竜殺しと人殺し

あめふらし

氷雪の少女

北の洞窟

昔はこの辺りにも大小様々な村と
鉱山都市があったと言うが今は見る影もない。

数百年前の話だがまだ人々がドラゴンに対抗するすべがなかった頃に壊滅したのだと言う

そんな寂れた遺跡を通過し洞窟の中
シオン達第1討伐部隊は竜の目撃情報を元に捜索していた。

だが


「あまりにも静かすぎる、誤報だったのか…気配すらも感じない」

「こう言うイタズラもないわけではないですからね…」

シオンの隣を歩く部隊の参謀がため息混じりに呟いた
たしかに竜の目撃情報はイタズラや誤報の場合も少なくはない今ではヒトも竜に対抗する術を身につけているため向こう側も
警戒を強めているのだろう

「あまり深入りしてもいい情報はなさそうだな…総員撤収だ。」

その時だ洞窟のさらに奥の方から物音が聞こえたのだ。

「竜ならあんな小さい音は出さない、一応確認だが油断はするなよ」

物音のした方へと歩いていく
奥に行くにつれ段々と寒くなり身体が冷たくなって行く

「隊長!あそこ!」

シオンはあぁと一言返事をすると
参謀の指差す方向に目をやると少女が倒れている

歳はシオンとそんなに変わらないといった感じで髪は薄い青でとても透き通った水晶を見ているようだ、衣類を身につけておらずその艶やかな身体には所々傷が見受けられる

「隊長女の子が倒れていますよ!」

部隊員が少女に駆け寄ろうとするとシオンはそれを制止する

「おい待て迂闊に近づくな、俺たちの任務は竜の討伐だヒトの救助活動じゃない本部に報告はするが、罠の可能性もある今不自然なものに触れる事は…」

しかし
部隊員達のあまりにも慈悲深い顔と言ったら、ここでおいて帰ればシオンだけが悪者になってしまう

「はぁ…わかった、つれて帰る。戻り次第本部に報告してこの女をどうするか会議を開く」

シオンは女に上着をかけると部隊後列に運ぶように指示を出す。

この少女が無害だと言うことをなぜかシオンは直感的に理解していた。
油断するなとは言ったが敵意も殺意も感じられなかった

王都


「なっ…ちょっと待ってください!なんで俺が例の少女の面倒など…!」

「第1隊長殿確かにあなたの部隊は優秀だそして強い、故に多少の勝手も許されるだろうだが王都の民は厳しい身分審査の元やっと生活権を手に入れられるものだ、にも関わらず身元不明の少女を招き入れるなど…」

シオンは王都に帰るなりすぐに騎士団本部へと少女の件を報告した、すると瞬く間に王の耳に入りその側近からのお叱りを受けたのである

その処罰の内容が
王都で少女の面倒は見れないので
中立都市で少女の面倒、もとい監視を行えとのことだった。

「しかし自分で言うのもなんですが、俺はあくまで第1討伐部隊隊長ですよその俺が軍を離れるなど」

「王都は安全だ、心配など無用もし第1を動かす際には貴殿にも連絡はしよう、いいな?直ぐにでも発つ様に」

おかしい、たしかに身分審査も行えないヒトを王都で匿うのは問題の元になる
しかしシオンは違和感を覚えていた。
ならなぜ8年前自分はすんなりと王都に溶け込むことが出来たのか、まるで謎が深まるばかりである。

しかしだ今わからないことを考えたところでわかるはずもないのでシオンは荷造りを続けるが、少女は相変わらず目を覚ます様子はない。

こうして見ていると同じヒトとは思えないほどの美しさである、自分でなければ良からぬ事をしでかしていたかもなどと下らない想像に耽ると、また作業を進めて行く

「流石に1日は寝ても許されるだろう準備がまだって事にしとけば」

そう自分に言い聞かせ、シオンは眠りについた

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