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第22章 ヒューマアーカイブ

俺の機転によりあっけなく終わったクラス対決
勝利の余韻に浸る程の熱気があったわけでも無く
演習場は淡々と修復作業が開始されている


「アズよ・・・余の目に狂いは無かったな」

模擬戦が終わり、国王陛下の前に平伏する5大貴族と胡散臭そうに国王を見つめる俺
いや?何この雰囲気?なんで皆石像のように微動だにしないの?
俺は隣の動かない石像に小声で話しかける

『なぁなぁムーたん、なんで皆黙って俺と国王を見ているんだい?』

しかし返事は無い、ただのムーたんのようだ

「その指輪は我が国の国宝アイテムの一つ、いまだ誰も発現させた事が無かった代物だ」
「はぁ・・・え?発現したから返せとか言いませんよね?」

俺が胸元の指輪を守るような体勢に入ると
国王がドン引きしながらも「返す必要は無い」と言ってくる
当然だ、これは俺が貰った物だからな!

「そのアイテムを発現させたアズには一つ余から紋章名を授ける」
「紋章名?」

国王の言葉に5人がざわめきだす
そんな5人を国王が手で制しながら指輪の紋章を確認する

「これは・・・二足歩行の・・・猿「これは人間ですね」

国王が真顔でこっちを見てくる
あんた顔が怖いんだから真顔で見てこないで欲しいんだが

「ではアズにモンキ「人間だからヒューマとかですかね」

再び真顔で俺を見る国王
だから顔が怖いんだって

「・・・まぁ良い、ではこれよりお主はヒューマ・アズ、人の紋章を授かりし6人目の大貴族に任命する!」

国王の宣言と共に他の5人が騒ぎ出す

「す・・・すごい!!まさか生きてる間に新たな大貴族の誕生に立ち会えるなんて!?」
「アズが大貴族・・・まぁ!?これで僕との身分の差ってのは無くなったんじゃないか!?」

特に実感は湧かないが、アレンとムーたんの嬉しそうな表情を見ていると俺も嬉しくなってきた
それに俺が大貴族になったという事は・・・!

「ふふん!これは俺の妹もこの学校に入学する必要性が出てきましたねぇ!!」

俺はドヤ顔で国王を見る

「お主は新たな貴族の当主となる、故にクラウス家との家の繋がりは無くなる」

・・・ん?

「つまり?」
「つまりお主とアクアの関係にも変化が「やっぱ大貴族にならなくて良いです」

二度ある事は三度ある
再び真顔でこちらを見つめる国王

「いや、そこは・・ああ!?待ちなさいアズ!!!」

ちょー断る!

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国王陛下の任命式の途中で逃げ出した俺は現在城の出口目掛けて爆走している
俺はなんとしてもアクアの所に戻らなくてはならない

現在俺を追っているのは5大貴族、マーク、シルバ、ロウ、アレン、ムートン
シルバとムートンに関しては俊敏値が皆無な上に能力も守備一辺倒なので正直問題無い

「問題は・・・」

俺はどこからか飛来してきた炎弾をダイブするように躱す
周囲を見渡してもどこにも人影は無い

「マークめ!狙撃とはこしゃくな!?」

俺は次々に飛来する弾幕を避けながらも物陰に隠れる

このままじゃらちが明かない
焦る俺の耳にさらなる追手の声が聞こえてくる

「あん!戦闘の後はウサギ狩りだなんて・・・漲ってきたわ!!!」

俺は気色の悪い雄たけびをあげる変態に背を向けて一目散に走り出す
恐らくロウは今全裸になってチートアイテムを使っている
一度でも視界にいれてしまったら逃げる事は困難になる

しかし今は好都合だ
俺は全力疾走しながら背後のロウに言葉をかける

「ロウ!短い間だが俺はお前の事をよく理解した!」
「あら?嬉しい事言ってくれるじゃない!」

背後から感じる圧が強くなるのを感じながら
しかし俺は声を荒げる

「お前は誰かに見られる事に快感を覚える性癖を持っている!それ故に!今お前は注がれる視線に応えなくてはならないんじゃないか!?」
「何を言って・・・っは!?どこ!?どこからかアタシを凝視する視線を感じる!?」

ロウの困惑した声が鳴り響く
現在ロウと俺以外この通路には誰もいない・・・そう、この通路には
しかし遠距離からこちらを狙い撃ちしているであろうマークが先ほどから追撃してこない・・・これは!

「アタシとした事がなんて失態!今夢の時間を届けるわ!ドリームダンス!!!」
『そ・・・そんなまさか!?オウノーウ!?』

徐々に遠くなるロウの声と、どこからか聞こえてきたような気がするマークの悲鳴
どうやら上手くいったようだ
俺はほくそ笑みながら通路を飛び出して物陰に隠れる

『!?いたぞ!あそこだ!?』

どうやら兵士にも今の状況が伝わってしまったらしい
俺は窓から外に飛び出すと木によじ登る
下では兵士が辺りを注意深く観察している

「このままじゃ見つかるな・・・」

俺は何か無いか周りを見渡し
近くに干してある洗濯物を視界に映す

「・・・よし!」

俺は近くを漂っていた発光体を手に取り、風を洗濯物にぶつける

『ああ!?皆上を見ろ!パンツだ!?パンツが降空を飛んでるぞ!?』
『な・・・なん・・・だと・・・!?』
『馬鹿野郎!?正気にもど・・・本当だ!?』
『おお・・・神の思し召しじゃ・・・』

俺は空を舞うパンツに意識を奪われた兵士達の足元を縫うように走り去る

「っく!?あとちょっとだっていうのに・・・!?」

俺は門の前で立ちふさがる兵士達を睨む

『ええい!まだヒューマ様は捕まっていないのか!?』
『なんてずるがしこ・・・賢いお方だ・・・それにあの身のこなし・・・やはりあの紋章・・・さr・・・人間の紋章に選ばれただけはある・・・』

おい、あいつら今ずる賢いだとか猿とか言わなかったか?
いや落ち着け、今出ていけば全てが台無しになってしまう

『しかし安心しろ!アズ様の傍には必ず金髪の護衛がいる!』
『アズ様が見つからずとも金髪の犬耳っ娘さえ見つければどうとでもなる!』

ん?今なんて?
俺は恐る恐る背後を確認する

そこには目を欄ランと赤く輝かせ
月光の光を髪に吸収したかのように眩い光を放つ少女

「・・・ルピーさん?いつからいました?」

俺は嫌な予感を感じながらもルピーに問う

[ずっといました]

なるほど、つまり俺が兵士を出し抜いても見つかったのは
この歩く発光少女のせいか

「ルピー、今日は護衛は良いから俺の部屋で夕飯の支度をしておいてくれ」

ルピーは俺の言葉に獣耳をピクリと動かすと
尻尾を振りながら来た道を駆け抜けていく

『いたぞ!!!金髪娘だ!追え!!』

足音が消えたのを確認した俺は出口に向かって歩き出す
俺は!はやく帰ってアクアを愛でなくてはならない!
しかし全員立ち去ったはずの門に一つの人影がうつる

「・・・やっぱりきたね、アズ君」
「まさか最後の関門が同じ妹同盟の・・・アレンとはな」

俺はアレンに向かい合う

「いくらアレンとはいえ・・・手加減はしないぞ?」

アレンは俺が指輪を手に取るのを確認してビクリと震える

「いくらアズ君とはいえ・・・私は簡単には屈しないよ?」
「何々・・・なるほど・・・アレンの家では10歳になるまで平民の家で過ごす風習があるのか・・・」

俺の言葉にアレンが訝し気な表情を浮かべる

「それがどうし「なるほどなるほど・・・アレクちゃんはここにいるのかぁ・・・俺もちょっと会ってみようかなぁ」

アレンは俺の邪悪な笑みを見て何かを察する

「ま・・・まさか・・・!」
「さぁ!アレクが大事ならそこをのけ!」

アレンが冷や汗をかきながら後ずさる

「す・・・スニーキー家は・・・屈しない・・・!」
「アレン・・・お前なら俺の気持ちがわかるだろ?大事な・・・大事な?」

はて?俺はなんの為に逃げてたんだか?

「あ・・・アズ君?どうしたんだい?」
「ん?いや、なんで俺逃げてたんだっけ?なんか大切な者の為に逃げてた気がするんだが・・・」

俺の言葉にアレンが顔を蒼くする
なんだ?何かあったか?

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