女神と天才の異世界冒険譚

たぬきち

ともだちひゃくにん⑤

「にしても、凄いな」

 シャワールームはそれなりに広く、快適だった。だがやはり、地球とは違う部分もある。

 シャワーがただ天井に穴が複数開いており、そこから適温の温水が流れてくるだけだったり、浴槽がない。

 何だかちょっと寂しい。


「ふぅ……今度はちゃんとした風呂に入りたいな」

 やっぱり日本人だし。

 体を拭き、新しい服に着がえる。ラーメン屋で貰ったダサいTシャツ(表には店名、裏には一振入魂と書かれている)に黒のズボン。

 ……それしか替えの服がないのだ。下着や靴下なんかは買ったが、後はエプロンしかない。

「今度服買いに行かないとな……」

 シャワールームから出て、自分の部屋へと戻る。

「……だから…………のじゃ」

 何か部屋から聞こえてくる。

 アリスの声と口調だが、閉まったドアから聞こえるぐらい声が大きい。怒鳴っているのか?

「とにかくやるしかないのじゃ! 出来なかったじゃ済まないのじゃ!」

 どこのコーチだよ。部屋に入ると、アリスは俺のベッドに横たわり、どこからか持ってきたスマホで電話している。

「あ、真人が戻ってきたから切るぞ」

 アリスはそう言って電話を切ると、俺の側に来てクンクンと匂いを嗅いでくる。

 男女逆だったらセクハラだぞ。

「まあ、合格じゃな。後は服装が……」

 アリスが固まる。

 何だよ。龍勝炎に文句あるのか。ラーメンもチャーハンも美味いんだぞ。

 ……餃子は俺が焼いたの以外はアレだけどな。

「まあええじゃろ。ドレスコードは特になかったはずじゃ」

「いったい何を言ってるんだよ?」

「金はあるか?」

「あるけど」

 スーツの上着の内ポケットから革袋を取り出す。

「じゃあ、一緒に行くのじゃ!」

「どこにだよ?」

「カジノじゃ!」

 アリスはそういって俺の手を引き、部屋の外へと向かった。

「次こそ……次こそ勝つのじゃ!」

 何か嫌な言葉が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

 何故ならアリスには金は持たせていないはずだ。ていうか、カジノまであるのかよ……あ、D棟か。

 そんなことを考えながら、俺の体はズルズルとカジノへと引きずられて行った。

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