《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第9話~フォルモルⅠ~

 石畳の床。木製の脚に鉄の板を乗せたテーブルがある。木箱を並べただけのベッドがある。木造のクローゼットが置かれている。



 与えられたセイの部屋だった。



 レフィール伯爵は最初、もっと豪華な部屋をセイに与えようとした。



 だが、天蓋つきのベッドも、沈み込むほどフカフカのイスも緊張してくつろげなかった。そこで簡素な部屋に替えてくれと申し出たのだ。ただの一兵卒だったのだ。今までは兵舎で、他の騎士と一緒に詰め込まれて生活していたぐらいだ。個室を与えられるだけでも、充分ありがたい。



 レフィール伯爵の邸宅には違いないが、そのうちの1階にある物置を使わせてもらうことにした。



 しかし、これでも落ちつかない。



 ザーッと降り続く霖雨の雨音の中に、女たちのささやき声が聞こえる。



「〝英雄印〟を持ってるんですって」「じゃあ、悪魔の雨を受けても問題ないのね?」「どんな男?」「なかなか良い男よ」「英雄王の生まれ変わりに違いないわ」「わたし御茶を持って行くわ」「待って。私が持って行くから」「よしなさいよ。私がするから」……。



 レフィール伯爵の邸宅というだけあって、メイドが多い。すべて女性だ。そのメイドたちの注目の的になっているようなのだ。


 今までたいして注目を浴びることのなかった〝英雄印〟だが、ここでは違う。レフィール伯爵が重要視しているだけあり、その思想が浸透しているようだった。さらにこの悪魔の雨が、〝英雄印〟の価値を高めているようであった。



 男としてはうれしいのだが、気が休まらない。



 コンコン。
 トビラがノックされる。



「どうぞ」
 トビラが開けられた。



 入ってきたのはフォルモルだった。フォルモルがトビラを開けると同時に、メイドたちが数人顔を覗かせた。



「はーい。元気にやってるかしら」



 フォルモルの美貌はメイドたちの中で、群を抜いている。それもとびっきり艶めかしい。


 胸は豊かに張り出され、スソが短くてガーターベルトのボストンが見えていた。黒いストッキングにスラリとした長い足が包まれている。ストッキングとスカートのスソの合間に、わずかに見えるフトモモの白がまぶしかった。



「どこ見てるの」
「あ、いや。すみません」



 あわてて目をそらした。



「いいのよ。〝英雄印〟を持ってる騎士がいる――って、ウワサでは聞いてたけど、まさかこんな可愛らしい男の子だとは思わなかったわ」



 フォルモルは、粘っこい視線をセイに投げかけた。


「男の子って年でもないですけど」



 もう16だ。
 子供扱いされるのが不服だった。



「私はもう20を過ぎてるから、オバサンに見えるでしょう?」



「そ、そんなことないですよ。ぜんぜん若いじゃないですか」



「そう?」
「とてもおキレイです」



 ふふっ、とフォルモルは笑った。
 笑うとエクボができていた。



「恋愛対象として見れるかしら?」
 上目使いを送ってきた。



 カラカわれているのだとわかった。ぷっくらと膨れた真っ赤な唇が、ニヤニヤと笑っている。



 この人は自分の魅力を充分にわかっている。わかっていて、オレを弄ぶようなセリフを吐いているのだ。そうとわかるとセイも、ちょっとやり返したくなる。



「恋愛対象には見れませんよ。頭がクラクラしてマトモに見れないですから」



「あら。マトモに見れないの? でも、セイのお目目は、私に釘づけみたいだけど」



 フォルモモはそう言うと、スカートのスソを持ち上げて見せた。フトモモの付け根があらわになる。今にも見えそうだという瞬間に、フォルモモはセイの鼻先を指で突いた。



「スケベ」
「す、すみません」



 こうなると冗談をかわしている心境ではない。完全にフォルモモのタナゴコロの上で遊ばれている。



「それよりお飲物は何かいらないかしら? レフィーさまから、あなたのお世話をするように言われてきたのだけれど」



「別に必要ないですよ」



 レフィール伯爵から言われてきたということは、あの件だろうなと思った。印を重ねろという件だ。まずはこの女から試みよ――というレフィール伯爵の声が聞こえるかのようだ。



「あ、いや。やっぱり何か飲み物をいただけますか?」



 少しでもこのメイドを、引きつけておく理由が必要だった。印を重ねても良いかということを切り出すタイミングをうかがう必要がある。



「わかったわ。――それからもっと、軽い態度で接してくれたら良いのよ。セイは〝英雄印〟を持つ者なんだから」



「はぁ……」



 フォルモルのなれなれしい態度に、戸惑いをおぼえた。不愉快ではなかったが、その色っぽさに照れ臭さを覚えるのだ。



 フォルモルはすぐにティーセットを持ってきた。



 紅茶を飲んだ。
 わずかに甘く、わずかにほろ苦い。



「このフィルドランタという世界には、かつて〝異世界印〟という印を持つ人がいたそうよ」



 正面。
 フォルモルが木箱に腰かけている。やわらかそうなお尻がむっちりと潰れているのがわかる。わざとらしく足をくみかえる。ガーターベルドに彩られたフトモモの奥が、見えそうで見えない。



「〝異世界印〟ですか」




「昔の話だけどね。当時は地球という場所から、たくさんの文化を取り入れて、この世界は発達したそうよ。この紅茶もそのうちの1つ。私たちの使う言語もね」



「へぇー。詳しいんですね」



「レフィール伯爵は神話だけじゃなくて、歴史なんかにも深い造詣ぞうけいがあるのよ。その受け売りよ」



 フォルモルはまた足を組み替える。
 見えない。



 これもすべてフォルモルはわかっていて、やっているのだろう。



 レフィール伯爵がフォルモルを最初に寄越してきた理由が、なんとなくわかる気がする。フォルモルなら「印を重ねても良いか」という誘いに簡単に応じてくれそうな雰囲気はある。



「フォルモル――さん」
「フォルモルでいいわ」



「フォルモルの印はどこにあるんですか?」
 まずは、それを聞いておかなければならない。



「それは秘密よ」
 と、フォルモルはみずからの唇に人さし指を押し当てて、ウィンクしてみせた。あざとい仕草だが、それが様になっている。



「あんまり人に言えない場所にある――ってことですか?」



「とってもエッチな場所にあるの。だから言えないわ」



 わざとやっているのか、本気でやっているのか、フォルモルは顔を赤らめてうつむいた。



「……っ」
 絶句した。



 セイの〝英雄印〟は舌にあるのだ。
 そのエッチな場所とやらが、どこかはわからないが、ナめなくてはならないのだ。



「フォルモルは、オレのチカラのこと、レフィール伯爵からどの程度聞き及んでいるんですか?」



 問いかけた。
 フォルモルは木箱から腰をおろした。セイのとなりに腰かけてきた。フトモモが当たっている。大きな乳房が当たっている。



 紅茶よりも甘い香りが吹きつけてきた。



「〝英雄印〟は他人と印を重ねることで、その相手の魔法を学習できる。そう聞いているわよ」



「だったら話は早いんですが――」
「なぁに?」



 察して欲しかったのだが、フォルモルは最後までセイに言わせる気のようだ。



「オレの印と重ねて欲しいんです」
 そう切り出そうとした。
 しかし、邪魔が入った。



「失礼します。フォルモルさま。ケガ人が」
 とメイドが入ってきたのだ。



「わかったわ」
 と、フォルモルは立ち上がった。

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