《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第41話~アンヌ・チェル~

 アンヌ・チェルは恋していた。



 5匹のゴブリンを圧倒して、アンヌの傷を癒してくれたクロカミ・セイにたいして――である。



「はぁ……」
 桃色の吐息をおとした。



 ゴブリンを倒した手際の良さは、まるで黒い嵐のようだった。あの圧倒的な強さ。そして、アンヌの傷を癒してくれた優しい光――。思い出すだけでも、動悸がはげしくなる。



「すんすん」
 と雨降るなかアンヌは鼻をひくつかせる。



(セイさまの匂いがする)



 都市サファリアのストリートである。アンヌはどうしてもセイのことが忘れられず、追いかけてきたのだった。



 村の者たちに止められたが、振り切って出てきた。それにアンヌにはセイを見つける自信があった。



「すんすん」
 ともう一度鼻をひくつかせた。



 これがアンヌの印チカラだった。アンヌにはその人の魔力の匂いをかぎ取ることができるのだ。カラアゲの匂いにつられる人間のように、あるいは花粉につられる蝶のように、アンヌは魔力の匂いをたどっていた。



(セイさまの匂い……)



 それは都市サファリアの冒険者ギルドに続いていた。入る。明るい喧騒がアンヌのことを迎え入れてくれた。



 木造の長机やイスが置かれている。部屋の隅のほうに暖炉があった。その暖炉の前に立って、アンヌはカラダを乾かすことにした。



「すんすん……」
 ますます強く匂う。
 すぐ近くにいらっしゃるのだ。



 周囲を見渡す。
 武装した女性がいるばかりで、肝心なセイの姿を見つけることができなかった。



(会ったらどうしようかしら)



 会いたいという衝動だけでやって来たので、会ってからのことを考えていなかった。



「おっ、どうかしましたか御嬢さん?」
 声をかけられた。



 プラチナブロンドの美しい女性だった。美しいことには美しいのだが、どことなく作り物めいている。目が大きすぎるせいかもしれない、あまりに整った笑顔のせいかもしれない。



 それに、すごく背が高い。
 アンヌの2倍ぐらいある。



「えっと……」



「これは失礼。私はこの冒険者ギルドのギルド長をやっている。イティカ・ルブミラルという者だ。ギルド長であり、《キングプロテア級》の冒険者でもある」



「ど、どうも、はじめまして」
 なんだかよくわからないが、偉い人なのだと思ったので、あわてて頭を下げた。アンヌも名乗った。



 ハハハッ――とイティカは豪快に笑った。



「畏まることはない。アンヌくんは、どうして冒険者ギルドに? もしかして何か困っていることがあるのかい?」



「人を探しているんです」



「人探しか。なら、受付に行ってクエストを発注してもらうように頼むと良い。冒険者たちが受けてくれるはずだ」



「いえ。そういう人探しではなくて――。ここにクロカミ・セイという男の人が来ませんでしたか?」



 暖炉の火がパチパチとはぜた。
 イティカは怪訝な顔をした。



「この雨だ。男性であればみんなモンスターになってしまっているだろう」



「いえ。この雨でもモンスターにならない人なんです」



「この雨でも、人間のまま?」
「はい」



 イティカは思案気に首をひねった。



「まるで神話に登場する英雄王ハーレムのような男だな。……そう言えば、クト村で男が出たとかなんとか」



「はい。その男の人だと思います」



「なら、あのウワサはホントウだったのか。しかし残念ながら、ここに男は来ていない。来ていれば、いまごろ大騒ぎだ。ここにいる女たちは血気盛んだからね。男なんか来たら、セミの抜け殻同然になるまで搾り取られてるところだよ」



「ひっ……」



 セイが他の女の手にかかるところを想像するだけで、胸を焼かれるような嫉妬をおぼえた。



「そう驚くことはない。男がモンスターになっちまって、女たちは急に性的に飢えはじめちまってる。生物の本能がそうさせてるのかもしれないね」



 パチパチ。
 また暖炉の火がはぜる。



「でも、ここにセイさまの匂いが」
「匂い?」



 魔力の匂いをかぎわけることができるのだ――とアンヌは説明した。



 何に反応したのか、イティカは「良ければ、食事でもおごろう」と真剣な顔をして言った。

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