勇者殺しの勇者
8話 成績の結果を見て
「うーん、どうしたものか」
俺は壁に張り出された紙を見て1人で唸っていた。このままだと卒業は出来るけど、あの方に何を言われるか。
周りには俺と同じように張り出された結果、成績表に一喜一憂している学生たちがいた。
この学園も後1年で卒業、その後の進路に関わってくるのが、この1年ごとに張り出される成績表だ。この成績が全てではないが、重要なのには変わりない。
俺としては目的を達成するためにこの国を出る事の出来る役職に就きたい。『勇者5人を止めなければセッ○ス出来ない』という呪いを解くために。
最近は魔国ゼルヘラートの隣国、アーレン王国が何処かの国と戦う準備をしていると言うし。だけど、この成績じゃああの方が認めてくれねえよなぁ。
「おっ、何暗い顔したんだよ、まぐれアベル。今回は上から何番目だ、あ?」
また面倒な奴が来やがった。3年経ってまたデカくなったデカブツ、ガドル。鬼人族の証である角が1本額から生やして、俺を見下ろしてくるガドル。取り巻きたちも一緒みたいだな。
俺が無視していると勝手に俺の順番を探し始めるガドル。上から見て行きそして半分より下辺りに差し掛かった時に、ガドルが大きな笑い声をあげる。
「はっ、何だよ、お前の順位。教養が94番で、実技が178番って。そんなんじゃあリティシア様の護衛なんて無理だなぁ!」
そう言って高笑いするガドル。この学園は1学年大体400人ぐらいいる。俺らの学年も402人の事を考えると、俺の成績は真ん中くらい、平均で教養だけ少し上ってところだ。
悪くはないが、ずば抜けて良いというわけではない真ん中だ。それでも、ガドルに笑われるほどの順位では無いと思うが。ガドルの順位は教養278番、実技21番。実技がずば抜けて良いが、それに頭が伴っていない。所謂脳筋タイプって奴だ。
いくら腕っ節が良くても、考えられないようじゃ獣と変わらない。こいつは強ければ良いと思っているからなあ。俺もそんなに教養が良いわけじゃないから強くは言えないが。
「実力のねえお前にはリティシア様の護衛は無理だな。俺と変われよ」
「……頭の中が筋肉で詰まっている脳筋にも無理だよ、諦めろ」
一瞬俺が何を言ったのかわからなかったガドルはぽかぁんと口を開けるが、次第に顔が赤く染まり腕を振り上げて来た。しかし、その腕は振り下ろされる事が無かった。理由は
「何をしている!」
と、とある人物がやって来たからだ。この学園の生徒会長を務めている男子生徒。男女問わずに人気で毎日女子からの告白、2日に1回男子からの告白がある生徒会長のスロウさんだ。その隣には次期生徒会長で、今回の問題にも関わっているリティシア様に、スロウさんの妹で次期副会長のステフもいた。
生徒たちが左右に割れて道が出来る。その道を堂々と歩くスロウさんは確かにカッコいい。俺が女なら惚れていたな。
それに、そのイケメンのスロウさんに全く見劣りしない2人。リティシア様はツインテールをやめて、リアみたいなストレートロングに変えており、誰もが見惚れるほどの女子になっていた。ただ、胸は無いと前嘆いていたけど。
ステフは、今も図書室で本を読んだりするけど、前みたいに引っ込み思案な性格は無くなり、誰に対しても笑顔向けてくれる優しい女の子になった。
俺と同い年なのに俺の事を何故か兄と慕ってくるけど。それに、リアに匹敵する柔らかいたわわなものが2つ付いているし。
そんな3人が俺たちの方へと向かってくる。ガドルは俺の襟元を掴んでいた手を離して、変な笑みを浮かべていた。
「いやぁ、何もしてないぜ、生徒会長」
「そうか。それなら良いのだけどね。それより護衛騎士というのは当然族長クラスとも接する事がある。ある程度の教養が無いと対応出来なくて苦労するよ」
「わ、わかっているよ。行くぞ、お前ら!」
みんなが見ている前で説教されたガドルは顔を真っ赤にして去っていった。ザマァ見ろ。少しは勉強するんだな。
「何を変な顔しているの、アベル!」
ガドルの後ろ姿をおちょくっていたら、リティシア様に頭を叩かれてしまった。痛いですよ。
「あなたももう少し頑張りなさい! どうしてあの時のような本気を出さないのです!」
……これは稀に見る本気で怒っている時の表情だ。リティシア様だけでなく吸血鬼族は怒ると目が赤く染まるだよな。真っ赤っかだ。
それに、俺は結構本気でやっているんだよな。俺の実力の結果がこの順位になっている。あの時の力はあれ以来出せた事が無い。あの体に暖かい何かが流れてくる感覚。あの時以降感じなかったからな。
「このままでは、別の者に騎士の座を取られますよ! 良いのですか、アベル!」
俺の前で怒るリティシア様。だけど俺は
「リティシア様、前にも言いましたが、俺は騎士にはなりませんよ」
記憶が戻ってから、この3年間何度も言っている事だ。騎士になってしまうと、勇者と会う事が出来なくなるだろう。そうすれば、俺の目的が達成出来ない。イスターシャの呪いも解けなくなってしまう。
俺の言葉を聞いたリティシア様は「もう知らないっ! アベルの馬鹿っ!」と言って走って行ってしまった。ステフは俺とリティシア様を見比べて、リティシア様の後を追いかけて行く。
「何か悩みでもあるのかい? 良かった僕が聞くよ。未来の弟だし」
「変な事言わないで下さいよ。でも、相談にはなって欲しいかもです」
何とかリティシア様を説得する方法と、今以上に強くなれる方法を。
俺は壁に張り出された紙を見て1人で唸っていた。このままだと卒業は出来るけど、あの方に何を言われるか。
周りには俺と同じように張り出された結果、成績表に一喜一憂している学生たちがいた。
この学園も後1年で卒業、その後の進路に関わってくるのが、この1年ごとに張り出される成績表だ。この成績が全てではないが、重要なのには変わりない。
俺としては目的を達成するためにこの国を出る事の出来る役職に就きたい。『勇者5人を止めなければセッ○ス出来ない』という呪いを解くために。
最近は魔国ゼルヘラートの隣国、アーレン王国が何処かの国と戦う準備をしていると言うし。だけど、この成績じゃああの方が認めてくれねえよなぁ。
「おっ、何暗い顔したんだよ、まぐれアベル。今回は上から何番目だ、あ?」
また面倒な奴が来やがった。3年経ってまたデカくなったデカブツ、ガドル。鬼人族の証である角が1本額から生やして、俺を見下ろしてくるガドル。取り巻きたちも一緒みたいだな。
俺が無視していると勝手に俺の順番を探し始めるガドル。上から見て行きそして半分より下辺りに差し掛かった時に、ガドルが大きな笑い声をあげる。
「はっ、何だよ、お前の順位。教養が94番で、実技が178番って。そんなんじゃあリティシア様の護衛なんて無理だなぁ!」
そう言って高笑いするガドル。この学園は1学年大体400人ぐらいいる。俺らの学年も402人の事を考えると、俺の成績は真ん中くらい、平均で教養だけ少し上ってところだ。
悪くはないが、ずば抜けて良いというわけではない真ん中だ。それでも、ガドルに笑われるほどの順位では無いと思うが。ガドルの順位は教養278番、実技21番。実技がずば抜けて良いが、それに頭が伴っていない。所謂脳筋タイプって奴だ。
いくら腕っ節が良くても、考えられないようじゃ獣と変わらない。こいつは強ければ良いと思っているからなあ。俺もそんなに教養が良いわけじゃないから強くは言えないが。
「実力のねえお前にはリティシア様の護衛は無理だな。俺と変われよ」
「……頭の中が筋肉で詰まっている脳筋にも無理だよ、諦めろ」
一瞬俺が何を言ったのかわからなかったガドルはぽかぁんと口を開けるが、次第に顔が赤く染まり腕を振り上げて来た。しかし、その腕は振り下ろされる事が無かった。理由は
「何をしている!」
と、とある人物がやって来たからだ。この学園の生徒会長を務めている男子生徒。男女問わずに人気で毎日女子からの告白、2日に1回男子からの告白がある生徒会長のスロウさんだ。その隣には次期生徒会長で、今回の問題にも関わっているリティシア様に、スロウさんの妹で次期副会長のステフもいた。
生徒たちが左右に割れて道が出来る。その道を堂々と歩くスロウさんは確かにカッコいい。俺が女なら惚れていたな。
それに、そのイケメンのスロウさんに全く見劣りしない2人。リティシア様はツインテールをやめて、リアみたいなストレートロングに変えており、誰もが見惚れるほどの女子になっていた。ただ、胸は無いと前嘆いていたけど。
ステフは、今も図書室で本を読んだりするけど、前みたいに引っ込み思案な性格は無くなり、誰に対しても笑顔向けてくれる優しい女の子になった。
俺と同い年なのに俺の事を何故か兄と慕ってくるけど。それに、リアに匹敵する柔らかいたわわなものが2つ付いているし。
そんな3人が俺たちの方へと向かってくる。ガドルは俺の襟元を掴んでいた手を離して、変な笑みを浮かべていた。
「いやぁ、何もしてないぜ、生徒会長」
「そうか。それなら良いのだけどね。それより護衛騎士というのは当然族長クラスとも接する事がある。ある程度の教養が無いと対応出来なくて苦労するよ」
「わ、わかっているよ。行くぞ、お前ら!」
みんなが見ている前で説教されたガドルは顔を真っ赤にして去っていった。ザマァ見ろ。少しは勉強するんだな。
「何を変な顔しているの、アベル!」
ガドルの後ろ姿をおちょくっていたら、リティシア様に頭を叩かれてしまった。痛いですよ。
「あなたももう少し頑張りなさい! どうしてあの時のような本気を出さないのです!」
……これは稀に見る本気で怒っている時の表情だ。リティシア様だけでなく吸血鬼族は怒ると目が赤く染まるだよな。真っ赤っかだ。
それに、俺は結構本気でやっているんだよな。俺の実力の結果がこの順位になっている。あの時の力はあれ以来出せた事が無い。あの体に暖かい何かが流れてくる感覚。あの時以降感じなかったからな。
「このままでは、別の者に騎士の座を取られますよ! 良いのですか、アベル!」
俺の前で怒るリティシア様。だけど俺は
「リティシア様、前にも言いましたが、俺は騎士にはなりませんよ」
記憶が戻ってから、この3年間何度も言っている事だ。騎士になってしまうと、勇者と会う事が出来なくなるだろう。そうすれば、俺の目的が達成出来ない。イスターシャの呪いも解けなくなってしまう。
俺の言葉を聞いたリティシア様は「もう知らないっ! アベルの馬鹿っ!」と言って走って行ってしまった。ステフは俺とリティシア様を見比べて、リティシア様の後を追いかけて行く。
「何か悩みでもあるのかい? 良かった僕が聞くよ。未来の弟だし」
「変な事言わないで下さいよ。でも、相談にはなって欲しいかもです」
何とかリティシア様を説得する方法と、今以上に強くなれる方法を。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
147
-
-
2
-
-
107
-
-
1
-
-
89
-
-
22803
-
-
93
-
-
516
-
-
70810
コメント