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第10章 新生活と学友二人

「それでは準備をしてくるので皆さんは適当に挨拶でもしておくであります!」

逃げるように走り去っていったロッテに溜息を吐く
残されたのは俺と赤髪の少女と茶髪の少年
二人共状況についていけてないようでオロオロしている

仕方ない・・・
ここは年長者として俺がまとめるしかないだろう

「俺はアズ、よろしくな」

俺の挨拶に赤髪の少女がハッとして握手を求めてくる

「私はアレン、よろしくお願いします」

うんうん素直そうな子じゃないか
さて・・・問題は・・・

何故かこちらを睨んでいる茶髪の少年
一向に名乗る気が無さそうなので握手を求めてみる

「ふん!お前みたいなチビに名乗る名前なんて無い!」

ふむ・・・どうやら教育が必要かもしれんな
俺は握手の為に出した手で茶髪のガキの服を掴む
そんな俺の様子を察した茶髪が望むところといったように俺の服を掴もうとして・・・

「あら?シープ家では挨拶もロクに習わないのかしら?」

横から浴びせられた人物の声に腕を止める
アレンの方を見ると蛇の紋章を見せながらペロリと舌を出している

「・・・僕はムートン・・・シープ・ムートンだ」

ローブについた羊のような紋章を見せながら渋々といった感じに自己紹介すムートン

「なるほど、よろしくなムーたん!」
「おい?その間違い方には何故か悪意を感じるんだが?」

ムートンとか呼びづらいんだよ!
全くいちいち細かい男だ!

しかしなんで皆んな紋章を見せつけるんだ?
玉座の間でも似たような事してるやつがいたし

そういえばグラフでは5大貴族なんて設定があったな・・・

「・・・なんで5大貴族なんだ?」
「そんな事も知らないのか?これだから泥臭い無名貴族は・・・」

ふむ?ここ最近はサンドワームの散歩をサボっていたから泥臭くは無い筈だが・・・
不安になって服の袖を嗅いでいるとムーたんが額を押さえながらも説明をいれてくれる

「いいか?5大貴族っていうのはその名の通りグラフの中でも資産、権力、全てにおいて優れた力を持つ5つの貴族に与えられる名誉ある称号の事だ」

うん知ってる、まぁそこまではよくある設定なんだよ
実際BGO開発段階で5大貴族のイベントの処理を担当したし・・・
俺が聞きたいのはもっと根本の設定部分の事だ

「そうじゃなくてなんで5とかいう微妙な数なんだ?」

そこは四天王とか三人衆とかだろう
製作段階で所長に聞けなくてずっとモヤモヤしてたんだよ

ムーたんは俺の質問の意図が理解出来ないようで「5が微妙?」と首を傾げている
流石に知らないか?

「それはグラフにある国宝級アイテムが5個あるからだよ」

モヤモヤが晴れないまま会話を終わらせようとしたところでアレンが補足を入れてくれる

「国宝級アイテム?」
「とても強力な性能を持つアイテムでね、5大貴族はそれぞれ家紋があってそれに該当するアイテムを国王より預かっているんだよ」

隣でムーたんが「そうだったのか・・・」って言ってるのが気になるがまぁ見た感じ8歳ぐらいだし仕方ないか

アレンの博識さに感心していると俺の背中を誰かが叩く

「盛り上がっている所申し訳ないでありますが準備が出来たのでありますよ」

突如聞こえてきた声に振り返るとロッテ先生が胸を張って仁王立ちしている

「良いでありますか?これから貴方達三人を居住空間に案内するであります」

そう言いながらロッテ先生が近くの時計の針をいじると大きな音をたてて壁が左右にわかれる
俺達三人は左右に分かれた扉を見て目を輝かせる

おー!これはRPG鉄板の隠し扉ってやつだな!

「聞いた事があります!」
「知っているのかアレン!?」

隠し扉を興味深く観察するアレンが解説をいれてくれる

「グラフ王国の城にはいざという時王族が逃げる為にいくつもの隠し扉があると!」
「なるほど・・・これがその隠し扉の一つ・・・」

しかし・・・

「これ俺達に見せて良いんですか?」

俺がロッテ先生の方を見るとロッテは明後日の方向を向いて口笛を吹いている

「おい」

しばらく口笛を吹いていたロッテ先生は
俺の視線に耐えられなくなったのか大きく溜息を吐いてこちらを振り向く

「良いでありますか?こっちの方がカッコイイでありましょう?」

・・・

「ちなみになんでこの通路の事知ってるんですか?」
「それは私がここに就任した時にこのお城の事を隅々まで調べ尽くしたからでありますな」
「・・・許可はとってるんですよね・・・?」
「さあ皆さん!ついてきてください!」

俺の冷たい視線に耐えれなくなったロッテ先生は慌てて隠し通路に入っていく
しばらく暗い道を歩くと、天井を軽く押し上げ這い上がっていく
そこにはだだっ広い空間が広がっている

「この部屋はアズ様の居住空間になるであります」
「え?なんで俺の部屋に隠し通路が・・・ていうかいくらなんでも広すぎないか?」

だだっ広い空間に必要最低限の生活用品と大きな箱が一つ

箱の中には大量の食材と料理用品、それにアクアの写真が写った写真立て・・・
あれ?というかこれ俺のじゃね?

「皆さまの私物はそれぞれの家から既に預かってきているであります、アレン様とムートン様の部屋は隣でありますので」

ロッテの言う通りよくよく箱の中を確認すると
ぬいぐるみ等見覚えのある物が目に入る

「それでは私は明日の授業の為にちょっと遠出する必要がありますのでこれにて失礼するであります!」

そう言いながら足早に去って行ったロッテの背中を見送る
さて・・・まずは荷物を開封するとするか
荷物を開封する為に箱を確認すると
アレンがアクアの写真立てを手に取っている

「この子は君の妹かい?」

そう言いながらじゅるりとヨダレを垂らしている

「おい、俺の妹に手を出したら承知しないぞ?」

俺は急ぎ写真立てを取り返すと警戒しながら距離をとる

「ああすまない、実は私にもアレクという妹がいてね」

そう言いながら胸元のブローチの中から写真を取り出すと息を荒くしながら頬擦りを始める

「ああアレク!ちゃんと元気にやっているだろうか!?お姉ちゃんがいなくて寂しがっていないだろうか!?」

突如として叫び出すアレンを見ながら俺は納得する
ああなるほど・・・この人ただのシスコンだわ
突如発狂したアレンの話もそこそこに外を見ると真っ暗になっている

「そういえば夕食ってどこで食べるんだ?」

俺の言葉に二人が怪訝な表情を浮かべる

「そりゃあ・・・グレートホールがあるんじゃないか?」

グレート・・・確か食堂みたいな所だっけ
しかし・・・

「どこに?」

隠し扉で案内された俺達はこの部屋がどこにあるかすらわからない

「も・・・もしかしたら給仕の人が部屋に持ってきてくれる・・・かも・・・しれない・・・よ?」

アレンが慌てて意見を出すが自身は無いようだ
この時間になっても誰も来ないのだ、当然だろう

「・・・今日の所は俺が作るとするか」

あいにくと家から大量の食材が送られてきている
俺が送られてきた食材を吟味しながら何を作るか考えているとムーたんが溜息を吐いている

「お前貴族の癖に料理なんてするのか?料理なんて精々庶民や奴隷あがりがするような仕事だぞ?」

そう言いながらやれやれと両手を広げるムーたん
こいつは量を少なめにして問題無いだろう

「しかし・・・」

俺は鍋をかけまわしながらドルガさんの事を思い出す

「確かにそれならドルガさんがこの国屈指の料理人というのもうなずけるな」

この国でも指折りの料理人があの風体なのだ、確かに貴族がするような仕事では無いんだろう
俺が何か納得したように一人頷いていると、ドルガという言葉に二人が大きく身を乗り出す

「お前!?あの英雄ドルガ様を知っているのか!?」
「なんだドルガさんの事知ってるのか?」

俺の言葉に二人は首を激しく縦に振るい
アレンに至っては目を輝かせて捕捉を入れてくれる

「突如現れた国王の懐刀、その手腕によりグラフ王とオクトリア王二人を諫め両国の仲を一気に縮めるも
その後一切姿を現すことがない謎の貴族・・・今一番ホットなお方ですね!!」

まぁその正体はただのウチの料理人なんだが
今は貴族という肩書を得てはいるが、今までと変わらない生活をしている
ここで真実を伝えるのもありだが・・・

「しかしそのドルガさんは実は料理が得意だったりするんだよなー?」
「あのドルガ様が・・・!?まさか貴族がそんな・・・いやしかし・・・」

ムーたんが軽く呻くと独り言のように話し出す

「これだから素人は・・・いいか?料理とは発想の転換、すなわち人生における全てが集約されていると言っても過言ではない」
「いや、私は過言だと思うよ?」

俺の発言にアレンがつっこみを入れている気がするが気のせいだろう
俺は余計な雑音を無視して二人の前に甘口カレーを置く

「・・・このように様々な素材から新たなアイテムが生まれる事もあるんだ」

二人は初めて見るカレーを恐る恐るといった感じに口に含み・・・
アレンは「素晴らしい!」と称賛し
ムーたんは俺の言葉に何か思う所があるのかすっかり大人しくなっている

しかし今日は俺が料理を作るとして・・・明日はロッテ先生を問い詰める必要がありそうだ

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