《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第25話~シラティウスⅤ~

 印を重ね終ってもシラティウスは、しばらくセイに足をナめさせた。セイを四つん這いにして馬乗りになったり、セイの頭をナでたりした。まるで動物扱いだ。シラティウスは、そうすることで満足するようだった。



 シラティウスはレフィール伯爵に拾われるまでは、旅芸人に動物として扱われたと言っていた。ただのサディストではなく、過去の鬱憤を誰かにブツけることで満足するのかもしれない。



 そう思ってセイは、されるがままになっていた。



 シラティウスは不意に、セイの首輪を外した。



「外に行く」
「雨、降ってるぜ」



 悪魔の雨はいっこうにやむ気配なく、むしろ勢いを増して降り続いている。



「練兵場に」



「まさか、練兵場を四つん這いで走らせようっていうんじゃないだろうな? さすがに、それは遠慮したいんだが」



 言うと、シラティウスの頬がみるみる赤くなった。
 肌が雪みたく白いので、紅潮が目立つ。



「違う。セイがホントウに私を抑えれるか、実際にやって見せてもらう」



「オーケー。そういうことなら。でも、オレは良いがそっちは雨に濡れるんじゃないか? セッカク風呂上りなのに」



「ドラゴンになるから、関係ない。先に行ってる」



 そう言うとシラティウスは窓を開け放ち、外に跳び出した。シラティウスの部屋は、レフィール伯爵邸宅の2階にあたる。さすがに跳び出すには、地面から遠すぎる。だが、何も問題はなかった。



 シラティウスはドラゴンになって、練兵場へとはばたいていた。シラティウスのドラゴンに変身した姿はうつくしい。白銀のウロコに身を包む姿は、巨大な騎士のようだ。



(オレも、上手くドラゴンになれるか?)
 不安があった。



 フォルモルや、キリアのような今までの能力とは格が違う。とにかく、やってみなくてはわからんな、と思い直した。自分のことを評価してくれているレフィール伯爵のためにも、弱気になってはいけないのだと活をいれた。



 セイはちゃんと邸宅の出口から外に出た。



 練兵場。
 シラティウスの前に立つ。



 長い尻尾が左右に揺れて、練兵場の水たまりを跳ね飛ばしていた。まるで構ってもらうのを待っているイヌのようだ。はじめて見たときはビビったけれど、中身が少女だと知ればたいして怖くはない。



 今は暴走していないのだろう。



「よし」



 声に出して意を決した。チカラを込める。全身が黒いウロコで覆われていった。カラダが大きくなっていく。尻尾が生えた。首が伸びた。自分が自分でない――もっと大きな存在になっていくのを感じた。肉が、骨が、血がミシミシと音をたてていくかのようだった。



 無事にドラゴンになれた。



 シラティウスが突っ込んできた。ゴツン。硬いウロコ同士がコスれあった。シラティウの歓喜が伝わってきた。声帯が変わっているのか、しゃべることはできなかった。でも、なぜか考えていることはわかった。



 シラティウスは、ずっと1人だったのだ。
 今日はじめて、同じドラゴンになれる人間――同族を得たのだった。



 気づけば2人とも人の姿に戻っていた。



「シラティウスが暴れたら、オレが止める」
「セイが暴れたら、私が止める」
「これで解決だ」



 シラティウスは水をすくって、セイに投げつけてきた。セイもやり返した。



 ジャレ合う2人、淫雨のなか。

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