《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第29話~レフィール伯爵Ⅲ~
ロイラング王都までは、けっこう距離がある。途中でモンスターの邪魔でも入らないだろうかと思った。モンスターによって邪魔されれば、少しでもレフィール伯爵と一緒にいられる。しかし、こんなときにかぎって、モンスターが現れないのだった。
順調に王都の到着してしまった。
都市に入る。
城下町はだいぶ荒れ果てていた。壁には穴が開き、屋根が崩落している建物が多かった。モンスターによる仕業だろう。モンスターの死骸が、散乱していた。
「生きたモンスターはいないようですね」
と、レフィール伯爵があたりを見渡した。
「鎮圧したということでしょう。さすがは王都だといったところでしょうか」
セイは、レフィール伯爵に傘をさしながら歩いた。
ストリートを歩いていると、騎士による出迎えがあった。驚いたことに、みんな男性騎士だった。
「お待ちしておりました。レフィール伯爵」
と、男性騎士たちがかしずいた。
「あなたたち――。どうしてモンスターにならないのです?」
「我らは、ミリス・ローネ王子の撥水魔法によって、雨を弾くことができるのです」
「彼はそんな魔法が使えたのですか」
「はい。この雨に濡れてもモンスターにならない。神話の英雄王ハーレムを彷彿とさせられます」
男性騎士たちはそこまで言うと、セイのほうに視線を向けた。かつては王都で働いていたのだから、もちろんみんなセイと顔見知りだった。
「雨が降り出したとたんに、王都から逃げ出したそこの男とは、王子は格が違いますな」
騎士の1人がそう言うと、笑い声があった。
レフィール伯爵が何か言い返そうとしたので、セイはすぐに制した。こういう揶揄には慣れている。
「王子が参ったようです」
騎士たちが道を開いた。金色の髪をした青年だ。この雨にもかかわらず髪が逆立っている。眉は凛々しく、目鼻立ちがハッキリとしている。自信に満ち溢れた笑みを浮かべていた。いかにも人を惹きつける顔だ。
御付きの者たちが、王子の頭上に傘をかざしていた。
「やあ、来てくれたか。レフィー。結婚の話はちゃんと届いただろうね?」
「はい」
「ならば、すぐに挙式だ。そして、すぐにでも子供をつくろうじゃないか。こんな事態だ。オレもいつモンスターになるか、わからないからね」
「……」
王子がレフィール伯爵の腕をつかみ、引き寄せた。
セイの傘のなかから、レフィール伯爵が出て行った。レフィール伯爵の白い腕が残像を残していった。レフィール伯爵が何か物言いたげな顔をしてセイのことを見ていた。セイの近くにあったレフィール伯爵の甘い香りが、雨でたちまち消されてしまった。
「おや? 君は、たしか……」
王子が不思議そうな顔をして、セイを見つめた。
「どうも」
と、会釈しておいた。
「ウワサに聞いてるよ。たしか、クロカミ・セイだろう。〝英雄印〟を持つ男だとか。しかしまぁ、あんまりに役に立つ男じゃないようだけどね」
「はぁ」
複雑な思いだった。
まさか王子が自分のことを知っているとは思っていなかったのだ。しかし、あまり良くない知られかたをしているようだ。
「君のことはお呼びじゃないんだ。ロイラング城がモンスターに占拠されたとき、王都から逃げ出したんだろう? ほんらいなら処罰に値するところだけれど、見逃してやるから、どこへでも行きなよ」
王子はイヌでも追い払うかのように、「しっしっ」とやった。
逃げ出したというか、正確にはクビになってたんだから、別に逃げたことにはならんだろう――と、さすがに鼻白む思いだった。
だが、相手が王子では文句も言えない。王子のほうはセイにたいして、敵対心があるわけではなく、ホントウに興味がないようだった。
レフィール伯爵の華奢なカラダが、王子の腕の中にあった。雨に濡れてレフィール伯爵のカラダが濡れていた。ドレスが張り付いて乳房を浮き上がらせていた。撥水魔法を使えるのなら、レフィール伯爵にもかけてやれば良いのに、と思った。
レフィール伯爵は王子に連れて行かれた。
「ここから先は立入禁止だ。さっさと去れ」
他の騎士たちに止められた。
セイは雨のなか、呆然と立ち尽くしていた。
順調に王都の到着してしまった。
都市に入る。
城下町はだいぶ荒れ果てていた。壁には穴が開き、屋根が崩落している建物が多かった。モンスターによる仕業だろう。モンスターの死骸が、散乱していた。
「生きたモンスターはいないようですね」
と、レフィール伯爵があたりを見渡した。
「鎮圧したということでしょう。さすがは王都だといったところでしょうか」
セイは、レフィール伯爵に傘をさしながら歩いた。
ストリートを歩いていると、騎士による出迎えがあった。驚いたことに、みんな男性騎士だった。
「お待ちしておりました。レフィール伯爵」
と、男性騎士たちがかしずいた。
「あなたたち――。どうしてモンスターにならないのです?」
「我らは、ミリス・ローネ王子の撥水魔法によって、雨を弾くことができるのです」
「彼はそんな魔法が使えたのですか」
「はい。この雨に濡れてもモンスターにならない。神話の英雄王ハーレムを彷彿とさせられます」
男性騎士たちはそこまで言うと、セイのほうに視線を向けた。かつては王都で働いていたのだから、もちろんみんなセイと顔見知りだった。
「雨が降り出したとたんに、王都から逃げ出したそこの男とは、王子は格が違いますな」
騎士の1人がそう言うと、笑い声があった。
レフィール伯爵が何か言い返そうとしたので、セイはすぐに制した。こういう揶揄には慣れている。
「王子が参ったようです」
騎士たちが道を開いた。金色の髪をした青年だ。この雨にもかかわらず髪が逆立っている。眉は凛々しく、目鼻立ちがハッキリとしている。自信に満ち溢れた笑みを浮かべていた。いかにも人を惹きつける顔だ。
御付きの者たちが、王子の頭上に傘をかざしていた。
「やあ、来てくれたか。レフィー。結婚の話はちゃんと届いただろうね?」
「はい」
「ならば、すぐに挙式だ。そして、すぐにでも子供をつくろうじゃないか。こんな事態だ。オレもいつモンスターになるか、わからないからね」
「……」
王子がレフィール伯爵の腕をつかみ、引き寄せた。
セイの傘のなかから、レフィール伯爵が出て行った。レフィール伯爵の白い腕が残像を残していった。レフィール伯爵が何か物言いたげな顔をしてセイのことを見ていた。セイの近くにあったレフィール伯爵の甘い香りが、雨でたちまち消されてしまった。
「おや? 君は、たしか……」
王子が不思議そうな顔をして、セイを見つめた。
「どうも」
と、会釈しておいた。
「ウワサに聞いてるよ。たしか、クロカミ・セイだろう。〝英雄印〟を持つ男だとか。しかしまぁ、あんまりに役に立つ男じゃないようだけどね」
「はぁ」
複雑な思いだった。
まさか王子が自分のことを知っているとは思っていなかったのだ。しかし、あまり良くない知られかたをしているようだ。
「君のことはお呼びじゃないんだ。ロイラング城がモンスターに占拠されたとき、王都から逃げ出したんだろう? ほんらいなら処罰に値するところだけれど、見逃してやるから、どこへでも行きなよ」
王子はイヌでも追い払うかのように、「しっしっ」とやった。
逃げ出したというか、正確にはクビになってたんだから、別に逃げたことにはならんだろう――と、さすがに鼻白む思いだった。
だが、相手が王子では文句も言えない。王子のほうはセイにたいして、敵対心があるわけではなく、ホントウに興味がないようだった。
レフィール伯爵の華奢なカラダが、王子の腕の中にあった。雨に濡れてレフィール伯爵のカラダが濡れていた。ドレスが張り付いて乳房を浮き上がらせていた。撥水魔法を使えるのなら、レフィール伯爵にもかけてやれば良いのに、と思った。
レフィール伯爵は王子に連れて行かれた。
「ここから先は立入禁止だ。さっさと去れ」
他の騎士たちに止められた。
セイは雨のなか、呆然と立ち尽くしていた。
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