《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第30話~レフィール伯爵Ⅳ~

(これで良かったんだろうか)



 セイは王都の城下町の裏路地にいた。木箱があった。腰かけるのにチョウド良かった。建物の屋根が張り出しており、雨をしのぐことができた。


 すでにずぶ濡れだったので、いまさら雨をよけてもあまり意味はなかった。セイの前髪を水滴がしたたっていた。



「はぁ」
 ため息を落とした。



 大きな喪失感があった。胸の中にぽっかりと穴が開いたようだ。レフィール伯爵を連れて行かれたせいだ。



(オレは……恋をしてたのかもしれないな)
 と、思った。



 誰からも評価してもらえなかった自分を拾い上げてくれた、処女雪のような肌を持つ彼女に惹かれていたのだ。



 あの美貌に惹かれない男などいないはずだ。容貌だけではない。レフィール伯爵は魂までも清い人だった。3人のメイド長たちも、みんなはレフィール伯爵に救われているのだ。みんな、彼女に居場所を与えてもらったのだ。



 フォルモル、キリア、シラティウスの3人もこんな結果になることは、望んでいなかっただろう。



 しかし、この現状はどうしようもない。
 厭々ではあるが、レフィール伯爵本人も納得していることだ。



(どんな顔して戻れば良いんだよ)



 大粒の雨がストリートの石畳を打ち付けていた。裏通りにはお面屋があった。子供のオモチャだ。店主はいない。避難したのか、モンスターになったのかのどちらかだろう。



 セイはなにげなく仮面のひとつを手にとった。真っ白い面だ。口が異様につりあがっている。他人を驚かしたりするのに使えるかもしれない。



『セイ。聞こえますか?』
 声がした。
 すぐにわかった。
 レフィール伯爵の声だ。



 鼓膜を震わせる声ではない。直接脳に響く声音だった。



『なんでしょうか?』



 すがるような思いで、その声に応じた。送られてくる音から、レフィール伯爵の心情を推しはかろうと心の耳をそばだてた。



『ひとつお伝えし忘れていました』
『はい』



『はじめてこの王都で出会ったとき、あなたは私のことを救ってくださいました。私の騎士でもないのに』



『今はもう、伯爵の騎士ですけどね』



 きっと肉声で発すれば声が震えてしまっていただろう。
 けれど心の中では、冗談めかして言えた。



『そのとき私は、あなたの心を美しいと感じました。あのときあの場所にあなたがいなければ、私が死んでいたことでしょう。セイのこと、愛しておりました』



 それでは――とレフィール伯爵の念話が途絶えた。



 愛していた。



 それはどういう意味で言ったのだろうか。人として愛していたということか。部下としてか。それとも異性として?



 わからない。
 だが、「愛していた」の音はセイの心に火をつけた。



 惚れた女を他人に取られて、それを黙って見ているようでは、〝英雄印〟の名もすたる。



「オレは英雄王ハーレムの印を持つ者だ」
 声に出してつぶやいた。



 手に持っていた仮面を顔に装着した。

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