《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第11話~フォルモルⅢ~

 練兵場を迂回する通路を抜けると、レフィール伯爵の邸宅の前に出る。そのまま屋敷の中に入った。


「お帰りなさいませ」「おつかれさまです」とメイドたちが、フォルモルに頭を下げた。続けて、セイに好奇と色っぽい目を送ってくる。



 同じメイドのようだが、他のメイドはフォルモルにたいして頭が低いように思えた。



「メイドにも上下関係があるんですか?」



 あら、気づいた? ――とフォルモルはほほえんだ。



「私とキリアとシラティウスの3人は、メイド長という立場にいるの。レフィールさまの護衛の女騎士というのも兼ねているけど」



 要するに、3人はレフィール伯爵のお気に入りなのだろう。



「オレはどういう立ち位置になるんでしょうか?」



 誰にたいして頭を下げれば良いのか、どう接すれば良いのか、この城での自分のスタンスがまだよくわかっていない。



「きっと私たちメイド長よりも、上になるわ」
「え! まだ雇われたばっかりですよ?」



「だって、英雄を無碍には扱えないでしょう」
「英雄だなんて――」



 いまだ実感がわからない。その期待に応えられる自信もなかった。



「ここよ」
 と、フォルモルが足を止めた。



 そこは廊下にあるいくつものトビラのうちの1枚だった。真鍮製のドアノブがついていた。フォルモルはノックした。返答はなかったが、中に入った。



 何もない部屋だった。



 部屋の真ん中に、天蓋つきのベッドが置かれているだけだ。床は白いタイルの床で、汚れひとつ見受けられなかった。



「なんだか、不思議な部屋ですね」
 静謐さすら感じられた。



「私たちメイドは、みんなこのお屋敷に部屋を与えられているの。それで妹もここにいるのよ」



「寝てるんでしょうか?」



 ベッドの他には、何もない。
 ベッドにはカーテンが引かれていたので、中が見えないようになっていた。



「寝てるわ」



 フォルモルは慣れた足取りでベッドに近づいた。そしてカーテンを開いた。そこにはフォルモルと同じ紫の髪をした少女が眠っていた。ただ、フォルモルよりもまだ幼さが感ぜられた。



「また、起きてるときに出直しましょうか?」
 気を使ってセイはそう言った。



「その必要はないわ。妹は二度と目を覚まさないから」



「え?」



「シルベ教に襲撃されて、私の両親は殺された。そして妹は頭にダメージを負って、寝たきりになったのよ」



 フォルモルの深いところに踏み込んでいる。セイはそう勘付いていた。セイから歩み寄ったわけではない。フォルモルのほうから誘い込んできたのだ。



「治療魔法は?」



「私の治療魔法も試しているけど、あまり効果はないわね。私のチカラはあまりに重い傷や、病にたいしては効果がないの」



「いちおう生きてはいるんですね?」
「見ての通り、ちゃんと呼吸はしてるわ」



 たしかに少女は一定のリズムで胸を起伏させていた。



 かけてやれる言葉は思いつかなかった。「元気を出してください」というのも、「きっと大丈夫ですよ」というのも、キザっぽくて、空虚な言葉に思えた。結局、セイは黙っていた。



「試してみたいことがあるの」



 フォルモルは妹の顔を見つめながら、重い声でそう言った。



「なんですか?」



「私の印に、セイの印を重ねたら、セイは治療魔法を使えるようになるのでしょう?」



「ええ」



 実際に、レフィール伯爵の魔法を、セイは使うことができるようになった。



「2人で治療魔法をかけたら、妹を助けることができるかもしれない。そう考えてるのよ」



「2人でやると、効果が上がるんですか?」



 フォルモルは首を左右に振った。
 紫色の鮮やかな髪が揺れた。



「わからないわ。やってみないと。でも、〝英雄印〟を持つ者ならば、あるいは――なんて思っちゃうのよ」



 フォルモルは言葉を続けた。



「もし、協力してくれるのであれば、私の印と、セイの印を合わせましょう」



「もちろん協力しますよ」



 その程度で、印を重ねてくれるのであれば安い御用だ。自分のチカラですこしでもフォルモルの不幸をやわらげることが出来るのなら、むしろ積極的に協力したいとセイは思った。



「それじゃあ、今夜。私の部屋に来てちょうだい。私の部屋はこの部屋の隣よ」



「わかりました」



(フォルモルの魔法はすぐに、受け取れそうだ)



 セイは安堵の息を落とした。
 レフィール伯爵が最初に寄越してきただけはある。

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