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第2章 新世界より

廊下の角からこんにちは

現在俺はよくわからない夢から
わけのわからない土地に移動し
わけがわからない体になってしまって
恐ろしい現実と戦っています

ギシギシという音が鳴り響く床の上
俺は廊下の角から少し顔を覗かせて周囲に誰もいない事を確認する

「ふぅ・・・なんとかまいたか・・・」

俺は追跡者から逃げ延びた事に安堵して溜息を吐く

「まったく・・・なんでこんなこ・・・とに・・・」

俺は隣でニコニコとしている水色の髪をした女性に気が付き血の気が引いていくのを感じる
女性は何かを話しながら俺に手を伸ばしてくる

「ひっ!?」

悲鳴をあげて手を振り回すが抵抗虚しく抱き抱えられる

「捕まるぐらいなら!っく!殺せ!」

観念したように喉元を突き出すが
女性は俺を大事そうに抱き抱えるとムツゴロウさんの如くザシュザシュという音と共に俺を撫でまわす

「いだ!いだだだだ!ひぃ!?やめ!やめろぉ!!?」

殺すよりも恐ろしい目にあわせるってか!?
尚も手を振り回して抵抗するが女性の暴挙は止まらない

恐らく本人は可愛がっているつもりなのだろう

だがしかし!
満面の笑みでよくわからない言葉を喋られながら
撫でるという精神的に(なぜか物理的にもダメージを受ける)ものをくらい続ける

「ただの拷問だよ!?」

嗜好の表情で俺を撫でまわす女性の手つきは摩擦で俺の肌にダイレクトダメージを与え続ける
この調子だと今日の夜も肌の痛みで枕を濡らす事になってしまう・・・

だがしかし!

ヒリヒリする肌の痛みに耐え、俺は不敵な笑みを浮かべる

「俺がいつまでも撫でられるだけの存在だと思うなよ!」

この数日
ただ撫でられるという拷問を受けていたわけではない!

俺は猫のように体をねじって女性の拘束から抜け出すと
高速で仰向けからうつ伏せに変わる作業を繰り返すというとっておきの新移動術を繰り出す
この動きは、短く一方向に移動する場合に限りハイハイよりもスピードが速い
難点は目が回るのと周りが上手く把握出来ない事だ

「ちゃんと逃げれてるか・・・?」

不安になって少し様子を見る
どうやら女性は俺の新しい動きについてこれないらしく
目を輝かせながら呆然としている

「ふ・・・驚きで声も出ないようだな・・・」

廊下の端まで横回転で移動した俺は四つん這いになる

この時間・・・この場所には毎日とある人物が現れる
それこそ俺が逃げ切れる唯一のチャンス

俺が期待の眼差しで廊下の角を見ていると
例外なく角部屋から出てきた人物に女性が挨拶をする

「視界が外れた今が好機!」

俺はここぞという時の為に編み出した新走法2
両足を使い移動する技・・・二足歩行に切り替えて即座に撤退する

この家の人物は俺が二足歩行で歩ける事を知らない
超短距離ではあるが走る事も出来るのは二足歩行の経験がある俺だからこそできる芸当だろう

「我ながら天才的・・・これなら逃げ切れる!」

運よく扉が開いていた部屋に滑り込むと
急ぎ扉の反対側で外の様子を伺う
どうやら俺がいなくなっている事に気づいて女性が慌てているようだ
逃亡作戦が上手くいったことにニヤリと笑みを浮かべる
だがまだ油断は出来ない
あの拷問官が完全に視界から外れるまでは・・・・!

俺は注意深く外の様子を見ながらふと周りを見回す

「そういえばどこに逃げ込んだんだ?」

周囲には大きな窯やツボ、カマド等が置いてある

「ここは・・・厨房か?」

厨房らしきその場所の奥では
小太りの男が包丁片手にこちらを見ている

今の俺からしたら大分恐ろしい風体をしているが
それ以上の恐怖が背後に迫っている
俺は人差し指で静かにするようジェスチャーすると再び扉の向こうの様子を確認する

ドタドタという音と共に恐怖の拷問官らしき人物の声が遠ざかっていくのが聞こえる

「ふー、なんとかまけたか?」

俺は安堵のため息を吐いて背後を振り返る
そこには出会った時から微動だにしない男の姿

なんだろう?何かあったのか?
少し心配になり男の方にハイハイを始めると
男がオーバーアクションで後ずさる

「あれ?もしかして俺怖がられてる?」

不安げな表情が顔に出たのだろうか
男はあたふたと慌てだすと手に持っている包丁を台に起き、身を屈めて変な顔をしている

あやそうとしているのか?
残念な事にどうあがいても殺人犯にしか見えない

普通なら大泣き間違いなしな顔だが俺でよかったな
悟ったような表情で身を屈めている男の肩を叩・・・とどかないから足でいいか

足を叩かれた男は驚いた表情を浮かべると恐る恐る俺を抱き抱え始める
というかデレッデレな表情をしている

「この人ただの子供好きだわ」

しかし赤ん坊の扱いが慣れてないのか抱かれ心地は最悪だ
ていうか腕毛がすごくてもぞもぞするんだよ

料理人ならば衛生面的にもなんとかしないといけないな

そう思いながら腕毛をむしっていると
男は痛みに苦い顔をしながらも笑顔を浮かべ
ゆっくりなペースで何かを伝えようとしている

俺はその口元を見ながらゆっくりトレースする
えーと・・・

「・・・ぉ・・・る・・・が?」

なんだよ・・・結構わかんじゃねぇか
俺が得意げな表情をするがオルガは首を横に振っている
なんだ・・・違ったか?

先程よりゆっくりなペースで何かを伝えようとする男の口元を見ながら俺はトレースを再開する

「ど・・・る・・・が」

俺が喋り終えると同時に男は歓喜の表情を浮かべてウンウン頷いている
なるほどドルガさんか、記憶したぜ

満足した俺は今頃になってドルガさんの抱っこポジションの高さが窓の高さと同じという事に気が付く

「ドルガさん、ちょいと窓に寄ってくれませんかね?」

ドルガさんは何を言っているかはわからなかっただろうが
何となく察してくれたようで、片手で俺を抱き抱えたまま窓を開ける

窓が開いた瞬間心地良い風が流れると共に
木々の隙間から溢れる光に目を細める
眼下に広がる中庭と思われる空間には緑や黄色の光が踊るように飛び回っているのが見える

「これは・・・地球じゃないよなぁ・・・」

俺は改めてため息を吐くと同時に
背後の扉がデカイ音をたてて開け放たれる音を耳にする

恐る恐る背後を振り返った俺は、無言で笑顔を浮かべる拷問官の姿を確認する

「ドルガさん!逃げ・・・あぁ!?なんでそんな素直に俺を渡・・・ぁぁぁぁぁ!?やめ!?アッー!!!」

今日も今日とて
木漏れ日溢れる屋敷に俺の叫びがこだまするのであった

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