カモミールティーと金木犀

変化



さっきまで、名前も知らなかった
目の前に座る陽都さん

私より大人びて見えて
雰囲気にはどこか男の色気が溢れる

久しく、男の人を感じていない私には
少し刺激が強い…かな。


(手、大っきいなぁ。指も長い)


そんな事ばかりさっきから
考えてしまう


「にしても、陽都くん
念願の白華ちゃんはどうよ(笑)」


(念願の??)


「いや、マスターも意地悪だなぁ(笑)
本人目の前にして緊張してるのに!」


少し困りげに眉を下げる


「念願って?」


素朴な疑問だ


「実は僕ら、ここで何度か会っていて
多分最初は一年前の今頃…だったかな。」


(あ…、あの日もしかして。)



「私の覚えてる日が正しかったら
あの日はショックな事があって
気がついたらここに来てた日だと…思う」



あの日、2年付き合っていた彼氏に


「お前は俺のお飾りに過ぎねぇんだよ」


そう吐き捨てられ別れた日だった



「そうだったんだ。
あの日僕が見た君は今日とは
まるで違う人のように見えたよ」


寂しそうに笑う彼をなぜか
たまらなく愛おしく感じた



「私、あなたのことを知りたい
そう思うのは少し変かしら…。」


途中から、自分が言っていることが
恥ずかしくて俯いてしまう


心臓が踊る、苦しい

久しぶりの感覚にわくわくもする



「っ、ぜひっ!
僕も君をもっと知りたいんだ」



二人で微笑み合う空間は
温かい光に満ちていた


(君たちはきっと
良いパートナーになれるさ)


優しい眼差しで
マスターが二人を見ている



出会いはここ

カフェ  MOON



窓際の一番奥が二人の特等席




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