《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第29話~レフィール伯爵Ⅲ~

 ロイラング王都までは、けっこう距離がある。途中でモンスターの邪魔でも入らないだろうかと思った。モンスターによって邪魔されれば、少しでもレフィール伯爵と一緒にいられる。しかし、こんなときにかぎって、モンスターが現れないのだった。



 順調に王都の到着してしまった。



 都市に入る。
 城下町はだいぶ荒れ果てていた。壁には穴が開き、屋根が崩落している建物が多かった。モンスターによる仕業だろう。モンスターの死骸が、散乱していた。



「生きたモンスターはいないようですね」
 と、レフィール伯爵があたりを見渡した。



「鎮圧したということでしょう。さすがは王都だといったところでしょうか」



 セイは、レフィール伯爵に傘をさしながら歩いた。



 ストリートを歩いていると、騎士による出迎えがあった。驚いたことに、みんな男性騎士だった。



「お待ちしておりました。レフィール伯爵」
 と、男性騎士たちがかしずいた。



「あなたたち――。どうしてモンスターにならないのです?」



「我らは、ミリス・ローネ王子の撥水魔法によって、雨を弾くことができるのです」



「彼はそんな魔法が使えたのですか」



「はい。この雨に濡れてもモンスターにならない。神話の英雄王ハーレムを彷彿とさせられます」



 男性騎士たちはそこまで言うと、セイのほうに視線を向けた。かつては王都で働いていたのだから、もちろんみんなセイと顔見知りだった。



「雨が降り出したとたんに、王都から逃げ出したそこの男とは、王子は格が違いますな」



 騎士の1人がそう言うと、笑い声があった。



 レフィール伯爵が何か言い返そうとしたので、セイはすぐに制した。こういう揶揄には慣れている。



「王子が参ったようです」



 騎士たちが道を開いた。金色の髪をした青年だ。この雨にもかかわらず髪が逆立っている。眉は凛々しく、目鼻立ちがハッキリとしている。自信に満ち溢れた笑みを浮かべていた。いかにも人を惹きつける顔だ。



 御付きの者たちが、王子の頭上に傘をかざしていた。



「やあ、来てくれたか。レフィー。結婚の話はちゃんと届いただろうね?」



「はい」



「ならば、すぐに挙式だ。そして、すぐにでも子供をつくろうじゃないか。こんな事態だ。オレもいつモンスターになるか、わからないからね」



「……」



 王子がレフィール伯爵の腕をつかみ、引き寄せた。


 セイの傘のなかから、レフィール伯爵が出て行った。レフィール伯爵の白い腕が残像を残していった。レフィール伯爵が何か物言いたげな顔をしてセイのことを見ていた。セイの近くにあったレフィール伯爵の甘い香りが、雨でたちまち消されてしまった。



「おや? 君は、たしか……」
 王子が不思議そうな顔をして、セイを見つめた。



「どうも」
 と、会釈しておいた。



「ウワサに聞いてるよ。たしか、クロカミ・セイだろう。〝英雄印〟を持つ男だとか。しかしまぁ、あんまりに役に立つ男じゃないようだけどね」



「はぁ」
 複雑な思いだった。



 まさか王子が自分のことを知っているとは思っていなかったのだ。しかし、あまり良くない知られかたをしているようだ。



「君のことはお呼びじゃないんだ。ロイラング城がモンスターに占拠されたとき、王都から逃げ出したんだろう? ほんらいなら処罰に値するところだけれど、見逃してやるから、どこへでも行きなよ」



 王子はイヌでも追い払うかのように、「しっしっ」とやった。


 逃げ出したというか、正確にはクビになってたんだから、別に逃げたことにはならんだろう――と、さすがに鼻白む思いだった。



 だが、相手が王子では文句も言えない。王子のほうはセイにたいして、敵対心があるわけではなく、ホントウに興味がないようだった。



 レフィール伯爵の華奢なカラダが、王子の腕の中にあった。雨に濡れてレフィール伯爵のカラダが濡れていた。ドレスが張り付いて乳房を浮き上がらせていた。撥水魔法を使えるのなら、レフィール伯爵にもかけてやれば良いのに、と思った。



 レフィール伯爵は王子に連れて行かれた。



「ここから先は立入禁止だ。さっさと去れ」
 他の騎士たちに止められた。



 セイは雨のなか、呆然と立ち尽くしていた。

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