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勇者殺しの勇者

やま

11話 鬼の力

 イスターシャとの話を終えた俺は、少し疲れた様子のシスターに追加で寄付金を払い神殿を後にした。


 シスターは疲れていたが「イスターシャ様の匂いがする!?」とか、俺にはわからない事を言いながら鼻息荒く興奮していたので、体に問題はなさそうだった。


 イスターシャの匂い(シスターにはわかるらしい)を辿って俺をジロッと見て来た時は焦った。このままでは狙われると思った俺は慌てて神殿を後にした。後ろから俺を呼ぶ声が聞こえたけど、無視して。


 若干悪い気もしたが、それ以上に怖かったのが優ったので足を止める事は無かった。


 屋敷に戻った頃は既に夕方で、俺が屋敷に入ると、何処からともなくリアが姿を現わす。昔は突然現れるリアに驚いていたけど、そう言うものだと認めてしまったら慣れてしまった。


 猪の事件からわかるけど、リアは只者じゃない。何回か、どうしてそんなに何でも出来るのか聞いた事があるけど、全部『愛』で片付けられてしまった。エルフ、ダークエルフ族は長寿な一族だから、リアも見た目通りの年齢では無いとは思うけど。


「お帰りなさいませ、アベル様。旦那様はもうすぐでお戻りになるそうです」


「ただいま、リア。父上が帰って来たら教えてくれない? 父上と話したい事があるんだ」


 まあ、リアが誰であろうと何であろうと構わない。父上が認めた人で、俺の大切な家族の1人だ。


「わかりました。それで、食事にします? お風呂にします? それともわ・た・し?」


 ……突然何を言い出すんだ、このエルフは。細い腰をくねらせて、頰を赤く染める姿はなんとも蠱惑的だが、今日は父上と真面目な話をするんだ。


 リア、って言いたいところを我慢して俺は自分の部屋へと走る。後ろから再び俺を呼ぶ声が聞こえて来るが、心を鬼にする。リアよ、せめて呪いが解けたから誘ってくれ!


 ったく、あのエロフは。部屋で悶々としながら、宿題などを片付けていると、扉から音がして開かれる。リアかと思ったら、まさかの父上だった、って、もう夜じゃ無いか。気がつかなかった。


「アベルよ、俺に用があるという事だが」


「申し訳ございません、父上、自分から訪ねるつもりだったのですが」


「何、構わぬ。それで話とは?」


 俺の前に椅子を持ってきてどかっと座る父上。やっぱり、対面するだけで物凄い圧がある。俺の身長は160ほどまで伸びたけど、それでも、大きく見える父上。たまに思うのだけど、本当に俺って父上の子供なんだよな? そんな事を思いながらも父上に尋ねる。


「はい、父上。俺に鬼人族としての戦い方を教えて欲しいのです」


「鬼人族だと? 今はリアに教えてもらっていたはずだが?」


「はい。そうなのですが、最近伸び悩んでいまして、スロウさんに相談したのですが、種族には種族特有の戦い方があると聞きました。エルフでいう精霊魔法のような。鬼人族にもあるのでは? と、思い尋ねたのです」


 俺が尋ねると、難しい顔をする父上。それに合わせて増す圧力。震えそうになるのを何とか我慢する。


「ふむ、今のお前になら教えても耐えられるか。よかろう。付いて来い」


 父上からの圧が霧散すると、そのまま部屋を出て行ってしまう。俺は慌てて後ろをついて行く。連れて来られたのは、屋敷の外の庭だった。近くにはリアもいる。


「アベルの言う通り種族毎の技というものがある。鬼人族にもそれはあり、技名を『鬼化』と言う。鬼人族は見た目だけでなく、体の中に鬼の力を宿している。強さは人それぞれ。俺は『炎剛鬼』という鬼の力を宿している。アベル、お前は母親と同じ『白夜鬼』という鬼の力を宿している」


「……母上」


 俺が生まれた後、隣国と起きた争いで、勇者と相討ちになったんだっけ。俺も話しか聞いた事がないけど。


「お前の母親、ツバキはお前と同じように鬼人族の中では体格が小さかった。しかし、鬼人族の中では最強だった。それは内なる鬼の力を使いこなしていたからだ。あの状態のツバキには俺が鬼化しても叶わなかったな」


 父上でも敵わなかった力が俺の中に眠っているのか。


「今からお前に力の使い方を教える。しかし、鬼の力に飲み込まれるなよ? 帰って来られなくなる」


 父上がそう言った瞬間、父上の体から炎が吹き荒れる。中庭の気温が一気に上がり、汗が止まらない。それなのに体の震えが止まらなかった。


 そして気が付けば目の前に父上が腕を振り上げて迫っていた。やばっ、殺され……


『解き放ちなさい、我の愛しの坊や』


 そんな声が頭に響いた瞬間、俺の意識は途絶えた。次に目を覚ました時は、体中傷だらけの父上とリアが俺の側に立っており、俺の体は全身骨折で動く事が出来なかった。


 屋敷の中にはには大きな穴がいくつも空いており、まるで上位魔法が撃たれた後のように酷かった。


 俺が目覚めたのは鬼の力を教えてもらった日から3日後で、目が覚めるまでは何度も魘されていたらしい。


 俺は鬼の力に飲み込まれてしまったようだった。

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