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第7章 新しい命

クラウス邸の裏には広大な空き地がある
誰も手入れするものがおらず、数ヶ月前まで大量の雑草で埋め尽くされていたこの空き地

5歳になり活動範囲が広がった俺は
日がな日中ルピーを連れて清掃作業を行ない
伸びきっていた雑草は全て抜かれ
石等の障害物は全て撤去され綺麗に整地されている



「ふー!こんな所だろう!」

今日も今日とて日課の整地作業を終えた俺は、屋敷から持ってきたサンドワーム入りのツボを取り出して中のサンドワームを地面にまく

サンドワームは久しぶりの外を楽しむかのように暫くスイスイ地面を泳ぐと
満足したかのようにツボの中に戻ってくる

「そう、我々はサンドワームに帰巣本能がある事を発見したのだぁ!」

繁殖作業当初は逃げ出さないよう一定の距離移動出来ないようにしていたが
この発見をした後は自由に空き地を散歩させている

ちなみに繁殖自体はまだ出来ていないが
こうやって栄養のありそうな土で散歩させていると体長が伸びる事は確認している

「苦労しただけあってこうやって見るとなかなか可愛げがあるな!」

俺は同意を求めて満面の笑みで振り返ると
ルピーが慌ててヨダレを拭っている姿が視界に映る

「・・・まぁ最後は食べるけどさ」

なんとも言えない感情と共にサンドワームを眺める
サンドワームはこれから待ち受ける過酷な現実を知る事無くツボの中を楽しそうにのたうち回っている

「いつか・・・人間とサンドワームが共存して生きていける時代に・・・なるといいな・・・」

そんな事を呟く俺をルピーが心配そうにこちらを見て何かメモを書き始める
お?もしかして俺の気持ちが伝わったか?

[診療所に行きましょう]

ルピーと渡されたメモを交互に見ながら口をムニムニさせていると
屋敷のほうから聞きなれた声が聞こえてくる

「お昼ご飯持ってきたよー!」

視線をそちらに向けると
空き地に一本だけ生えている木の下に
お腹を大きくした母がバスケットかごを片手に手を振っているのが見える
俺とルピーはいそいそと木陰に移動すると、母が持ってきたお弁当を開ける

「ねぇ?これ昨日俺が作った夕飯の残りじゃないか?」
「だって今日ドルガさんいないんだもん!」
「もんじゃないよこの野郎、ルピーもなんとか言ってやってくれ」

物凄い勢いで食事を平らげていたルピーがメモを取り出す

[アズ様の料理は美味しいから問題無いです]

そ、そうだろうか?
そう言われると満更でもない

俺が話のネタを探す為に周りを見渡していると
大きくなった母のお腹が目に入る

よし、この話題なら適度に話をそらせるんじゃないから?

「母さん大分お腹大きくなったなー」
「ええ!私の直感が告げてるわ!もうすぐ産まれるわね!・・・というか産まれそう!!」

作戦が上手くいったのかルピーが驚愕に目を見開いている
話をそらすことに成功した俺は満足してウンウン頷く

「そっかそっか産まれそうなのか・・・」

ん?んー?

「え?まじで?」
「まじまじ、ちょっと屋敷で産んでくるわね!」

よっこいしょと屋敷に戻っていく母

「いや!?え!?ちょま!?」

そんな近所のスーパーに行くようなノリで!?
大慌てで後を追いかける俺に母がなんでもないように笑いかける
流石母上様は格が違う

屋敷に戻り俺があたふたする中、たんたんと使用人を呼び出して部屋にこもる母
そんな母の様子を見ながら俺は頭を捻る

「・・・出産って大変なイメージがあるんだけど」

・・・とりあえず父さんにも報告しといたほうが良いだろう

いそいそと1階の角部屋に移動すると
いつものように書斎で仕事をしている父を見つける

「というわけでなんか産まれそうらしいんですよ」
「そうか・・・もうそんな時期だったか」

俺の簡略な説明に全てを悟った父がウンウン頷く

「あれ?思ったより驚かないんですね?」
「アズ君の時もそんな感じだったからね」

あっ(察し
悟りを開いたような表情の父に内心同情する
ちなみに父はアズという名前に何故か君をつけてくる

「しかし産まれるとなると今の内にアズ君に頼んでおかないといけない事があるな」

真面目な雰囲気の父の言葉に思わず背筋を伸ばす

「アイスは兎に角だだ甘だ、思えばアズ君があの日急に屋敷を飛び出したのもアイスから逃げる為だったのではないかと思っている」

父は窓の外を懐かしそうに眺めている
父の視線の先には俺が初めてここで目覚めた時もたれかかった大石が置いてある
もしかしなくても屋敷を飛び出した日ってのは俺がこの世界で目覚めたあの日の事だろう

「そしてそれからというもの・・・私の驚くような事ばかりするようになった」

いや、なんかすみませんね・・・
若干の申し訳なさから父の顔をまともに見る事が出来ない

「私はアイスから逃げたい一心でここまで成長したと思っている」

本当は俺という意識が入り込んだからだが・・・間違ってはいないんじゃないか?
実際目覚めた次の日からはどうやって母から逃げ延びるかしか頭に無かったし

父は俺の表情に「やっぱりな・・・」と呟くと小さく笑う

「そこでアズ君には新しく産まれてきた家族をアイスから守る使命を与える」

守るって、とりあえずあの凶器に等しいナデナデはやめさせないといけない
しかし・・・

「まさかはじめてのお使いがこんな依頼とはなぁ・・・」

若干ゲンナリしていると背後の扉が大きな音をたてて開け放たれる

「クラウス様ー!ご息女!お産まれになられました!!」

デカイ音をたてながらドアを開けた使用人の言葉に父がガタッと立ち上がりいそいそと部屋を出ていく
そんな父の後を追い母のいる部屋の前に辿り着くと、元気な赤ん坊の声が鳴り響いている

父はどこかソワソワしながら部屋の扉を開けると
満面の笑みを浮かべた母が赤ん坊を優しく抱きかかえている
「よくやった!」と母に駆け寄る父の背中を見ながら
俺は何とも言えない疎外感を感じる

「やっぱ・・・家族っていいな・・・」

地球での記憶がある俺は本当の家族なのだろうか?
こちらの世界に来てずっと考えている疑問が頭をよぎる

新たな命が生まれてからは早いもので
アクアと名付けれた我が妹の為に父とお城に出向いたり
あれよかれよと作業に屋敷に帰る頃にはすっかり夜のトバリが落ちていた

「なんだ・・・?」

少しセンチメンタルな俺は、夜風に当たる為外に出ていつもと違う雰囲気に気づく
辺りは異常なほど真っ暗
空を見上げても星の一欠片も見えない

何が灯りになるものを探してポケットに手を突っ込んでいると外から妙な気配を感じる

「・・・ドルガさん・・・ですか?」

俺の言葉に目の前の空間から音が漏れる

間違いなく誰かいるな
ドルガさんが帰ってきたのかと思ったが・・・もしかして不審者か?
俺はいつでも反撃できるように背後の扉に手を掛ける

「な〜に怖い顔してるの〜!」

場違いな程能天気な声の主によって
簡単に体の自由を奪われる
だがそれよりも

「あ・・・え・・・?」

今の声は?
能天気な声を発した主はいそいそとポケットからロウソクを取り出すと明かりを灯す

「一人でこんな場所にいたら危ないぞ〜!お姉ちゃんとして許せないね!」

黒い髪を後ろで束ねている頬を膨らませている人物は・・・
紛う事無き前の世界の姉・・・青葉里美であった

「あれ?なんで姉さんがこんな所に?」

驚愕の表情を浮かべる俺に姉は頬を指にあてて首を傾げる

「なんでって・・・私はいつでもひろの傍にいるよ?」
「どういうことだってばよ・・・」

相変わらず電波入ってそうな姉の台詞に顔を引き攣らせ・・・
頬を流れる温かい物に困惑を覚える

「あらあら?どうしたのひろ!?」
「え・・?う・・・」

俺を抱きしめてくる姉の懐かしいぬくもりに
わけのわからない感情が爆発する

何を言っているのか

意味を持っていないそんな言葉に姉は優しく頷き

そんなやさしさに心底安心した俺は

こちらにきて数年の感情を全て爆発させ

いつの間にか深い眠りについていた


「泣き疲れて寝ちゃったか〜ひろはいくつになっても可愛いな〜」

そう言いながら頭を撫でる里美が空を見上げる
気づけば一つ、また一つと星が瞬き始めている 

「大丈夫・・・お姉ちゃんは・・・私はいつも側にいるからね!」

きらきらと輝く髪をたなびかせ
アズを抱き抱えた女性はクラウス邸に帰宅するのであった

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