竜の世界の旅人
名前・これから
颯斗が、奥から帰ってきた。
寝そべっていた竜が反応する。
『どうだった?』
「今までと全然違うから、慣れるまでが辛そう。時間が欲しいね」
『まあそうだろうね』
颯斗は竜の隣に座り込む。
「なあ」
『ん? 何か?』
「お前ってさ、名前あるの?」
『名前? ないよ。いきなりどうしたの?』
「いや、一度も呼んだことなかったなって思って。今は問題ないかもしれんが、後々面倒なことになってもいけないし、聞いておこうと思ったんだ」
『ふーん。あ、それならさ、君が名前を付けて!』
「え、俺が?」
『そうそう。こんな風に人と喋ったりするの初めてだし』
そういわれて颯斗は考える。この竜に名前を付けるとしたら何がいいのか。
(ピラトゥス山の竜......冬......雪......白い......)
「......ハク、なんてのはどうだ?」
『ハク......ハク......ハク......ハク』
竜が何度も名前を呟く。その顔はだんだんとにやけていく......ように見えた。
「おーい、ハクさんやーい」
颯斗が呼んでみても返事はない。どうやら一人の世界に入り込んでしまったようだ。
颯斗は諦めて、竜、もといハクが現実へ帰還するまで待つことにした。
『ねえ、冬明けまでここにいるとして、その後どうするの?』
ハクが現実に復帰して、一言目がそれだった。
「旅に出ようかと思ってる」
『旅に?』
その言葉に頷く颯斗。
颯斗としても、できれば帰りたいと思っている。そのためには、まず行動しなければならない。そのために竜人の力も手に入れたのだ。
『そういえば、なんであんなところにいたの? あそこは近くに人里もないし......』
「ああ、なんて言えばいいのかな......」
颯斗は、ハクに自身のことについて話した。
自分がいたところには、竜などの存在は架空の存在だったこと。そして、なぜ自分がこんな山奥にいたかわからないこと。落下したこと。颯斗がわかることは全て話した。
その話を聞いてハクが出した答えは、颯斗の仮説の一つだった。
『多分、次元転移者なんだろうね、君は』
「次元転移者?」
『そう。迷い人なんて呼ばれてたりもする。ふと現れて技術をもたらしては去っていった人や、この世界から出て行って戻ってこれた人のことで......』
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
颯斗はその中の一言に反応する。
「”去っていった”ってのは......」
『それについては、よくわからない。でも、死体が見つかったことはないらしいし、多分帰ったんじゃないかってのがよく言われてる』
颯斗は歓喜した。もしかしたら、帰れる希望があるかもしれない。それを知れただけでも、それは大きな心の支えとなった。
『あ、旅なら、私も連れて行ってよ!』
「え? 大丈夫なのか?」
『うん、別に大丈夫だよ。ここに住んでるってわけでもないし』
「そうなのか!? てっきり、ここに住み着いているのかとばかり」
『確かに、ここはかなり住み心地いいけど、こだわってるわけでもないしね』
その言葉に、颯斗は迷う。確かに、竜が味方にいる、というのは、かなりのメリットだ。それに、この世界の常識について、颯斗よりは知っているだろう。
しかし、である。
「お前の姿、どうするんだ?」
そう、ハクの姿である。かなり大きく、この世界だとは言え、無問題とはいかないだろう。
しかしハクはあっけからんとした口調でいった。
『大丈夫だよ? ほら』
直後、ハクを光が包む。それが収まるころには、その巨体の姿はどこにもなかった。そしてそこにいたのは、一人の美少女だった。
腰近くまで伸びた髪は、綺麗な銀色で、その瞳は翡翠色で、竜の姿の時と正反対に、柔らかさを感じる。身長はだいたい160センチくらいだろうか。そして何よりインパクトが強かったのが、その隠すことなく現れた、女である象徴だった。ふっくらとした確かなお山が、そこにそびえ立っていた。
「ちょ、ちょっと待て、隠せ! 今すぐ隠せ!」
そういって颯斗は奥から布を持ってくる。ハクには収集癖があるらしく、洞窟の奥にはいろいろ溜まっている。
そして颯斗がハクに布を掛けようとする。しかし失念していた。今の颯斗は以前の颯斗ではないのだ。
竜人の身体能力によって本人の意思より早く到達した颯斗は、制御に失敗して、そのまま突っ込む。そしてはたから見れば、颯斗がハクを押し倒した形になった。
「えっと、私、君なら......番になっても......」
ハクが頬を赤く染める。
「す、すすす済まない!」
そういって颯斗がその場から飛び上がる。結局二人が落ち着くまでたっぷり一時間以上かかった。
寝そべっていた竜が反応する。
『どうだった?』
「今までと全然違うから、慣れるまでが辛そう。時間が欲しいね」
『まあそうだろうね』
颯斗は竜の隣に座り込む。
「なあ」
『ん? 何か?』
「お前ってさ、名前あるの?」
『名前? ないよ。いきなりどうしたの?』
「いや、一度も呼んだことなかったなって思って。今は問題ないかもしれんが、後々面倒なことになってもいけないし、聞いておこうと思ったんだ」
『ふーん。あ、それならさ、君が名前を付けて!』
「え、俺が?」
『そうそう。こんな風に人と喋ったりするの初めてだし』
そういわれて颯斗は考える。この竜に名前を付けるとしたら何がいいのか。
(ピラトゥス山の竜......冬......雪......白い......)
「......ハク、なんてのはどうだ?」
『ハク......ハク......ハク......ハク』
竜が何度も名前を呟く。その顔はだんだんとにやけていく......ように見えた。
「おーい、ハクさんやーい」
颯斗が呼んでみても返事はない。どうやら一人の世界に入り込んでしまったようだ。
颯斗は諦めて、竜、もといハクが現実へ帰還するまで待つことにした。
『ねえ、冬明けまでここにいるとして、その後どうするの?』
ハクが現実に復帰して、一言目がそれだった。
「旅に出ようかと思ってる」
『旅に?』
その言葉に頷く颯斗。
颯斗としても、できれば帰りたいと思っている。そのためには、まず行動しなければならない。そのために竜人の力も手に入れたのだ。
『そういえば、なんであんなところにいたの? あそこは近くに人里もないし......』
「ああ、なんて言えばいいのかな......」
颯斗は、ハクに自身のことについて話した。
自分がいたところには、竜などの存在は架空の存在だったこと。そして、なぜ自分がこんな山奥にいたかわからないこと。落下したこと。颯斗がわかることは全て話した。
その話を聞いてハクが出した答えは、颯斗の仮説の一つだった。
『多分、次元転移者なんだろうね、君は』
「次元転移者?」
『そう。迷い人なんて呼ばれてたりもする。ふと現れて技術をもたらしては去っていった人や、この世界から出て行って戻ってこれた人のことで......』
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
颯斗はその中の一言に反応する。
「”去っていった”ってのは......」
『それについては、よくわからない。でも、死体が見つかったことはないらしいし、多分帰ったんじゃないかってのがよく言われてる』
颯斗は歓喜した。もしかしたら、帰れる希望があるかもしれない。それを知れただけでも、それは大きな心の支えとなった。
『あ、旅なら、私も連れて行ってよ!』
「え? 大丈夫なのか?」
『うん、別に大丈夫だよ。ここに住んでるってわけでもないし』
「そうなのか!? てっきり、ここに住み着いているのかとばかり」
『確かに、ここはかなり住み心地いいけど、こだわってるわけでもないしね』
その言葉に、颯斗は迷う。確かに、竜が味方にいる、というのは、かなりのメリットだ。それに、この世界の常識について、颯斗よりは知っているだろう。
しかし、である。
「お前の姿、どうするんだ?」
そう、ハクの姿である。かなり大きく、この世界だとは言え、無問題とはいかないだろう。
しかしハクはあっけからんとした口調でいった。
『大丈夫だよ? ほら』
直後、ハクを光が包む。それが収まるころには、その巨体の姿はどこにもなかった。そしてそこにいたのは、一人の美少女だった。
腰近くまで伸びた髪は、綺麗な銀色で、その瞳は翡翠色で、竜の姿の時と正反対に、柔らかさを感じる。身長はだいたい160センチくらいだろうか。そして何よりインパクトが強かったのが、その隠すことなく現れた、女である象徴だった。ふっくらとした確かなお山が、そこにそびえ立っていた。
「ちょ、ちょっと待て、隠せ! 今すぐ隠せ!」
そういって颯斗は奥から布を持ってくる。ハクには収集癖があるらしく、洞窟の奥にはいろいろ溜まっている。
そして颯斗がハクに布を掛けようとする。しかし失念していた。今の颯斗は以前の颯斗ではないのだ。
竜人の身体能力によって本人の意思より早く到達した颯斗は、制御に失敗して、そのまま突っ込む。そしてはたから見れば、颯斗がハクを押し倒した形になった。
「えっと、私、君なら......番になっても......」
ハクが頬を赤く染める。
「す、すすす済まない!」
そういって颯斗がその場から飛び上がる。結局二人が落ち着くまでたっぷり一時間以上かかった。
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