしかアンヌ・チェルと名乗っていた。



 セイのほうはアンヌに気づいたが、アンヌはセイのことに気づかなかったようだ。それもそのはず。今のセイは女性の姿をしているのだ。



(レドから〝男女印〟をもらったことは、知らないのかな)
 と、思った。



 わざわざ教える必要もないし、黙っておこうと思った。しかし、それにしても、なにゆえアンヌがアカジャックの森にいるのか……。

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