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第14章 適正値"平凡以下"

王国室外演習場
グラフ王国が誕生する前から存在する施設の一つ
旧国により作られたこの施設は
コロッセオのような円形闘技場の作りになっており
数々の罪人とモンスターが争った処刑場である
壁に染み付いた汚れは当時の悲惨さを物語り
夜になると処刑された亡霊が現れるという噂が流れている
グラフ王国になってからは
年に一度行われる武闘大会の会場として使われ
王国でも随一の観光スポットとなっている
                                          byグラフ幻想譚
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そんな演習場の片隅に野太い声が鳴り響く

「いいか?ただ剣を振るうだけでは意味が無い!まずは己の型を見つけ、そこからどうやって鍛えていくかを見出すのだ!」
「「「はい!!!」」」

そんな野太い声に追従するかのように三人の子供の声が鳴り響くと、ブンブンという音がコロッセオ内に鳴り響く

一・・・十・・・百と鈍い音が鳴ると野太い声から罵声が飛ぶ

「全然ダメだ!そんな状態じゃあ俺のクラスのやつの足元にも及ばないぞ!まずは筋肉と一体となれ!お前が筋肉だ!」
「「はい!」」

棒を振り回しているだけのような鈍い音に、野太い声が苛立ったように声を張り上げる
そんな声の期待に応えようと二人の子供の声がコロッセオに鳴り響く

「よし!お前等に剣はまだ早い!準備をしてくるから少し休憩してろ!しっかり水分をとれ!」
「はい!」

ルト先生の休憩の言葉に元気よく返事をするアレン
そして音も無く崩れ去るムーたん

俺?とっくの昔にダウンして日陰で倒れてますよ
アレンは息も絶え絶えなムーたんを軽く担ぐと
俺が倒れている日陰まで運び寝かせる

「おつかれさま!二人共大丈夫?」

心配そうに俺達の顔を覗き込んでいるがなんでこんなに元気なんだ・・・?

アレンは俺に水筒を手渡すと、何やら荷物を持ってきたルト先生の所に向かって走り出す
どうやらルト先生に何か提案をしているようだ

アレンの提案を聞いたルト先生が険しい顔をしてこちらの様子を見ると、額を押さえながら首を縦に振るう

「お前ら!もう少し休憩する時間を与える!」

どうやら俺達の為に休憩時間を交渉してくれたらしい
ジェスチャーで感謝の意を示すと

笑みを浮かべたアレンが親指を立て筋トレを開始する
俺はそんなアレンの姿を見て引き攣った笑みを浮かべる

「これが筋力適正の差ってやつか?」

こっちはもう立ってるのもやっとなんだが・・・
隣ではムーたんも息を荒くして地面に伏している

「しかしまさか二人共筋力適正cとはな・・・伸びしろは無しかー」

俺の言葉にムーたんが寝返りを打ちむっとした表情を浮かべている

俺とムーたんは魔力適正、筋力適正共に平凡以下

「何かの間違いだ!」とムーたんがルト先生の尻を殴ったが、尻はまるでやる気を無くしたかのようにだるんと垂れてしまったのだ

俺?殴るわけないじゃないか!
ルト先生は愕然とするムーたんと白い目を向ける俺に向き直ると
ごく一般的かそれ以下なステータスの伸びしろ
期待はできないと断言したのだった

「・・・努力すれば伸びるかもしれない」

ムーたんの何かにすがるような言葉にだがしかし

「伸びはしても結局平均的なステータスなんだよなぁ」

俺の言葉に沈黙するムーたん
なんだろう?珍しく反論が弱弱しい
大貴族って事でプライド高いっぽいし落ち込んでんのか?

チラリと顔を覗くとそっぽ向かれてしまった
ここは励ましの言葉の一つでもいれてあげるのが年長者としての義務というやつだろう

「まぁ才能があろうが無かろうが勝負事っていうのは最後に勝てば良いんだよ、勝てば!」
「才能が無いと・・・勝てないだろう・・・」

なんだ?これはガチでへこんでるのか?
俺は溜息を吐きながら水筒を投げ渡す

「別に才能が無くても勝てないわけでもないぞ?」

俺はニヤリと笑みを浮かべる
ムーたんは半身を起こすと水筒の水を飲もうとして・・・やめる

「正攻法で勝つ必要なんてないだろ?」
「・・・どういう事だ?」

水筒の飲み口を険しい顔で見ていたムーたんは
言葉の意味を確認するようにこちらに顔を向けている

「つまり!ズルしようがイカサマしようが勝ぁてばよかろうなのだー!!!」
「な!?」

俺の言葉にムーたんが勢いよく立ち上がる

「お!おま!少しは貴族としてのプライドは無いのか!?」
「無いね!」

元より地球育ちの俺は自分を貴族だなんて思った事は無い
それに俺は地球にいようとBGOの世界にいようと
ただのゲーマーでしかない
というか水を飲まないならかえして欲しい

「ムーたんも少し気を緩めろよ、周りをよく見てみな」

俺は溜息を一つ吐くとお城に来てから知り合った人間を思い出す

自分本位の駄目人間、心底クズの駄目エルフ、真正のシスコン、ケツ丸出しの武闘派兵士
少なくともこの城に来て出会った人物の8割以上がプライドとかそういうのとかけ離れた存在である

俺の言葉に反論しようとしたムーたんも、何か思う所があるのか黙り込んでしまった

「なにより気に入らないのがそいつら全員それなりの立場のやつって事だ」

俺はゴロンと横になると空に向かって手をかざす
お昼真っ盛りな現在、日陰とはいえ空はまだまだ青く、蒸し暑い風に汗が頬をつたう

「そんなやつらばっかりなんだ、もう少し気楽に生きたほうが人生楽しいぜ?」

俺はただ無邪気に、心の奥から笑顔を浮かべる

じわじわ汗ばむコロッセオの中を、アレンの素振りの音だけがこだまする

少し気障ったらしかったか?
何も言ってこないムーたんの顔を確認する

「・・・どうした?俺の顔になんかついてるか?」

俺の顔を見つめてぽけーっとしているムーたんを睨むと慌てたように動き出す

「あ!いや!?うん!?」

ムーたんはコホンと咳払いを一つすると頭を掻きながらぽつぽつと言葉を発する

「おかげで少し・・・気が楽になった・・・その・・・ありがとう」
「んんー!?聞こえないぞムートン君!!!もっと大きい声で!!!!!!!」
「・・・うるせー!アズお前調子乗んなよこの野郎!」
「なんだとぉ!ていうかいい加減飲まないなら水かえせよ!あ!おま!?全部飲み干すやつがあるか!?」

熱さ残る演習場
いつものように喧嘩を始める俺達をアレンが止めに入り、ルト先生の怒声が響く
そんな平和な一日だった

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