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第17章 精霊術とチートアイテム

草木も眠る丑三つ時
ガタガタ震えるアレンを観客席に
演習場の中心で俺とムーたんは向かい合う

「ルールは簡単、相手を気絶させるか降参させるかだ」

ムーたんは背負っているカバンから木剣を取り出す
あれ?明らかにカバンよりでかい物が出てきたぞ?

「というかムーたんは丸腰相手に木剣を使うつもりか?とんだ腰抜けですねぇ」

ムーたんが俺の挑発にムッすると
棒を取り出してこちらに投げる

渡さなきゃ有利になるだろうに・・・
まだまだ卑怯になりきれないようだ

俺はまだまだだね・・・とため息を吐くと投げ渡された棒を確認する

何の飾りも無い一般的な木製の棒

俺の知識に間違いが無ければ
メインクエストを進めた見習い冒険者が初めて手に入れるガラクタボウだろう
装備制限も重量制限も無く耐久値が無限の変わりに
全てのステータスが0という完全なネタ装備
名前通りのガラクタである

「おいムーたん、武器の性能の差に問題があるんじゃないか?」
「勝てば良いんだろ?まさか武器の差で負けたとか言わないよな?」

ムーたんの癖に生意気な・・・
俺の恨みがましい視線を受けながらカバンから角のようなアイテムを頭につけるムーたん

どんだけ入ってんだ?4次元ポケットか何かか?
しかしそうなると背中のカバンには今日の為に準備したアイテムが大量に入っているのだろう
これは油断できそうもない

「僕の準備は完了だ、アズはどう・・・ああ!準備する物なんてないか!」
「・・・いつでもおっけーだぞ?」

俺はいよいよ調子に乗ってきたムートンを睨むとガラクタボウを構える
べ・・・別に怒ってなんてないんだからね!

「そ・・・それじゃあ今から決闘を始めます!早く終わらせてよ!?」

ここに来て観客席でアレンもとい審判が声をあげる
しかしアレンはなんであんなに震えてるんだ?

「じゃあ始め!」

投げやり気味の開始の合図にムーたんが距離をつめ
上段で木剣を振りかぶる

「おっと?あれだけ準備しといてまさかの突進とかバカにしてるのか?」

俺はガラクタボウの左右端を持つと衝撃に備え・・・
真っ二つに割れたガラクタボウに驚愕しながら木剣のダメージにのけぞる

「なぁ!?ガラクタボウの耐久力は無限のはず!?」

ムーたんの追撃をかわしながらガラクタボウを確認する
その割れ目は細工がしてあったかのように綺麗に・・

「おい」

睨む俺をムーたんはへらへら笑う

「悪いけどあらかじめ細工しといたぞ?」

・・・なかなか見所があるじゃないか

俺の㏋はグレイ曰く元々5
気絶してないという事は1か2ダメージだろうが・・・
なんにせよこれ以上アドバンテージを稼がれるのはまずい

俺はムーたんから距離を取ると
たいまつの下で両手を挙げる

「どうした?もう降参か?」

勝利を確信して木剣を構えながら近づいてくるムーたん
そんなムーたんに俺は笑みを浮かべる

「相手が勝利を確信した時、すでにそいつは敗北している」

そんな言葉と共に、たいまつ付近の赤い発行体からムーたん目掛けて炎を射出する

「「なぁ!?」」

驚きの声と共に、ムーたんはカバンから取り出した泡状の何かで炎の起動を逸らす

なんだあれ?あれがムーたんの秘策か?

ムーたんの思惑を探るべく注意深く観察していると
観客席からアレンの驚愕の声が聞こえてくる

「魔力の発生を感知出来なかった!?どうやったんだ!?それにムートン君のあれは・・・まさか錬金アイテム!?」

なるほど、異なる素材から新しいアイテムを作る・・・そういう事か!

「しかし・・・さっきのアレンのセリフ・・・」

俺は近くを浮遊する光の玉をふにふにと触ってアレンに見せつけるが
アレンは頭にハテナを浮かべている
これってもしかして俺にしか見えてない?

俺はニヤリと笑みを浮かべると
いまだ混乱しているムーたん目掛けて再度炎を射出する
このまま安置から完封してくれるわ!

ムーたんは炎を何度か泡で軌道を逸らすが
アイテムが無くなったのかギリギリ回避を試みだす

ふっふっふー!こっちは炎が近くにある限り無限に炎を出せるぞい!
ムーたんはこっちの弾数に制限が無い事に気づいたのか
諦めたようにこちらに向き直る

「もらった!」

すかさず射出した炎がムーたんを捉える
薄暗い演習場の中、炎によってムーたんの顔が照らしだされる

・・・ムーたんの表情に絶望感は無い!

「メェーーーーー!!」

突如ムーたんが間抜けな声で叫ぶと
炎は何かにぶつかり、俺の後方に弾き飛ばされる

「こ・・・これは!?」

俺は目の前に展開されている羊毛に目を見開く

「これは使うつもりは無かったんだけどな!」

再度観客席からアレンの声が響く

「ムートン君!?まさかその角はシープ家の国宝アイテムだったのかい!?」

国宝アイテム・・・?
そういえば前にアレンが言ってたな

「確かとても強力な性能を持つアイテムだったっけ」

俺の確認の言葉にアレンが頷く

「ただし発動には条件が必要で・・・シープ家は羊の声真似が必須だった筈だね」
「その通り!カウンター能力最強の羊毛だ!いくぞ!メェー「ぶふぉお!」・・・・」

あっしまった・・・
あまりに酷い発動条件につい吹き出してしまった

ムーたんめ・・・勝つためにそこまでやるとは・・・ぷーくすくす!
俺の心の中の称賛が届くこともなくムーたんは耳まで赤くなっている

「い・・・いくぞ・・・?メ・・・メェー「っく・・・ぷぷぷ・・・」いい加減笑うのをやめろぉぉぉ!」

しかし羊毛だろう?燃えてもおかしくないと思うが・・・まさか炎を反射するとは・・・
やるじゃないかムーたん

俺が素直に心の中でムーたんを称賛していると
ドヤ顔をしていたムーたんの表情が訝し気なものに変わる
なんだ・・・?

俺は油断無くムーたんを見つめ・・・

「死になぁ!」
「な!?」

背後から現れた顔をフードで隠した謎の男の不意打ちに気づくことが出来なかった
振り返った俺の目の前に迫る刃は・・・回避不可能な所まで達していた

しかしダメージを受ける瞬間
俺は軽い衝撃と共に頬に温かい物があたる感覚を覚える
目の前ではムーたんが苦しそうな表情を浮かべている

「ムー・・・たん・・・?」

俺のつぶやきと共に床に崩れ落ちるムーたん

「おい!?ムーたん!?ムーたん!?」

どうやら俺をかばう為に謎の男の攻撃をダイレクトに受けてしまったらしい

半狂乱になりつつ叫ぶ俺に男が再度剣を振り上げるが
攻撃を捌けるような体勢ではない
俺はムーたんをかばうように覆いかぶさり衝撃に備えるが
いつの間にか観客席から降りてきていたアレンによって守られる

「そこまでにしてもらうよ!」

ドスの効いた声で男を睨むアレンが
ポーションを取り出してムーたんに飲ませる

しかしムーたんは変わらず苦しそうに呻いている

「バカな・・・最高級のポーションだぞ!?」

顔をフードで隠した男は
焦るアレンをみて笑いながら剣を見せつける

「あるよ~?毒武器あるよ~?」

フード男の言葉に俺とアレンは顔を蒼くする

まさか毒か!?
苦しそうに呻くムーたん

「・・・アレンはムーたんを医務室に運んでくれ」

俺の言葉にアレンが驚いた表情を浮かべる

「まさかアズ君一人で戦う気かい?」

アレンの言葉に頷く
一刻も早くムーたんを治療しないといけない

本来ならば俺よりアレンのほうが戦えるだろうが
俺にはムーたんを医務室まで運ぶ筋力等無い

それに直感だがこいつは俺を狙っているような気がする
アレンは神妙な顔で俺とムーたんを見比べる

「無理はしちゃダメだよ?」
「なに、足止めするだけだ・・・それに・・・」

俺は目の前のフード男を睨む
あいつは俺の友人を傷つけた

「あれを倒してしまっても構わんのだろう?」

今俺はどんな表情をしていたのだろうか?
アレンはビクリと震えると首を縦に振ってムーたんを担ぐ

「・・・すぐ助けを呼んでくる!」

俺が親指を立てて頷くと
アレンがムーたんを連れて演習場を後にする

フードの男はアレンの姿が見えなくなると声を張り上げる

「泣かせるねぇ!」

皮肉たっぷりの発言に俺は真っ二つになった棒を構える
そんな俺を見た男は何がおかしいのか盛大に笑いだす

「ひひ!裏切り者の子供は裏切り者に違ぇねぇ!」

男はそう言いながらフードを外す

・・・見覚えがある
こいつは事あるごとにうちに嫌がらせをしてくる貴族じゃないか

いかれ貴族は俺の睨みをどこ吹く風でオーバーアクションで言葉を続ける

「だから俺様はわざわざこうやって裏切られる前に芽を摘みにきたってわけだ!」

狂ったように笑ういかれ貴族が剣を振りかぶる
毒が塗ってある以上少しでもかすればアウトだ
俺は棒で剣の軌道を逸らす

しかし非力な子供の俺が大の大人の攻撃を完全に捌く事など出来るわけが無く
弾かれるように地面を転がり回る

しかし男はすぐに追撃せず
へらへら笑いながらゆっくり俺に近づいてきては剣を振り上げる

「簡単に殺しちゃぁつまんねぇもんなぁ!」

俺は再度地面を転がる事になる

「・・・いたぶって殺すってか!」
「まだあのガキが帰ってくるまで時間はたぁっぷりあるからなぁ!」

なるほど外道か
しかし医務室の場所を把握している貴族か・・・
城の人間か、はたまた城によく来る富豪か、どちらにせよ相手にしたらまずい相手なのだろう

「でも・・・ちょっと油断し過ぎじゃないかな?」
「なんだぁ?健気に強がっちまってよぉ!ヒッヒッヒィッハー!」

狂ったように笑う外道
しかし外道の笑いは目の前に飛来してきた人物を見てピタリと止まる

「青髪、無事か?」

ガシンという音と共に俺の目の前に10歳くらいだろう少年が降ってくる
厚い筋肉に覆われ、夏国から来たかのように肌は浅黒い
ローブの肩の部分には亀の紋章が描かれている

「我、シルバ・トータル、蛇の娘に頼まれた」

力も名声もある5大貴族様の救援が到着したってわけだ
いかれ野郎は舌打ちを放つと剣を振り上げる

「っち!邪魔だ!」
「危ない!そいつの武器には毒が仕込んであって!」

俺の悲鳴もむなしくいかれ野郎の剣がシルバに突き出され
カキィンという音と共に静寂が訪れる

「カキィン?」

およそ人が刺されるのとは無縁の音に俺は首をかしげる

「自縛神の加護、動かぬ限り、攻撃の8割と状態異常を無効にする」

そう言いながら呆然とする男を睨むシルバ
でもそれ自分も動けないって事じゃないか?
俺はそんな疑問を覚えるが黙っておく事にする

「五大に手を出す、愚か者か?」
「けっ!おっかねぇなぁ!」

謎の男は剣を収めると手をひらひらさせながら演習場の入り口に向かって歩き出す

「また来るぜぇ?」

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