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第35章 ライバル

「アズが狙われてる?」

秘密裏に集められたアズを除く大貴族子供の会メンバーは、玉座に座る国王からの情報に首を傾げていた

「いかにも、ここ最近謎の集団が余の可愛い孫を観察している所を多くの衛兵が目撃している」
「まぁ大貴族になったアズが狙われるのはわかる・・・ります、というかいつから可愛い孫になったんですか?」

国王はムートンの前半の言葉にのみ首を縦に振る

「そこでお主らには怪しい者があずちゃんに近づかないように護衛してほしい」
「オーウ!それでアズ卿抜きでの会議だったのデスネ・・・前から申し上げようと思っていましたがあずちゃんはやめたほうがイイカト」

国王はマークの前半の言葉にのみ首を縦に振る

「それでは皆のもの、よろしく頼むぞ」

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同日夜、草木も眠る丑の刻

「だからってなんで僕達が直々に護衛を?」
「アズ卿はあれで中々敵が多い、国王陛下も何か思うところがあるのかもしれまセーン」

アズの部屋がよく見える位置にあるテラスにて
こそこそしながら二人の男が溜め息を吐く

「まぁまぁ、これでアズ卿をずっと見ている口実が出来たではないデスカ?」
「ななな何言ってんだよマークさん!そそそんな面倒な「オーウ!アズ卿が窓際に来たデース!」

ムートンは無言で双眼鏡をアズの部屋に向ける
マークはそんなムートンを見ながら口をニヤケさせる

「これは任務だから、国王陛下直々の任務だから」
「わかってマース!だから観察しながらミーを殴るのは辞めてくだサーイ!」

マークはムートンからの攻撃を避けながら再びアズの部屋を覗き込む

「・・・どうやら陛下の勘が悪い方に当たったようデース」
「?なんのこ」

ムートン目掛けて飛来してきた弾丸をマークが撃ち抜く

「うおぉう!?て・・・敵襲!?」

次々飛来してくる弾丸にムートンが怯む中
マークが淡々と弾丸を撃ち落としていく

「ムートンボーイ!戦闘態勢!援護は私に任せて下サーイ」

慌てて駆け出すムートンを見送ると
マークは飛来してきた弾丸を避け、ムートンの向かった方向にいる赤髪の男に射撃を放つ

しかしマークの炎弾は相手の狙撃手によって撃ち抜かれる

「今の目の動き・・・ミーの視線だけを頼りに射撃を・・・?」

遥か遠く、グラフ街の城壁でその通りだと言うように口を動かす狙撃手のおやじを見ながらマークは顔を引攣らせる

「まさかミーのホークアイと同レベルの人間がいるとは、世界は広いデース」

           ◇

そんな対決を目の端に、テラスから駆け下りたムートンは目の前の侵入者を睨む

「ヒャッハー!なんだぁ?俺の所はハズレかぁ?」

赤髪の男がツーハンドソードを振りかぶると、吹き飛ばされたムートンはゴロゴロと床を転がってそのまま動かなくなる

「おぃおぃ?手加減してやってるんだからもうちょっと楽しませろよ?」

地面に突っ伏したムートンに男が近寄る

「まぁいい、お前には特別に俺の名前を教えてやろう、俺こそ赤金の鷲のクラマス!ダ「メェェェェ!」

しかし男が名乗りをあげる瞬間、大きく開けた口に羊毛をぶち込まれる

「ふがぁ!?てめぇ!覚悟は出来たんだろうな!?」
「へん!時間稼ぎならお手のもんだ!」

そんなやり取りを見ながら、たまたまトイレに向かっていたグレイは柱の影に隠れる

「うわぁ・・・なんかすげぇ事になってる・・・さっさとログアウトしたほうが良さそうだ」

そう言いながら中空を操作するグレイに悪寒が走る
グレイはかつて無いほどのプレッシャーにたじろきながらも、背後を振り返る

「あぁ!まさかこんな所で出会えるとは!これも運命というものなのでしょうか!」

ドドドドという効果音と共に、周りの空間が歪んで見えるほどの欲望を発する茶髪のメガネ男が巨大な槍を構える

「ところでこいつを見てください、こいつをどう思う?」
「すごく・・・大きいです・・・」

グレイは悟る
こいつに関わってはいけない
初めて会ったはずなのになぜか尻に冷たい汗が流れるのだ

「さぁグレイさん!僕と勝負を!」
「貴方の相手はア♡タ♡シ♡」

大槍を振りかぶった男は、突如現れた全裸の変態にヘイトが固定されて大槍を虚空に突き出す
まるで至高の時間を邪魔されたかのように険しくなる男の顔を見てロウは察する

「あら?貴方・・・アタシと良い関係を作れそうじゃない?」
「残念だけど僕はグレイさん一筋なんでね」

         ◇

所変わってアズの部屋の前
アレンは遠くの戦闘音を聞きながら独り言を呟く

「どうやら始まったようだね」

すると、まるで独り言に答えるかのように
廊下の暗がりから仮面をかけた少年らしき人物が現れる

「悪いけどここは通すわけにはいかないよ」

先手必勝、アレンは相手が抜剣する前に鋭い剣戟を放つ
喉元を狙った1手目は避けられたが、抜き去ろうとした剣を弾き飛ばす事に成功する

「私と高貴な貴族様を一緒にすると痛い目に合うよ?」

ドヤ顔で仮面の急所に狙いを定める
敵の増援が来る前にカタをつけないといけない

トドメの一撃を放とうとするアレンの目の前で、相手の仮面が崩れ落ちる

「な!?」

アレンは仮面少年の素顔を見て目を見開く
見慣れた赤色の髪
アレンに瓜二つの少女は、動かなくなったアレンの隙をついて剣を拾い上げる

「君は・・・?」

この匂い・・・まさか・・・?
アレンは渋い顔をしながら少女に対峙する

至る所で火花が散る戦場

しかしそんな外の様子に全く気づかないアズは
ぬいぐるみを抱えてベッドでゴロゴロ転がっていた

「だー!せっかくステータスが上がったってのにそりゃないぜ!!」

そう、今回レベル60に上がった事で手に入れた破格のステータス
アズはその力を見せつけようと至る所で頑張った

しかし・・・

「筋力と俊敏が上がってもスタミナが無いから持続しない!知能とMPが上がっても魔法を覚えて無いから使えない!!」

ルト先生とロッテの授業で調子に乗ったアズは
物の見事にに二人に無能のレッテルを貼られる事になったのだ

「ちくせう・・・ちくせう!」

ぬいぐるみのジローを抱えながらぐるぐる回っていると
壁に激突する

「ぐう!?なんでこんな所に壁・・・が?」

背中の痛みに耐えながら後ろを見た俺の動きがピタリと止まる

「再び合間見えたな、選ばれし蒼き者よ」
「・・・リンターロ・・・じゃなかった太郎兄」

かつて大貴族になった時に屋上で出会った†エンド・シャドウ†事我が兄を睨む

「なんで俺の部屋にいんの」

太郎兄は何度か無駄なポーズをとると
椅子に座って話し出す

「前に言った事は覚えているな?」

なんだっけ?
なんか自分を騙せとか神を騙せとか言ってたっけ?
 
太郎兄は俺の答えも聞かずに再度ポーズを決める

「そう!神を騙す!その為に蒼き勇者とその指輪が必要なのだ!」

どうでも良いが俺の呼称をいい加減固定して欲しいな・・・
そして厨二患者の言ってる事はサッパリわからん

「アズよ、この世界はいずれ神によって滅ぶ事になる」

それと神を騙すってのがどう繋がるんだ?

更にポーズを変える太郎兄
よくそんなにポーズが思いつくもんだ

「我々の目標は世界を滅ぼす神をVR空間に閉じ込める事だ」

なんかとんでも無い事を言ってるが関わりたくないなぁ
俺の冷たい視線を受けながらも†エンド・シャドウ†は高らかに宣言する

「その為に蒼き大魔導士よ!来るべき世界創造の為、我がレジスタンスの住処に来るのだ!」
「断る、俺は静かに暮「名付けるならそう!新たなる世界を創造する・・・bio graph World・・・プロジェクトBGW!!」

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