異世界貴族は自由を望む
実力の一端
前に出たレイに様々な感情を含んだ視線が集まる。
レイは、学年主席だ。この学園において主席とは、かなり大きな言葉だ。騎士団や魔導師団からのスカウトが来たりと、一年の頃から世間に見られる立場となる。誰もが狙っていた主席という肩書きを持つ者には嫉妬、羨望など、様々な感情が贈られるのだ。本人からしたら迷惑でしかないが。
しかしそんな視線をものともせず、レイが杖を見る。そして少し顔をしかめ、口を開いた。
「...先生...、この...杖...では...私...の...マナ...に...耐えられ...ません。...どう...すれば...良い...でしょう...か?」
「...それは本気で言ってるのか? それとも主席ならなんでも言っていいと思っての発言か? お前なら言って良いことと悪いことぐらい分かると思っていたが?」
フォルテは信じていないことを隠そうともせずレイを睨み付けた。長年の魔法行使で壊れることはあっても、新品の支給されたばかりの杖を、マナを流しただけで壊すというレイの言葉を、信じられなかった。
「いいから、やれ」
故にフォルテは進めさせることにした。レイの言ったことを切り捨てて。
レイとて、自分の主張をばっさりと否定されては、流石に頭に来る。なので、悪戯とストレス発散を兼ねて、マナを思いっきり圧縮してやることにした。
レイが杖を向けてマナを異常な量圧縮して流す。その刹那、杖が破裂し、魔力の嵐が吹き荒れた。誰もが顔を手で覆う。中には尻餅をついた者もいた。
これは、普通感じることのない魔力風と呼ばれる、圧倒的な量のマナが一瞬で放出されたときに起こる現象だ。マナを圧縮という行為自体が高難度であり、これが出来れば魔法の威力を何倍にも上げることが出来る。ちなみにレイは意図的に多量のマナを圧縮して流したが、これを無意識に起こすことを魔力暴走という。
知識では知っていても実際に体験したことのない生徒は、この状況に呆然とし、ことを理解してから、レイに恐怖や畏怖の目を向ける。ほぼ全ての生徒が同じ反応をした。
しかしれレイはそれにも一切興味がないのか、振り返りながら未だ呆然としているフォルテに質問を投げ掛ける。
「...先生、...杖...が...無く...なった...の...ですが、...どう...すれば...良い...です...か?」
その質問に対する答えを、フォルテは持ち合わせて居なかった。まさか本当に壊れるとは思ってなかったからだ。しかし黙っている訳にもいかない。だからフォルテは、その場しのぎで答えた。更なる理不尽と面倒が待っているとも知らずに。
「あ、あぁ、今度杖を新しく持ってこさせるから、今日はもういい。お前たちも、この時間はお仕舞いだ。次の授業に遅れないよう教室に戻れ」
その言葉に生徒が帰ろうとする。しかしレイは、また今度など面倒くさいことをするつもりはなかった。
杖を持たず、魔法を放つ。放ったのは、水属性魔法の派生属性である氷属性の中級魔法、アイスバレット。それは視認出来るか出来ないかの速度で一直線に的へ向かった。
そして当たった途端、砂ぼこりが舞い、的を視認出来なくなる。
それに再び呆然としているフォルテに、少し微笑みながら、声を掛けた。
「これ...で...問題...ない...です...か...?」
「...あ、あぁ、もうそれで構わない...」
「...では、...失礼...します」
そういってレイが演習場を出ていく。一切喋らなかったファルも、後に続いた。
そして演習場には、動くことすらも忘れたフォルテと生徒、そして砂ぼこりが晴れ露になった、小さな傷の出来た的だけが残った。
結局次の授業は、レイ以外全員揃って遅刻。事情を知らない歴史の先生は、とても混乱したそうだ。
レイは、学年主席だ。この学園において主席とは、かなり大きな言葉だ。騎士団や魔導師団からのスカウトが来たりと、一年の頃から世間に見られる立場となる。誰もが狙っていた主席という肩書きを持つ者には嫉妬、羨望など、様々な感情が贈られるのだ。本人からしたら迷惑でしかないが。
しかしそんな視線をものともせず、レイが杖を見る。そして少し顔をしかめ、口を開いた。
「...先生...、この...杖...では...私...の...マナ...に...耐えられ...ません。...どう...すれば...良い...でしょう...か?」
「...それは本気で言ってるのか? それとも主席ならなんでも言っていいと思っての発言か? お前なら言って良いことと悪いことぐらい分かると思っていたが?」
フォルテは信じていないことを隠そうともせずレイを睨み付けた。長年の魔法行使で壊れることはあっても、新品の支給されたばかりの杖を、マナを流しただけで壊すというレイの言葉を、信じられなかった。
「いいから、やれ」
故にフォルテは進めさせることにした。レイの言ったことを切り捨てて。
レイとて、自分の主張をばっさりと否定されては、流石に頭に来る。なので、悪戯とストレス発散を兼ねて、マナを思いっきり圧縮してやることにした。
レイが杖を向けてマナを異常な量圧縮して流す。その刹那、杖が破裂し、魔力の嵐が吹き荒れた。誰もが顔を手で覆う。中には尻餅をついた者もいた。
これは、普通感じることのない魔力風と呼ばれる、圧倒的な量のマナが一瞬で放出されたときに起こる現象だ。マナを圧縮という行為自体が高難度であり、これが出来れば魔法の威力を何倍にも上げることが出来る。ちなみにレイは意図的に多量のマナを圧縮して流したが、これを無意識に起こすことを魔力暴走という。
知識では知っていても実際に体験したことのない生徒は、この状況に呆然とし、ことを理解してから、レイに恐怖や畏怖の目を向ける。ほぼ全ての生徒が同じ反応をした。
しかしれレイはそれにも一切興味がないのか、振り返りながら未だ呆然としているフォルテに質問を投げ掛ける。
「...先生、...杖...が...無く...なった...の...ですが、...どう...すれば...良い...です...か?」
その質問に対する答えを、フォルテは持ち合わせて居なかった。まさか本当に壊れるとは思ってなかったからだ。しかし黙っている訳にもいかない。だからフォルテは、その場しのぎで答えた。更なる理不尽と面倒が待っているとも知らずに。
「あ、あぁ、今度杖を新しく持ってこさせるから、今日はもういい。お前たちも、この時間はお仕舞いだ。次の授業に遅れないよう教室に戻れ」
その言葉に生徒が帰ろうとする。しかしレイは、また今度など面倒くさいことをするつもりはなかった。
杖を持たず、魔法を放つ。放ったのは、水属性魔法の派生属性である氷属性の中級魔法、アイスバレット。それは視認出来るか出来ないかの速度で一直線に的へ向かった。
そして当たった途端、砂ぼこりが舞い、的を視認出来なくなる。
それに再び呆然としているフォルテに、少し微笑みながら、声を掛けた。
「これ...で...問題...ない...です...か...?」
「...あ、あぁ、もうそれで構わない...」
「...では、...失礼...します」
そういってレイが演習場を出ていく。一切喋らなかったファルも、後に続いた。
そして演習場には、動くことすらも忘れたフォルテと生徒、そして砂ぼこりが晴れ露になった、小さな傷の出来た的だけが残った。
結局次の授業は、レイ以外全員揃って遅刻。事情を知らない歴史の先生は、とても混乱したそうだ。
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