異世界貴族は自由を望む
裏の仕事と知らないこと
外はもう、暗くなりつつあるころ。
レイとリアは、今日も放課後練習だった。これは二人だけでなく、トーナメントまで一週間を切っているため、どのペアも遅くまで練習している。
そのためレイが家に帰ったのは、もう日が落ちた後だった。
レイが私室に入ると、机の上に一枚の封筒が置かれていた。その封筒には、簡潔に「依頼」と書かれている。
レイが中身を出す。中には紙と、小さな四角い箱のようなものがあった。
それを見たレイは、地下へと向かった。
ここはレイの地下室。散らかっている。
レイはそこで服装を黒で統一した物に着替える。勿論オーダーメイドものだ。
そしてライフル擬きの細部チェックをしながら、ファルに話しかけた。
「今回...の...依頼...は...スパイ...の...始末。報酬...は...三百...金貨」
そう、さっきの封筒は、レイへの暗殺依頼だった。
レイは、大陸外に家を建てている。それには当然資金が必要になる。
レイの家は貴族。勿論お金持ちだ。しかし計画は秘密であるため、家を頼れない。
ならどう資金を調達するか。レイとファルが稼ぐしかない。
それがこの依頼だ。
勿論、犯罪などに手を染めていない。二人に依頼を出すのは、騎士団や治安維持隊、魔導師団などだ。
レイは狙撃での暗殺。ファルは潜入して汚職などの証拠集め。この二人は、依頼達成率百パーセント。依頼者からの信頼も厚い。
今回の依頼は、他国のスパイの暗殺。レイへの依頼だ。
そのスパイは一度捕まえたが逃げられたらしく、所謂尻拭いを任されたというわけだ。そのため、何時もより報酬はいい。
整備が終わったライフル擬きを特注のライフルバックに仕舞い、肩に掛け部屋に戻る。
そしてファルに指示を出す。
「今回...は...私...一人...で...充分...どう...にか...誤魔化...し...といて...ね」
「御意に」
その返事を聞いて、レイは満足そうに頷くと、窓を開け放つ。そして無属性魔法である跳躍を発動すると、屋根へと跳び移り、依頼の場所へと向かった。
今、リアは、夜の街を歩いていた。家の食料の備蓄が少なくなっていたため、買い出しに出たのだ。閉店ギリギリの店に滑り込み、満足いく買い物が出来たリアは、ほくほく顔で帰路についていた。
そんなリアが、ふと上を見上げた。魔力の動きを、僅かにだが感じたからだ。そこには、屋根の上を移動する影があった。
リアは、とても優秀だ。魔法学園の次席の名は、伊達ではない。
そんなリアが、ほんの僅かしか感知できなかった。それが、リアの興味を引いた。
リアも地上から、屋根の上の影を追いかけることにした。
レイは、今高台の屋根の上にいた。
ここは、街のほぼ中心にあり、全体を見渡すことができる。
そこでレイは手に封筒に入っていた箱を持っている。
これには、スパイの魔力波情報が入っている。魔力波は指紋のように、人によって違う。そしてこの箱は、その魔力波を記録することができる道具なのだ。
レイは、この街全体へ向けて、無属性魔法のサーチを発動する。この魔法で、記録された情報に一致する人物を探すのだ。
そしてレイの魔法に、一人の男が掛かる。
その男は、一キロほど離れた宿の二階の一部屋をとって潜んでいるようだ。脱出の機会でも伺っているのか。ただ休んでいるだけか。
どちらにしろ、レイには関係ない。レイに持ち込まれた依頼は、標的の暗殺。その結果さえ残せば、他をレイが気にする必要はない。
レイが、バックからライフル擬きと取り出す。
そしてその場で伏せ、ライフル擬きを構える。そのままの姿勢で、宿の部屋へと向かって遠視の魔法を発動する。
その時既に、レイの意識は全て標的へと向いていた。
リアは、少し離れた場所から、高台の屋根を遠視で見ていた。影がそこへ行くのを確認したからだ。
そしてそこには、リアが追っていた影の人物がいた。
全身黒で統一し、フードも付けているため、顔は確認できない。
そしてその影の人物がその場に伏せ、よく分からない物を構えたのを確認したリアは、自身もその影の人物の視線の先へと目を向ける。
そこに建物があることを、リアは確認した。しかしリアの位置からでは、それが何の建物なのかまでは分からない。
それが何かと思考する前に、その音は、リアの耳に、やけにはっきりと、聞こえた。
スゥ......
ハァ......
スゥ――
その直後、影の人物が持つ物体から、魔力波が放出される。その後、ブゥンと、風を切る音がリアの耳に届いた。
リアはその魔力波を知っていた。ここ最近、ずっと近くで浴びていたのだから。
その魔力の持ち主は......
(レイ...さん...?)
そう、リアパートナーの、レイのものだった。
リアには分からなかった。レイがどうしてあんなところにいたのか。リアには理解できなかった。レイが何をしていたのか。それを知るには、情報が少なすぎた。
そのあと、リアが帰路へとついたのは、三十分ほどたってからだった。
そしてとある宿の前に、人だかりが出来ているのに気がついた。
リアは、近くにいた宿の女将に話しかける。
「何かあったんですか?」
「あぁ、リアちゃん。なんかねえ、いきなり窓が割れてね、何かと思ったらお客さんが倒れてたのよ。でね、今治安維持隊の人たちが調べてくれてるのよ」
「そうなんですか......」
リアは、その後話を切り上げて、家へと帰った。
そしてベットに寝転がる。
考えるのは、さっきの事件。そして何故か高台の屋根の上にいたレイのこと。
そして、リアは思考の海へと沈んでいった。
(そういえば、レイさんが向いていた方向って、さっきの宿のほうだったよね......もしかして......いやでも......)
そうして彼女の夜は過ぎていく。彼女に疑問と不安感を残して。
レイとリアは、今日も放課後練習だった。これは二人だけでなく、トーナメントまで一週間を切っているため、どのペアも遅くまで練習している。
そのためレイが家に帰ったのは、もう日が落ちた後だった。
レイが私室に入ると、机の上に一枚の封筒が置かれていた。その封筒には、簡潔に「依頼」と書かれている。
レイが中身を出す。中には紙と、小さな四角い箱のようなものがあった。
それを見たレイは、地下へと向かった。
ここはレイの地下室。散らかっている。
レイはそこで服装を黒で統一した物に着替える。勿論オーダーメイドものだ。
そしてライフル擬きの細部チェックをしながら、ファルに話しかけた。
「今回...の...依頼...は...スパイ...の...始末。報酬...は...三百...金貨」
そう、さっきの封筒は、レイへの暗殺依頼だった。
レイは、大陸外に家を建てている。それには当然資金が必要になる。
レイの家は貴族。勿論お金持ちだ。しかし計画は秘密であるため、家を頼れない。
ならどう資金を調達するか。レイとファルが稼ぐしかない。
それがこの依頼だ。
勿論、犯罪などに手を染めていない。二人に依頼を出すのは、騎士団や治安維持隊、魔導師団などだ。
レイは狙撃での暗殺。ファルは潜入して汚職などの証拠集め。この二人は、依頼達成率百パーセント。依頼者からの信頼も厚い。
今回の依頼は、他国のスパイの暗殺。レイへの依頼だ。
そのスパイは一度捕まえたが逃げられたらしく、所謂尻拭いを任されたというわけだ。そのため、何時もより報酬はいい。
整備が終わったライフル擬きを特注のライフルバックに仕舞い、肩に掛け部屋に戻る。
そしてファルに指示を出す。
「今回...は...私...一人...で...充分...どう...にか...誤魔化...し...といて...ね」
「御意に」
その返事を聞いて、レイは満足そうに頷くと、窓を開け放つ。そして無属性魔法である跳躍を発動すると、屋根へと跳び移り、依頼の場所へと向かった。
今、リアは、夜の街を歩いていた。家の食料の備蓄が少なくなっていたため、買い出しに出たのだ。閉店ギリギリの店に滑り込み、満足いく買い物が出来たリアは、ほくほく顔で帰路についていた。
そんなリアが、ふと上を見上げた。魔力の動きを、僅かにだが感じたからだ。そこには、屋根の上を移動する影があった。
リアは、とても優秀だ。魔法学園の次席の名は、伊達ではない。
そんなリアが、ほんの僅かしか感知できなかった。それが、リアの興味を引いた。
リアも地上から、屋根の上の影を追いかけることにした。
レイは、今高台の屋根の上にいた。
ここは、街のほぼ中心にあり、全体を見渡すことができる。
そこでレイは手に封筒に入っていた箱を持っている。
これには、スパイの魔力波情報が入っている。魔力波は指紋のように、人によって違う。そしてこの箱は、その魔力波を記録することができる道具なのだ。
レイは、この街全体へ向けて、無属性魔法のサーチを発動する。この魔法で、記録された情報に一致する人物を探すのだ。
そしてレイの魔法に、一人の男が掛かる。
その男は、一キロほど離れた宿の二階の一部屋をとって潜んでいるようだ。脱出の機会でも伺っているのか。ただ休んでいるだけか。
どちらにしろ、レイには関係ない。レイに持ち込まれた依頼は、標的の暗殺。その結果さえ残せば、他をレイが気にする必要はない。
レイが、バックからライフル擬きと取り出す。
そしてその場で伏せ、ライフル擬きを構える。そのままの姿勢で、宿の部屋へと向かって遠視の魔法を発動する。
その時既に、レイの意識は全て標的へと向いていた。
リアは、少し離れた場所から、高台の屋根を遠視で見ていた。影がそこへ行くのを確認したからだ。
そしてそこには、リアが追っていた影の人物がいた。
全身黒で統一し、フードも付けているため、顔は確認できない。
そしてその影の人物がその場に伏せ、よく分からない物を構えたのを確認したリアは、自身もその影の人物の視線の先へと目を向ける。
そこに建物があることを、リアは確認した。しかしリアの位置からでは、それが何の建物なのかまでは分からない。
それが何かと思考する前に、その音は、リアの耳に、やけにはっきりと、聞こえた。
スゥ......
ハァ......
スゥ――
その直後、影の人物が持つ物体から、魔力波が放出される。その後、ブゥンと、風を切る音がリアの耳に届いた。
リアはその魔力波を知っていた。ここ最近、ずっと近くで浴びていたのだから。
その魔力の持ち主は......
(レイ...さん...?)
そう、リアパートナーの、レイのものだった。
リアには分からなかった。レイがどうしてあんなところにいたのか。リアには理解できなかった。レイが何をしていたのか。それを知るには、情報が少なすぎた。
そのあと、リアが帰路へとついたのは、三十分ほどたってからだった。
そしてとある宿の前に、人だかりが出来ているのに気がついた。
リアは、近くにいた宿の女将に話しかける。
「何かあったんですか?」
「あぁ、リアちゃん。なんかねえ、いきなり窓が割れてね、何かと思ったらお客さんが倒れてたのよ。でね、今治安維持隊の人たちが調べてくれてるのよ」
「そうなんですか......」
リアは、その後話を切り上げて、家へと帰った。
そしてベットに寝転がる。
考えるのは、さっきの事件。そして何故か高台の屋根の上にいたレイのこと。
そして、リアは思考の海へと沈んでいった。
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