竜殺しと人殺し

あめふらし

竜殺し

竜はこの世に存在してはならない。

こんな当たり前の言葉にシオンはずっと疑問を抱いていた。
竜に文化があるならば、きっとヒトはこの世に存在してはならない。
と言うに違いがないだろう、ヒトは人にとって都合が悪いから竜を殺すのだ。
人の勝手、竜の勝手そんな争いをもう3000年も続けている。

王都から派遣された司祭が朝っぱらからそんなくだらない演説を村の真ん中で毎日繰り返すのだ。

「馬鹿馬鹿しい…」

シオンはまるで自分には関係ないと言いたげにそう呟くと、いつものように村から出て、剣の修行に励む

「みんなは俺には感情がないって言うけど、俺にだって夢はあるっつーの」

齢10にして剣の腕はそこそこ
シオンの夢は王立騎士団に入ることだった。
給料も安定しており何よりも王都での暮らしに憧れを抱いていた。
竜の討伐などに興味はないが、それで良い暮らしが出来るならと子供ながらの浅はかな理由ではあったが、それでも修行には人一倍力を入れていた。

「シオンこんなとこでまた1人修行?それなら村のみんなとすればいいじゃないの」

「なんだよリュカ俺は遊んでんじゃないし、レベルの低い奴と仲良しごっこする気はないよ」

「はぁ…姉に向かって呼び捨てはないでしょ?別にいいけど暗くなるまでには帰ってくるのよ」

そう言って踵を返す姉の首から上が消えた。

「え…」

リュカの身体は少しだけ前進すると
糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
緑色の草原は吹き出す鮮血によって赤く染まる

一瞬のことで、何が起こったのか全く理解が出来ない。

「あれ、リュカ…おい…どうなって…え」

シオンが訳もわからずあたりを見回すと、頭上から大きな羽音とともに真下に突風が打ち付けられた。

「あ、ぁあ…」

頭上を数体の竜が飛び去り村の方へ飛んで行くのが見えた。

そしてその中の一体がシオンの元へ急降下して来たのだ。

しかしあまりにも現実離れした光景に
シオンは一歩も動けずに、竜にその身を差し出すことなる

目の前が真っ暗になり
はじめは体のあちらこちらに激痛を伴ったがやがてその感覚すらも消えていく。

「死にたくない…嫌だ絶対に死にたくない…」







生存者確認

このままでは助かりません。

声が聞こえた

「そうだな、助ける道理もないが生かそうか」


半年後 王都

竜はこの世に存在してはならない。

彼は竜殺しとなる

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