《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第10話~フォルモルⅡ~

 フォルモルは傷を癒す魔法を使える。



 そのため、ケガ人が出た場合、駆り出されることがよくあるそうだ。一緒においで――とフォルモルに誘われて、セイは部屋を出た。



 レフィール伯爵の邸宅を出る。練兵場を迂回して歩くと、本城の正面に出る。その隣にケガ人を収容するための療養所があった。白い白亜の壁に赤レンガの屋根が積まれていた。



 中に入る。



 寝台が並べられており、各ベッドに女性たちが眠っていた。



 メイドたちが忙しそうに立ち回っている。
 陰惨な空気を感じた。
 血の臭いと、薬草の臭いが入り混じっていた。



「ケガ人はどこ?」
「こちらです」



 メイドがフォルモルのことを誘導した。頭がパックリと割れて、血を流している少女がいた。




 モンスターに襲われたところを、ここに運び込まれたらしい。他のケガ人もやはりモンスターに襲われたゆえに、ここにいるのだろうと思われた。



「酷い傷」
 フォルモルはそうつぶやくと、手に息を吹きかけた。


 そうすると白い光がフォルモルの指にまとわりついた。その指を少女の傷口に押し付ける。たちまち傷が閉じてしまった。セイのときも、このフォルモルの魔法によって治療されたのだ。



「これで良いわ。あとは血を拭いておいてちょうだい。他は薬草で間に合うでしょう」



 他数人の治療をテキパキと済ませた。



 セイもいちおう騎士として、基本的な応急処置は知っている。何か手伝おうかと思ったが無用だった。



 フォルモルは療養所を出た。
 セイもついて歩いた。



 練兵場を迂回する通路には、ちゃんと屋根つきの通路があった。雨を警戒していたレフィール伯爵の城ならではの通路だろう。



「オレ、療養所に入って良かったんでしょうか?」
「あら、どうしてそう思うの?」



「女性ばかりでしたし」
「それを言うならこの城の中もそうじゃない」



「そうですけど」
 なんとなく、迂闊うかつに立ち入ってはいけない雰囲気があったのだ。



「セイに見ていて欲しかったのよ。この魔法を持つ者の宿命をね」
 フォルモルはそう言うと、手に白い光をまとった。



「フォルモルの治療魔法ですか?」
「私の魔法を会得したいんでしょう?」



 顔を覗きこんできた。
 顔は笑っていたが、目には真剣な光があった。



「ええ」



「このチカラを得ると、きっと引っ張りだこになるわ。ちゃんと、それはわかっておかないとね」



 その考えはなかった。
 印を重ねろと言われて、そのことで頭がイッパイだった。



 ザアザアと雨粒が屋根を叩いている。



「モンスターが跋扈することになる、この世界では引っ張りだこになるかもしれませんね」



 戦争にも利用されそうだ。



 ええ、とフォルモルはうなずいて続けた。
「私の一族は代々この印を引き継いでいるの。トテモ重宝された時期もあって、私の両親はヒール教という教会をやっていたのよ」


 
「ヒール教?」
 これだけ便利な魔法を使える者は、そう多くはないはずだ。宗教として崇められても不思議ではない。



 しかし、「ヒール教」という名前は聞いたことがない。



「でも、邪教だって言われて、他の宗教にすぐに潰されたのよ。シルベ教ってところにね」



「シルベ教なら、聞いたことありますね」



 印は神が人に与えた福音だと崇めている宗派だ。セイは宗教にたいして無頓着だが、シルベ教の話はよく聞く。このフィルドランタにあまねく広がっている宗派だ。



「ある日、シルベ教の襲撃を受けて、私の両親は殺された。そして私は妹とふたりで逃げのびた。そこを拾ってくれたのが、レフィーさまだったわ」



 フォルモルの声に陰りはなかった。



 暗い過去を語っているという語調ではなかった。それはフォルモルという女性の強さなのだろうと思った。しかし、辛い過去であることに違いはない。



「セイ。あなたって不思議な人ね」
「オレがですか? 普通の人だと思いますけど」



 むしろ、平凡以下だとすら思っている。



「これも〝英雄印〟のチカラなのかしら。なんでも話してしまいたくなる。話すとすごく気分が軽くなるわ」



 フォルモルはセイの後ろに回って抱き着いた。豊満な乳房が、セイの背中でやわらかく潰れる感触があった。



「ちょ、ちょっと……」
「妹がいるの。ぜひセイにも会ってもらいたいわ」



 吐息まじりの声音が、セイの耳朶をくすぐった。

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