《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第20話~怪力印~

 部屋に戻る。
 先客がいた。



 レフィール伯爵だ。木箱の上に腰かけて、紅茶を飲んでいるようだった。香ばしい匂いがたちこめている。



「どうやら、2つ目の印もうまく重ねることができたみたいですね」



「ええ。いろいろと大変でしたが」



「ご苦労さまです。ですが、城内でのセイの評判は上がっておりますよ」



「オレの評判?」



「フォルモルの妹を助けたことと、今回の救助のことを、城の者たちはウワサしておりました」



「そうですか」
 面映ゆいというのだろうか、セイは心臓をくすぐられているような心地になった。



「それに比べると、私は失態ばかりですね」
 はぁ――とレフィール伯爵は大きなため息を落とした。



「失態?」



「結局、男たちを守ることが出来ませんでした。城下町のほうはモンスターで埋め尽くされています。この雨では、残された男たちを救い出すこともできない。もっと……もっと別の策を考えるべきでした」



 紅茶を持つ手が震えていた。



 伯爵といえども、まだ去年の暮に家督を継いだばかりの子どもだ。打たれ弱いところはあるのだろう。



「女たちを守れただけでも、良しとしましょう」



 悪魔の雨に対策をとっていただけでも上々だろう。ほかの国や都市は、もっと甚大な被害を出しているはずだ。



 去年の暮に伯爵になったばかりだというのに、短時間で対策を打ち立てた手腕は、むしろ称賛に値する。



 貴族のオエライサンがたは、策をひとつ打ち立てるのにも、多大な時間を要する。国王やそれに連なる者たちの顔色をうかがい、貴族の派閥などにも気をつかい、動かなければいけないからだ。



 ましてや悪魔の雨など、信ぴょう性のカケラもない事態に備えるのは、至難の技だったろうと思われる。



「そう言っていただけると、気分が楽になります。セイはお強いのですね」



「強いというほどのことではありませんよ」



 これでも騎士の端くれだったのだ。



 戦地に立ったことはないが、戦争は何度も見てきた。死体はあるていど見慣れている。人の上に立つ者が判断を間違えれば、ほんの些細なミスでも多くの命が失われることも稀有なことではない。



「セイ。いよいよ最後のひとりですよ。いえ。他の者と印を重ねても良いのですが、私が推薦した3人のうちでは、残る1人になりました」



 レフィール伯爵は、泣きごとを払拭するようにマナジリを決して言った。



「シラティウスですか」
 ドラゴンに変身する少女だ。



「彼女のチカラはあまりに強力です。それゆえに、彼女自身もチカラを持て余しているところがあります。どうか、チカラになってやってください」



 レフィール伯爵は紅茶をテーブルに置いて、セイの手をつかんできた。紅茶をにぎっていたせいか、レフィール伯爵の手は温もりにあふれていた。



「って言っても、またロクでもないところに、印があるんでしょう。どうぜ」



「いいえ。シラティウスの印はそれほど、恥ずかしい場所ではありませんよ。ただ、本人がナめるところを了承してくれるかは、わかりませんが」




「ナめやすい場所にあることを祈りますよ」
 手を重ねられていることが照れ臭くて、セイはあえておどけてそう言った。



「シラティウスの能力を得たとき、実質、セイはこのフィルドランタという世界において最強の騎士となりましょう。それから世界平和に向けて動かなければなりません」



「とりあえず目先のことに専念します」
 とにかく今は、シラティウスの印をナめることだ。

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