女神と天才の異世界冒険譚

たぬきち

攫われたアリス



「っ痛いな。やっぱり」

 流石に多勢に無勢すぎる上に、全員容赦なく攻めてきたおかげで左腕が折れている。それに右目が見えないし、鼻も折れてる。

 サルビアの魔力も切れたらしく、回復は明日と言われてしまった。おかげでほとんどの生徒はベッドから動けないでいる。

 俺も本当はそうしたいところだが、アリスのことが少し気になり、こうして部屋まで来たわけだ。

「……アリス、入るぞ」

 何度かノックをしたものの返事がない。仕方なく俺が部屋に入ると、そこには殺風景な部屋が広がっている。意外だ。

 アリスのことだしもっと漫画とかゲームとか置いてると思ったが、いや、そうか。あいつには絶対空間があったな。そっちに置いてるのか。

「ん?」

 床に一枚の手紙が落ちている。

「えーと……字汚いなあ」

 真人へ。そう書かれていた為に開いてみたが……。

『んょみのみぜがすがすがんいきょうこのごろ、いみがりすごんでんょうみ。

 さて、このせみいにきてすうみげつのときがあさちまんあさ。

 わんはりぬんがその、あれじゃ、あれなのじゃが、そういっあさことがりきないのはどういうことでんょうみ?

 そういうわけでわあさんのほうでりこさせていあさだきまんあさ。んていするばんょにまなとだけできてください。

 わあさんはまぞくの、りーぐれあさにつれさられてんまっあさのです。はやくあさすけにきてください。まっています。ばんょはさるびあにきいてください。

 PS 私は鏡となり、師範となる。そして朝方になり、終わりとなる。……これは関係ないのじゃがどうして手紙を書くときは言葉使いが変わってしまうのかの?』



「……この暇人め。いや、暇神め」

 今日一日、こんなものを書いていたのかと思うとちょっとあれだが、これも俺を楽しませようと考えたものなのだろう。

「問題は……場所が書いていないということだな」

 この手紙の解読の鍵となるのはPSの言葉だ。最後の一文はいらないが。

 これをひらがなに直すとこうなる。

 わたしはかがみとなり、しはんとなる。そしてあさがたになりおわりとなる。

 この私とはアリスのことではない。なぜなら、アリスが鏡となって師範となって朝方になったら終わる。こんなの意味がわからない。
 
 なので、この私とは手紙を指す。

 つまり、この手紙はかがみとなっていて、しはんとなっている。そしてあさがたになって、おわりとなる。

 最後にわかりやすく、読点を入れてやると、

 かが、みとなっていて、しは、んとなっている。そして、あさが、たとなり、おわ、りとなる。

 こういうことだ。これに従い、手紙の文を入れ替えると、

『しょかのかぜがすがすがしいきょうこのごろ、いかがおすごしでしょうか。

 さて、このせかいにきてすうかげつのときがたちました。

 わしはおぬしがその、あれじゃ、あれなのじゃが、そういったことがおきないのはどういうことでしょうか?

 そういうわけでわたしのほうでおこさせていただきました。していするばしょにまなとだけできてください。

 わたしはまぞくの、おーぐれたにつれさられてしまったのです。はやくたすけにきてください。まっています。ばしょはさるびあにきいてください。』

 と、なる。

 読みづらいので漢字に変換すると、

『初夏の風が清清しい今日この頃いかがお過ごしでしょうか。

 さて、この世界に来て数ヶ月の時が経ちました。

 ワシはお主がその、アレじゃ、アレなのじゃが、そういったことが起きないのはどういうことでしょうか?

 そういう訳で私の方で起こさせて頂きました。指定する場所に真人だけで来て下さい。

 私は魔族の、オーグレタに連れ去られてしまったのです。早く助けに来てください。待っています。場所はサルビアに聞いてください。』

 と、なる。

 どこに行けばいいか書いてないが、まあ、とりあえずサルビアに聞いてみよう。手紙にもそうかいてあるしな。

 俺は面倒だと思いながらも、サルビアの部屋へと向かった。

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