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第18話 預言者と悪魔とトイレと

グツグツという音が鳴り響く医務室からこんにちは
本日は昨夜緊急入院となったムーたんの為
俺とアレンはお見舞いに来ています
今ではすっかり完治したようで
病室で元気に小型鍋をかき混ぜているようです


「このメンドラゴラで作ったガラス玉はどんな効果なんだ?」

錬金作業に勤しむムーたんに本日何度目かの質問をすると
ガラス玉を手に取って手の上でコロコロ転がす

お!なんか手にジャストフィット!

「危ないからあんまり乱暴に扱うなよ!?」
「・・・で?どんな効果なんだ?」

そわそわしている俺を見ながらムーたんは溜息を吐く
ムーたんの癖に生意気な

「それは強力な脱力作用があるんだ!並大抵の精神力じゃあどんな相手でもやる気が無くなりダメ人間になる」

ムーたんがガラス玉を慎重にカバンに詰めていると、アレンが顔を輝かせる

「聞いた事があります!!」
「知っているのか!?アレン!?」

アレンは大きく頷くと饒舌に語り出す
この子は解説になると活き活きしだすな

「遥か遠方の古代都市ではメンドラゴラを細菌兵器として開発・・・失敗して国中の人間がダメ人間になってしまったそうです!」

アレンの解説に興味を惹かれたのか、グレイが顔を覗かせてきたので手元にあったガラス玉を投げつける

「おわっ!?おい何しやが・・・なんだ・・・なんともないじゃないか」

失敗か?と、俺とグレイが首を傾げる

「元々怠惰な人間には効果が薄いんだ」
「ああなるほど」

俺が納得しているとグレイが何かわめき出すが無視だ無視

「でも・・・そんな大した物じゃなさそうだな」

俺の呟きにアレンが首を横に振る

「さっき話した古代都市はその細菌兵器で滅びたんだよ」

どういう事だ?
今の説明を聞く限りだと国を滅ぼす程の効果には聞こえなかったが?

「その時の兵器は効果が持続してね・・・街から活気がなくなり生産ラインは全て停止、その国の人間達は次第に食べる事も面倒になり・・・絶滅したんだ」

何それ怖い
俺は若干引き気味にガラス玉を返していると
グレイが再び顔を覗かせる

「ところでアズ、預言者ってのがこの国に来てるのは知ってるか?」
「唐突に何を言って・・・そんなの知らな・・・」

俺はグレイが明けたカーテンの先を見て絶句する

『はぁ・・・めんどくさい・・・今日は預言やめる・・・』

これはもしかしてあれだろうか
件の預言者だろうか?
足元にはグレイに投げつけたガラス玉の破片が見える
いや・・・しかしまだそうと決まったわけでは無い!

「これがその預言者だ」

やっべぇ・・・

「どどどどうするんだいアズ君!?」
「おおおお落ち着くんだアレン!まずは素数を数えよう!1,2,3…」

ふぅ・・・
冷静さを取り戻した俺は改めて予言者を見る

「俺達は何も知らない、こいつが勝手にやる気を無くした、いいね?」
「いいわけあるか!メンドラゴラの粉には魔力の残滓が残るんだよ!」

俺の襟首を掴んでムーたんが追い込まれたような形相を浮かべている
なぜだ?どちらかというと俺の方がまずい状況な筈だが?
俺の疑問に答えてくれるのは我らがWikipediaアレンさん

「アズ君、この国でメンドラゴラは希少・・・誰も扱わないし、城の人間しか存在を知らない・・・」

俺の中で何かが繋がる音が聞こえる

メンドラゴラはこの城にしかない
しかもこの城の人間しか知らないという事は・・・
つまり部外者であるこの預言者がこの城で自分で入手したとは考えづらい・・・

ならば誰が預言者をこんな事にしたのか・・・
この城でメンドラゴラを使用しているのはただ一人

しかしムーたんがメンドラゴラを使用しているのはこの四人しか・・・
いや?本当にこの四人だけか?
否、この場にいる四人ともう一人いる

俺の脳裏にクソエルフの姿が浮かぶ

「やつなら・・・絶対に喋るだろうな・・・」

俺の言葉にアレンとムーたんが勢いよく頷く
あいつこの短期間で凄い信頼得てるじゃないか
悪い意味で

「素直に言ったら許してもらえないかな?」
「ダメだろうね・・・この人は各国の重鎮なんだ・・・このガラス玉を使われたって事は認知されてないだろうから、効果が抜ければこの人が自白しない限りバレないと思うけど・・・」

それまでに預言者が魔力残滓を検査されたら終わりって事か・・・
それなら・・・

「つまりこいつからメンドラゴラの魔力残滓が消えるまでなんとかすれば良いんだな?」
「そういう事になるけど・・・アズ君?どうする気だい?」

俺は医務室の片隅にかけられていた予言者のローブらしき物を手にとる

「俺が預言者のふりをする」
「「ええ!?」」

二人が驚愕の表情を浮かべる

「元々俺のせいだし!大丈夫、こういう時のアドリブ力には自信がある」

俺はキメ顔で宣言すると
呆然とする二人を無視して預言者のフードを被る

いかにも占い師が装備しそうな物で
良い感じに顔は隠れる

「顔は隠せるとして・・・背丈が圧倒的に足りてないよ?」

アレンの言葉に足元を確認する

「なるほど、盲点だった」

俺の呟きに二人が頭を抱える

しかしどうしたものかね?
俺が次の策を考えているとアレンが近づいてくる

「仕方ない、アズ君、君を信じるよ?」
「ん?大船に乗ったつもおわ!?」

アレンは俺の股の下に頭を入れるとそのまま立ち上がる

「・・・アレンさん?随分と手慣れてますね?」
「ふ・・・アレクが成長した時の為に肩車は練習済みさ・・・」

顔は見えないが恐らくアレンは今ドヤ顔をかましている事に違いないだろう
しかし・・・

「なるほど、俺もアクアの為に練習しとく必要がありそうだ」

そんな俺達の会話をドン引きしながら聞いていたムーたんが預言者の予定表を見て慌てだす

「まずい!そろそろ預言の時間だ!?」
「よし!アレン!行くぞ!」
「任せてくれ!」

シスコン魂のおかげで謎の一体感を覚えた俺とアレンは
まるで元々一人の生物だったかの如く急ぎ部屋を飛び出す

「アレン!預言する場所は知ってるのか?」
「もちろん!私も興味があったからね!」

ならこのまま任せて良いな
俺は予言の間に着くまでの間にいくつかの預言を考えておく事にしよう

しばらくすると大きな扉の前で
執事のような人物に止められる

「お待ちしておりました・・・今日のご依頼人は大臣様でございます」

ん?あれ?大臣一人か?
てっきり大舞台で演説したり
長蛇の列の相手をすると思ったのだが・・・
疑問に思いながらも部屋に入った俺は相手を見て固まる

「お待ちしておりました預言者様!」

目の前では黒い肌が特徴的な角をはやした人物が笑顔で迎えてくれる

いや?人間種じゃないよね?ていうか悪魔種だよね?
先に硬直が解けた俺は、微動だにしなくなったアレンの背中を叩いて我に返す

「本日はわたくしめの為に人払いまでして頂き恐悦至極に存じあげます・・・」

人払い?預言者は依頼人の事を知っているのか
・・・見られちゃまずいから大臣一人・・・という事なんだろうなぁ・・・

「しかし預言者様・・・少しいつもと様「ええ!それで本日はどういった預言をお望みでしたかね?」

俺が声をかぶせると
大臣は訝しみながらも椅子に座り語りだす

「実は悪魔領において現悪魔王に対してのクーデターが頻発しており・・・」

いや、そもそもこの国の預言ですらないのかよ

「どうすれば良いでしょうか・・・!!!」

いや、これそもそも預言ですらねぇじゃねぇか!?
俺が大臣の言葉に頭を抱えていると
アレンが窓に向かって歩き出す

なんだ?このタイミングで・・・預言をいれろという事か?

俺は咳払いを一つして預言を口にしようとして・・・

『あ・・・アズ君・・・』

アレンの小声に遮られる
バレたらどうするつもりだ!?
俺は急ぎ大臣の方を確認する

どうやら大臣の位置までは声は届いていないらしい
・・・その為に窓際まで来たのか

アレンは軽く震えている
恐らく相手が悪魔種という事で怯えているのだろう
俺はアレンを安心させるように優しく言葉をかける

『どうしたアレン?人間には見えないかもしれないけど、あれはきっと顔色が悪い悪趣味なアクセサリーをつけたおっさんだよ』

しかしアレンは体を震わせる
余程悪魔種が怖いのか?

『緊張してトイレに行きたくなってきたんだ!』

どうやら違ったようだ
アレンを覗き込もうとした俺は窓の外を眺める
今日も良い天気だ・・・

しかしまずい事になった
このままではアレンが色々な意味で散ってしまう

「大臣様・・・少しトイレをお借りしてもよろしいですかな?」

俺の焦ったような言葉に大臣は訝し気な表情を浮かべるが了承してくれる

「構いませぬよ、丁度この部屋はトイレが隣接しておりますので」

そう言いながら大臣が指さすトイレの扉
それは現代日本でどこにでもあるトイレ

そう・・・扉の向こうにはしきりの一つも無い普通のトイレだ

『アレン・・・漏らしても良いがバレるなよ?』

そんな俺の言葉を聞いたアレンはだがしかし
トイレに向かって歩き出す

『おいアレン!?わかってるのか!?あの狭い個室じゃどうやっても『アズ君!!』

俺の慌てた声はアレンの声にかき消される

『すまない・・・私と一緒に穢れてくれ・・・』

そんな呟きと共に再びトイレに向けて前進を始めるアレン
俺が無言でアレンの首を太ももで絞めると、アレンの動きが鈍くなる

冗談じゃない!

早急に預言を済ませなくてはならない
俺はもがきながらもトイレに向けて前進するアレンの足止めをしながら急いで預言を口にする

「その者、黒き衣を纏いて紫色の野に降り立つ・・・」

俺は外を見ながら昔見たアニメの預言を適当に口にすると
大臣は「おお・・・」と息を漏らす

「そして国の命とも言えるなんか大事な物を奪うであろう・・・!」

続け様に放った俺の適当な予言を言い終わる頃には、目を輝かせながら俺の前で跪いている

「それは・・・新たなる悪魔の王の誕生という事ですね・・・!」
「え?ああ・・・そういう事になるでしょう・・・」

俺が震える大臣に適当に相槌を打つと
感極まったのかついに涙を流し始めてしまった

「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「いえ・・・良いのです・・・良いから・・・良いからはやく出てけ!?出てかないと大変な目にあうぞ!?」

てめぇがブンブンと上下に手を振るったせいかアレンが一際大きく震えてるんだよ!?

その後、何度も礼を言いながら俺達の前から立ち去る大臣の背中を見送った俺達は
急ぎトイレに向かい駆け出すのであった

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