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第23章 流れる月日

満月の光に照らされたグラフ城の屋上
俺は新たに人の形が刻印された指輪を月にかざす

「ヒューマ・アズか・・・」

俺は新たに命名された名前を口にして溜息を吐く

「大貴族・・・ねぇ・・・」

本来大貴族になるにはとてつもない資産やらなんやらが必要なのだが、そこはサンドワームの養殖とかで簡単にクリアする事が出来た・・・

しかし俺の問題は別にあった
クラウスの家に生まれた俺は正式な家名が存在する
ほんというと名前もアズじゃないんだけどさ・・・

だからと言って元々の家名を大貴族の象徴にするわけにはいかないらしく・・・
つまる所、俺は齢5歳で貴族の当主となってしまったのだ
でも今は、そんな事もどうでもいいんだ。 重要なことじゃない。

俺は改めて能力が開花した指輪を見る

チートスキル、ヒューマアーカイブ
いついかなる時でも、対象に対して人間が把握できる知識を検索できる・・・

つまりどこでもウィキペディア
しかしその能力には恐ろしデメリットが存在したのだ

「発動中は流れてくる情報を整理する為に行動不能になる事と」

こっちは大した問題じゃない
単純に俺のキャパシティが足りていないだけだ
問題は・・・

「手に入れる知識の量に比例した記憶が差し引かれる・・・か」

アレンとムーたん曰く俺は相当なシスコンだったらしい
地球で姉の対応に苦労してきた俺がシスコンに?
何かの冗談かと思ったが、アレンの尋常じゃない雰囲気はそれが事実である事を証明していた

そんな大事だった筈の妹・・・
現在では名前はおろか、ほんとにいたっけ?レベルの記憶しかない

俺は軽い震えと共に指輪をしまい込む
せっかくの強力なアイテムだが、記憶の欠落が条件のならあまり多用する事は出来ないな・・・

「もしかしたらとんでもない代物なのではないだろうか?」
「いかにも!それこそ我らが求めていた至高のアイテムだ!」

部屋に戻ろうと歩き出した俺は
暗がりからこちらを凝視している男の存在に気が付く

「誰だ・・・?」

俺の呟きに男は笑みを浮かべると、片手で顔を隠し指の隙間からこちらを見る・・・
厨二病特有のポーズをとりながら名乗りをあげる

「我は終焉!時空を渡り!世界の支配構造を塗り替える狂乱の貴公子!†エンドシャドウ†だ!」

・・・
俺は男の名乗りを聞き流すと、迷う事なくヒューマアーカイブを発動
目の前に現れた文字をそのまま読み上げる

「プレイヤー「 †エンド・シャドウ†」リアルネーム「全ての理の終焉!!」、滅びに向かう世界を救う為、己の存在を消滅させようとした「我が大いなる母!」の為、時空に干渉する能力を手に入れた「伝説の勇者にして最古の魔王!」うるせええええ!!!」

俺のセリフにいちいち言葉を被せてくる厨二患者に向かってカマイタチを射出する
しかし厨二患者が軽く手をかざすとカマイタチが霧散していく

「我が固有結界の中では全ての事象は無に帰す・・・」

カッコつけてる所悪いが
ヒューマアーカイブのおかげでただディスペルされただけだとわかるからな?

しかしとんでもないのが現れたな
途中茶々を入れられたせいでほとんど頭に入ってこなかったが
滅びの世界?時空に干渉する能力?

ヒューマアーカイブが壊れていない限り
超重要人物だという事は俺でもわかる

「それで・・・†エンド・・・俺に何かようか?」

厨二患者は鼻で笑うとポーズを決めながらこちらを見る

「どんな行動を起こしても結果が定められてしまい、そこから逃れることはできない・・・」

ん?なんかどっかで聞いた事あるような・・・?

「いいか!最初のお前を騙せ!神を騙せ!その先にシュタイあぁ!?」

高笑いをあげていた厨二病患者が間抜けな声と共に跡形もなく消え去る

結局・・・何しに来たんだよ・・・あの厨二病・・・

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真っ赤な空に黒い大地
全ての生命が絶滅したのではないかと錯覚する世界
俺は目の前の少女に向かって手を伸ばす

「私が全ての元凶じゃからの・・・」

少女が何かを呟くと同時に世界は歪む


「ちょ!待てよ!!」

跳ねるように起き上った俺は
軽い衝撃と共に頭に痛みを覚える
目の前にはさかさまになった見慣れた風景

「・・・さかさま?」

どうやらベッドで寝ていた俺は頭から落ちたらしい
痛みに顔を顰めながらも欠伸を一つ

「なんでルピーが夢に出て来たんだ?」

夢の中の風景を思い出しながら頭を捻る
もしかして俺はルピーの事を?
俺は困惑しながら目の前でメモを見せる少女を見る

[お腹が空きました]

・・・寝ても覚めても傍にいるから覚えてしまったのだろうか?
ルピーは深刻な顔をしている俺を心配したのだろうか
再びメモに何かを書くと俺に向ける

[ご飯]

分かったよチクショウ!
俺は軽く伸びをするとギム粉で作ったパンを軽く焼き、卵を乗せてルピーの前に置く

機嫌が悪いのは空腹の時だけのようで
ルピーはご飯さえ与えれば基本なんでもする、なんでもだ
正直この子の将来が心配でならない

自分の分のパンを銜えながらルピーの心配をしていると
部屋の外がドタドタと騒がしくなり
バン!という大きな音と共に茶髪の少年が入って来る

俺は慌ただしく部屋に入ってきた人物を半眼で睨む

「お食事時に騒がない!」

乱入者は息も絶え絶えに俺の前まで来ると胸倉をつかんでくる

「もう昼過ぎてる・・・じゃなくて今日は国王陛下から招集されてる日だろうが!」

声を荒げる茶髪の少年に向かって溜息を吐く
少し前までは俺と同じくらいの背丈だった癖に・・・

「おい?ここ最近頭一個分くらい俺より背が高くなったからって調子に乗るなよ?」
「出会ったばかり・・・三年前の話だろう!?」

茶髪の少年・・・ムートンが頭を抱える
地球でもそうだったが俺の身長の伸びは非常に緩やかだ
その身長と童顔のせいで実年齢よりかなーり若く見られる事が多々あった

しかし新しく生まれ変わったともいえる状況に少し希望を抱いていた俺は、次第にムートンとの間に生まれる身長の差に絶望しながら育つ事になってしまったのだ

これだから育ちざかりの男子は嫌いなのだ

「ああもう!いいからはやく行くぞ!」

そう言いながら俺の腕を掴むムートンの顔は
相当急いで来たのであろう真っ赤である

「でもまだご飯残ってるし」
「いいから!行くぞ!」

あっ・・・
ムートンに強く引っ張られた拍子にルピーのパンが地面に落ちるのを確認する

瞬間、どこから出したのか
ルピーの大太刀がムートンの首筋を捉える
据わった目でムートンを睨むルピーさんは珍しく長文が書かれたメモを見せつける

[モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず 自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ 独りで静かで豊かで・・・]

後は言わなくてもわかるな?というようなルピーの目にムートンが顔を真っ青にして何度も頷いている

可哀想に・・・
俺はルピーの怒りをおさめるべく追加の供物を捧げて急ぎムートンと部屋を飛び出す

「それで?国王は玉座かな?」

ムートンは出会った時のように額を押さえながらも説明をいれてくれる

「ああそうだよ!ちなみに他の4人・・・6大貴族の面々はとっくに集合済みだ!」

おっと、どうやら相当急がなくてはいけないようだ

「よしムートン、近道をする!俺についてこい!」

そう言いながら中庭に駆け出した俺は
大貴族になった褒美に貰った杖に跨る
玉座に辿り着くには長い階段をのぼらなくてはならない
そんな労力に飽き飽きした俺は舞空術を編み出したのだ

「おい!?まさか!?」

俺の思惑に気が付いたムートンが慌てだす

どうもこいつは高所恐怖症っぽい
俺が二人乗りを提案するといつも顔が真っ赤になる程首を横に振るうのだ
けれど・・・

「なんだ?怖いのか?」
「むっ・・・」

俺の挑発にムートンが渋々と杖に跨り俺の腰に手を回す

チョロいぜ!

「そうそう!人間素直が一番だぞ?ムーたん?」
「その呼び方はやめろ!!!!」

顔を真っ赤にして叫ぶムーたんを無視して俺は宙に浮かぶ
今日も新しい一日が始まる!

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