《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第32話~英雄印~

 暗雲たちこめる空のもと、セイは両翼をはばたかせた。その手には儚い少女がにぎられている。レフィール伯爵だ。



 レフィール伯爵はやさしくセイの手に体重をあずけていた。依然として雨は降り続いている。だが、セイのカラダでレフィール伯爵へ雨が落ちることはなかった。



『何もかもメチャクチャにして、どうするつもりですか』



 直接セイの胸中に話しかけてきた。



 声帯が人間ではない今、セイは声を発することができない。しかし、念話でなら話しかけることができた。



『すみません。でも、我慢ならなくて』



『ミリス第一王子は腰を抜かしていましたよ。オシッコまで漏らしてました。あれじゃあ、しばらく立ち直れないのではないでしょうか?』



 心に響くレフィール伯爵の声に、咎める調子はイッサイない。むしろ、この状況を楽しんでいるかのようだった。



『あとで謝っておきます』



『いえ。黙っておきましょう。顔を隠していたのは正解です。あとで、セイの仕業だとバレたら、厄介なことになるかもしれません』



『大丈夫でしょうかね? 処断の件とか』



 思わず首を突っ込んでしまったが、何も考えはなかった。



『後でいろいろと厄介なことになりそうですが、上手く言っておきましょう。ミリス第一王子もしばらく立ち直れないでしょうし』



 たしかに、すごいビビリようだった。



『あの――』
『なんです?』
『オレに愛してるって言いましたよね?』



 口に出して言うと恥ずかしいことも、心の中でなら切り出すことができた。



『さて、なんのことでしょうか』
 と、レフィール伯爵のほうはトボけた応答をした。



『えー。言ったじゃないですか。愛してるって』



『セイ』
『なんですか?』



『私は自国のことがあるので、土地を離れることはできません。かわりにメイド長を3人セイに貸し与えましょう』



『フォルモルとキリアとシラティウスの3人ですか?』



 レフィール伯爵奪還に、3人からもらった魔法が活躍した。苦労してもらったカイがあるというものだ。



『ええ。そして明日の朝、キュリンジを発ってください。世界中の女たちを一刻もはやく救わねばなりません』



 レフィール伯爵の声は決意に満ちていた。
 そもそも、それが当初の目的だった。



『レフィール伯爵は大丈夫ですか?』



『もし、何かあればすぐにセイを呼びます。大丈夫です。私とあなたの心は、こうしてつながっているのですから』



『そうですね』
 心がつながっている。



 それがうれしくて、セイは空からいっきに降下した。急降下にたいして、レフィール伯爵は「ひゃぁーッ」と悲鳴をあげていた。

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