女神と天才の異世界冒険譚
ともだちひゃくにん①
「それであなた方は何者なんですか?」
あれから一通り資格試験を行い、それぞれの武器の座学、実技の授業を終えた放課後、俺達はサルビアに指導室と書かれた部屋に呼び出されていた。
「何者……と言われても……」
困る。別に特別な生まれでも、異世界から来たことを除けば特別な事情もない。
「サルビア先生こそ、確かに首の骨が折れてましたよね?」
こういう時は質問で返すに限る。
「冒険者たるもの、不意打ちや闇討ちには備えるものです。オートヒールという自動で回復する魔術の効果です。さて、私は答えました。あなた方にも答えて貰います」
有無を言わせぬ、その迫力は流石だ。だが、
「え? サルビアさんって冒険者なんですか? 冒険してないじゃないですか」
「元ですよ、元。今はこうして武術資格の講師をしていますって、話をそらさないで下さいよ」
「講師になるのに必要な条件ってあるんですか?」
とにかく相手の話に乗らない。それさえ続ければ……
「……どうやらまともに話をする気はないようですね。退学の手続きに移ります。理由はわかりますよね?」
首を撫でながらサルビアがこちらを見る。
「……わかりました」
しょうがない。まあ、隠すことでも無いだろう。
一応、アリスをちらりと見ると軽く頷いてくれた。
「実は自分はこの世界の人間ではないんですよ」
「……それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味です。僕の世界では武術と言えば武器を使わない、格闘技が主流です。だから、格闘においてはこの世界より進んでいます」
実際、格闘においてはサルビアも素人同然だった。
とにかく力任せに打撃を行うだけ。腰の使い方や手の戻し方、全くなっていない。足の使い方や間合いの取り方はそれなりだが。
「だから初日で私に勝てたと? アリスさんも同じですか?」
「うむ」
違うだろ。でも、まあ女神なんて言い出したら更に混乱しそうだからやめておこう。
「それは……証明出来ますか?」
「する必要がありますか?」
首を軽く叩いてみる。
一応資格持ちであるサルビアを、殺してしまいかけた事が、完全とは言えないが一応の証明になるだろう。
「……わかりました。で、あればどうでしょう? 格闘の講師になりませんか?」
「……それはサルビア先生だけで、決めていい話なんですか?」
予想していなかった訳では無い。力を見せれば、それを求められるのは元の世界と同じだ。
だが、一講師のサルビアにそこまでの権限があるのか疑問だった。
「ええ。この武術学園は私が経営してますから」
……あー、そういうことか。簡単に入学の手続きが出来たり、おかしいと思ったんだよなぁ。でもそれなら……。
「であれば格闘だけで無く、追加して貰いたい科目があるのですが……」
「え?」
科目の種類を見てからずっと疑問に思っていた。こういった異世界系の作品では必ずと言っていい程出て来る武器が無いことを。
「刀と言う武器なんですが……」
「カタナ、ですか? ……ちょっと聞いたことが無い……いや、確か更に東の島国で使われていたような……。それも、他の世界という所の武器ですか?」
「そうです。一部の人間の間では最強との呼び声が高い、片側にしか刃が付いていない剣の事です。僕の国では一般的に、この武器を使用した技術を剣術と呼称しています」
まあ、一般的には最強は銃だろうけど。
とりあえずこの世界には銃は無いみたいだし、そっちは教えるわけにはいかない。
不意打ちという点では銃は、本当に厄介だから。
「……それはその、見たことがない武器である以上、少し考える必要がありますね。………わかりました。あなた方が全資格を取得するまでに考えておきます。講師についての返事もその時にお願いします」
そう言って、サルビアは席を立つ。
そして、ドアを開けて俺達が出るのを待ってくれている。ご苦労。なんつって。
「カタナの講師もマナトくんに頼んでいいんですよね?」
「もちろんで「ワシがやるのじゃ!」
それまで黙っていたアリスが横から口を挟む。それが意外だったのか、俺だけじゃ無く、サルビアも驚いている。
だが、
「アリス……お前は日本人じゃないだろ。刀は日本人にしか使えないんだよ」
アリスは髪色から銀だし、目も水色だ。どう考えても日本人ではない。
……まあ、日本人にしか使えないのは嘘だが。そもそも日本刀以外の刀もあるし。
「嘘つけ! ワシなら刀を持ってるし、すぐにでも教えられるのじゃ!」
「俺だって持ってるわ! 刀どころか武士の心すらも!」
刀の所持に実は年齢制限はない。何歳だろうが美術品としての所持なら問題は無いのだ。
……まあ、俺はちょっと特殊だけど。
「見るのじゃ! これが最も美しいと言われた刀、#三日月宗近__みかづきそうこん__#じゃ!」
「待てえええええ! お前、それ、お前……」
アリスが一瞬の内に手にしている刀、おそらく#絶対空間__ひきこもりのかくれんぼ__#で持ってきたのだろうが、あれは……あれは……国宝だ。
何をやってるんだこの女神は。
「な、何です、そ、それは……」
サルビアが目を見開き、アリスの手にある刀を見る。
これまでで一番、表情を崩している。
抑えられていたドアがバタンと音を立て、閉まる。そして、よろよろと近づくサルビアを俺は慌てて止める。
「ちょっと待ってください! あれは、俺がいた国の宝です! 本来、触ることすら許されない物です!」
何で国宝を持ってるんだよ。この女神は。
「ワシは地球を管理する女神じゃぞ! どんな厳重な警備だろうとちょちょいのちょいじゃ!」
俺の心を読んだようにアリスが答える。
なるほど。……こいつ盗みやがった。
そう言えば、俺のコントローラ―もどこからか持ってきていた。地球にある物なら取り出せるということなのか?
それにしても……アリスは自分が持っていると言っていた。つまりアリスの中では地球の物はワシの物なんだろう。
何というガキ大将。
「お前……騒ぎに……」
ならないか。地球は時が止まっているはずだ。それまでに戻せば問題は無いはずだ。
傷や汚れ一つ、つけるわけにはいかないが。
「なるほど……これがカタナですか……」
サルビアが感服した様子で呟く。
「薄く……そして、美しい。……これが、カタナ」
この刀を一般的な刀と思われては困る。美しさという点では一番の刀だ。
「どうじゃ? お主が持っている刀はこれ以上のものなのか?」
アリスがここぞとばかりに煽ってくる。
それ以上となると他の天下五剣を持ってくるしか無い。
だが、それらはすでにアリスが確保しているだろう。ぐぬぬ。
それにしても……。
「わかった。刀はアリスが教えてくれ。……だから、一回振らせてくれ! と言うかどうせなら鞘も……」
「しょうがないのう! 一回だけじゃぞ!」
実はずっと振りたくて、手にしたくてしょうがなかった。ああ、楽しみだ。ワクワクが抑えきれない。
アリスが鞘もどこからか取り出すと、納刀し、俺に手渡す。
「……飛天御劔流……」
俺は腰を低くし、最速、最強の抜刀術を使用する。
「天正流線!」
抜刀された刀が空気を切り裂き、真空の道を作る。人を吸い込む程のものは流石に生み出せないが、少し引かれたようで二人がふらつく。
二撃目はキャンセルした。殺してしまう。
「……これが……別の世界の剣術……」
サルビアかボソリと呟く。ポーカーフェイスは崩れ去り、動揺が見て取れる。
「お、お主、飛天御劔流が使えるのか!? まさか苦闘流線も……」
アリスもあわあわしているが、男は中学で必然的に覚えるのだ。ある漫画のお陰で。
「さてと……」
俺はリングを付けている中指を三日月宗近に当てる。リングは一瞬だけ光った後、消えた。
「登録完了っと」
「な、な、何をしとるんじゃ!?」
アリスが焦ったように俺から刀を奪う。そして、俺を睨むと口を開く。
「勝手に登録するんじゃないのじゃ!」
「アリスも登録すればいいじゃん」
「む? ワシも登録できるのか?」
アリスはサルビアの方を見て尋ねる。
「あ、はい。それは可能ですが、そのカタナは非殺傷武器となっているので、今後、普通の武器として使う場合、別のリングに登録し直さなければなりません」
「なるほど……わかったのじゃ!」
そう言ってアリスは三日月宗近を登録する。そして、それが終わったのを見計らい、サルビアが口を開く。
「私も……登録していいですか? お金なら金貨三枚までなら払いますので……」
それ俺達から取った分じゃねーか。
まあ、戻ってくるなら歓迎だが。
「別に金なんていらんのじゃよ! 減るものじゃ無いみたいじゃしな!」
そう言って、アリスはサルビアに刀を渡す。
馬鹿野郎。相対的に見て、貰える金がなくなってるんだから減ってるだろうが。
だが、アリスの刀だし文句は言えないか。それに金のあてなら無いことはない。
「アリスさん……さっきあなたが女神だなんて言い出した時は、こいつ狂ったか? と思いましたが、どうやら本当に女神のようですね」
「当たり前なのじゃ!」
サルビアが感動に震えながら呟く。
そう言えばさっき言ってたな。……それにしても内心ではそんなこと考えてたのか。
まあ、気持ちはわかるが。
「では、カタナはアリスさん。格闘はマナトくんでよろしいですね? カタナは新科目として申請するので二日ほど時間がかかりますが」
「はい」「うむ!」
カタナも俺が教えたかったが、考えようによってはよかったな。
これでカタナの資格を取ると言う名目でアリスと戦える。
楽しみだ。
「あ、校舎の二階から上は食堂や風呂、個人の部屋があるのでよろしければお使い下さい。もちろん、こ、こんな所で寝られるか! と言う方は町の宿屋かどこかに泊まって貰って構いません」
ふむ。二階より上はそうなってるのか。まあ、学費が学費だし、それ位の施設はあるか。
……俺は突っ込まないぞ。
「ただし、朝七時には教室に集まって頂きます。明日はそこで格闘の講師の変更を他の生徒に連絡します。カタナは新科目として認められてからですね。その際、取得するかどうかも尋ねます」
そこまで言ってサルビアは、ドアを開け、俺達を待つ。
……しかし、肝心な事を俺はまだ聞いていない。
「講師をするのはいいですけど、金は貰えるんですよね? タダ働きは嫌ですよ?」
「もちろんです。ただし、一つの科目のみなので安くはなりますが……まあ、月に金貨一枚というところですね」
「わかりました」
月二十万か。悪くはないが、武器を買ったりすることを考えると、金を稼がないとな。
「では、明日またよろしくお願いします」「よろしく頼むのじゃ!」
そう言って俺達は部屋を出る。そして、そのまま二階へと向かった。
あの資格試験の後、とても気まずい感じになった為、クラスメイトと全く交流出来ていない。明日から格闘を教えることに加え、金稼ぎの為にも仲良くならなければ。
とりあえず食堂へ向かおう。
全員はいないかも知れないが、数人はいるだろう。
ともだちひゃくにんできるかなプロジェクトの始まりだ。
あれから一通り資格試験を行い、それぞれの武器の座学、実技の授業を終えた放課後、俺達はサルビアに指導室と書かれた部屋に呼び出されていた。
「何者……と言われても……」
困る。別に特別な生まれでも、異世界から来たことを除けば特別な事情もない。
「サルビア先生こそ、確かに首の骨が折れてましたよね?」
こういう時は質問で返すに限る。
「冒険者たるもの、不意打ちや闇討ちには備えるものです。オートヒールという自動で回復する魔術の効果です。さて、私は答えました。あなた方にも答えて貰います」
有無を言わせぬ、その迫力は流石だ。だが、
「え? サルビアさんって冒険者なんですか? 冒険してないじゃないですか」
「元ですよ、元。今はこうして武術資格の講師をしていますって、話をそらさないで下さいよ」
「講師になるのに必要な条件ってあるんですか?」
とにかく相手の話に乗らない。それさえ続ければ……
「……どうやらまともに話をする気はないようですね。退学の手続きに移ります。理由はわかりますよね?」
首を撫でながらサルビアがこちらを見る。
「……わかりました」
しょうがない。まあ、隠すことでも無いだろう。
一応、アリスをちらりと見ると軽く頷いてくれた。
「実は自分はこの世界の人間ではないんですよ」
「……それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味です。僕の世界では武術と言えば武器を使わない、格闘技が主流です。だから、格闘においてはこの世界より進んでいます」
実際、格闘においてはサルビアも素人同然だった。
とにかく力任せに打撃を行うだけ。腰の使い方や手の戻し方、全くなっていない。足の使い方や間合いの取り方はそれなりだが。
「だから初日で私に勝てたと? アリスさんも同じですか?」
「うむ」
違うだろ。でも、まあ女神なんて言い出したら更に混乱しそうだからやめておこう。
「それは……証明出来ますか?」
「する必要がありますか?」
首を軽く叩いてみる。
一応資格持ちであるサルビアを、殺してしまいかけた事が、完全とは言えないが一応の証明になるだろう。
「……わかりました。で、あればどうでしょう? 格闘の講師になりませんか?」
「……それはサルビア先生だけで、決めていい話なんですか?」
予想していなかった訳では無い。力を見せれば、それを求められるのは元の世界と同じだ。
だが、一講師のサルビアにそこまでの権限があるのか疑問だった。
「ええ。この武術学園は私が経営してますから」
……あー、そういうことか。簡単に入学の手続きが出来たり、おかしいと思ったんだよなぁ。でもそれなら……。
「であれば格闘だけで無く、追加して貰いたい科目があるのですが……」
「え?」
科目の種類を見てからずっと疑問に思っていた。こういった異世界系の作品では必ずと言っていい程出て来る武器が無いことを。
「刀と言う武器なんですが……」
「カタナ、ですか? ……ちょっと聞いたことが無い……いや、確か更に東の島国で使われていたような……。それも、他の世界という所の武器ですか?」
「そうです。一部の人間の間では最強との呼び声が高い、片側にしか刃が付いていない剣の事です。僕の国では一般的に、この武器を使用した技術を剣術と呼称しています」
まあ、一般的には最強は銃だろうけど。
とりあえずこの世界には銃は無いみたいだし、そっちは教えるわけにはいかない。
不意打ちという点では銃は、本当に厄介だから。
「……それはその、見たことがない武器である以上、少し考える必要がありますね。………わかりました。あなた方が全資格を取得するまでに考えておきます。講師についての返事もその時にお願いします」
そう言って、サルビアは席を立つ。
そして、ドアを開けて俺達が出るのを待ってくれている。ご苦労。なんつって。
「カタナの講師もマナトくんに頼んでいいんですよね?」
「もちろんで「ワシがやるのじゃ!」
それまで黙っていたアリスが横から口を挟む。それが意外だったのか、俺だけじゃ無く、サルビアも驚いている。
だが、
「アリス……お前は日本人じゃないだろ。刀は日本人にしか使えないんだよ」
アリスは髪色から銀だし、目も水色だ。どう考えても日本人ではない。
……まあ、日本人にしか使えないのは嘘だが。そもそも日本刀以外の刀もあるし。
「嘘つけ! ワシなら刀を持ってるし、すぐにでも教えられるのじゃ!」
「俺だって持ってるわ! 刀どころか武士の心すらも!」
刀の所持に実は年齢制限はない。何歳だろうが美術品としての所持なら問題は無いのだ。
……まあ、俺はちょっと特殊だけど。
「見るのじゃ! これが最も美しいと言われた刀、#三日月宗近__みかづきそうこん__#じゃ!」
「待てえええええ! お前、それ、お前……」
アリスが一瞬の内に手にしている刀、おそらく#絶対空間__ひきこもりのかくれんぼ__#で持ってきたのだろうが、あれは……あれは……国宝だ。
何をやってるんだこの女神は。
「な、何です、そ、それは……」
サルビアが目を見開き、アリスの手にある刀を見る。
これまでで一番、表情を崩している。
抑えられていたドアがバタンと音を立て、閉まる。そして、よろよろと近づくサルビアを俺は慌てて止める。
「ちょっと待ってください! あれは、俺がいた国の宝です! 本来、触ることすら許されない物です!」
何で国宝を持ってるんだよ。この女神は。
「ワシは地球を管理する女神じゃぞ! どんな厳重な警備だろうとちょちょいのちょいじゃ!」
俺の心を読んだようにアリスが答える。
なるほど。……こいつ盗みやがった。
そう言えば、俺のコントローラ―もどこからか持ってきていた。地球にある物なら取り出せるということなのか?
それにしても……アリスは自分が持っていると言っていた。つまりアリスの中では地球の物はワシの物なんだろう。
何というガキ大将。
「お前……騒ぎに……」
ならないか。地球は時が止まっているはずだ。それまでに戻せば問題は無いはずだ。
傷や汚れ一つ、つけるわけにはいかないが。
「なるほど……これがカタナですか……」
サルビアが感服した様子で呟く。
「薄く……そして、美しい。……これが、カタナ」
この刀を一般的な刀と思われては困る。美しさという点では一番の刀だ。
「どうじゃ? お主が持っている刀はこれ以上のものなのか?」
アリスがここぞとばかりに煽ってくる。
それ以上となると他の天下五剣を持ってくるしか無い。
だが、それらはすでにアリスが確保しているだろう。ぐぬぬ。
それにしても……。
「わかった。刀はアリスが教えてくれ。……だから、一回振らせてくれ! と言うかどうせなら鞘も……」
「しょうがないのう! 一回だけじゃぞ!」
実はずっと振りたくて、手にしたくてしょうがなかった。ああ、楽しみだ。ワクワクが抑えきれない。
アリスが鞘もどこからか取り出すと、納刀し、俺に手渡す。
「……飛天御劔流……」
俺は腰を低くし、最速、最強の抜刀術を使用する。
「天正流線!」
抜刀された刀が空気を切り裂き、真空の道を作る。人を吸い込む程のものは流石に生み出せないが、少し引かれたようで二人がふらつく。
二撃目はキャンセルした。殺してしまう。
「……これが……別の世界の剣術……」
サルビアかボソリと呟く。ポーカーフェイスは崩れ去り、動揺が見て取れる。
「お、お主、飛天御劔流が使えるのか!? まさか苦闘流線も……」
アリスもあわあわしているが、男は中学で必然的に覚えるのだ。ある漫画のお陰で。
「さてと……」
俺はリングを付けている中指を三日月宗近に当てる。リングは一瞬だけ光った後、消えた。
「登録完了っと」
「な、な、何をしとるんじゃ!?」
アリスが焦ったように俺から刀を奪う。そして、俺を睨むと口を開く。
「勝手に登録するんじゃないのじゃ!」
「アリスも登録すればいいじゃん」
「む? ワシも登録できるのか?」
アリスはサルビアの方を見て尋ねる。
「あ、はい。それは可能ですが、そのカタナは非殺傷武器となっているので、今後、普通の武器として使う場合、別のリングに登録し直さなければなりません」
「なるほど……わかったのじゃ!」
そう言ってアリスは三日月宗近を登録する。そして、それが終わったのを見計らい、サルビアが口を開く。
「私も……登録していいですか? お金なら金貨三枚までなら払いますので……」
それ俺達から取った分じゃねーか。
まあ、戻ってくるなら歓迎だが。
「別に金なんていらんのじゃよ! 減るものじゃ無いみたいじゃしな!」
そう言って、アリスはサルビアに刀を渡す。
馬鹿野郎。相対的に見て、貰える金がなくなってるんだから減ってるだろうが。
だが、アリスの刀だし文句は言えないか。それに金のあてなら無いことはない。
「アリスさん……さっきあなたが女神だなんて言い出した時は、こいつ狂ったか? と思いましたが、どうやら本当に女神のようですね」
「当たり前なのじゃ!」
サルビアが感動に震えながら呟く。
そう言えばさっき言ってたな。……それにしても内心ではそんなこと考えてたのか。
まあ、気持ちはわかるが。
「では、カタナはアリスさん。格闘はマナトくんでよろしいですね? カタナは新科目として申請するので二日ほど時間がかかりますが」
「はい」「うむ!」
カタナも俺が教えたかったが、考えようによってはよかったな。
これでカタナの資格を取ると言う名目でアリスと戦える。
楽しみだ。
「あ、校舎の二階から上は食堂や風呂、個人の部屋があるのでよろしければお使い下さい。もちろん、こ、こんな所で寝られるか! と言う方は町の宿屋かどこかに泊まって貰って構いません」
ふむ。二階より上はそうなってるのか。まあ、学費が学費だし、それ位の施設はあるか。
……俺は突っ込まないぞ。
「ただし、朝七時には教室に集まって頂きます。明日はそこで格闘の講師の変更を他の生徒に連絡します。カタナは新科目として認められてからですね。その際、取得するかどうかも尋ねます」
そこまで言ってサルビアは、ドアを開け、俺達を待つ。
……しかし、肝心な事を俺はまだ聞いていない。
「講師をするのはいいですけど、金は貰えるんですよね? タダ働きは嫌ですよ?」
「もちろんです。ただし、一つの科目のみなので安くはなりますが……まあ、月に金貨一枚というところですね」
「わかりました」
月二十万か。悪くはないが、武器を買ったりすることを考えると、金を稼がないとな。
「では、明日またよろしくお願いします」「よろしく頼むのじゃ!」
そう言って俺達は部屋を出る。そして、そのまま二階へと向かった。
あの資格試験の後、とても気まずい感じになった為、クラスメイトと全く交流出来ていない。明日から格闘を教えることに加え、金稼ぎの為にも仲良くならなければ。
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