勇者殺しの勇者
3話 異世界の事情
「ええっと……それってどういう事だよ?」
あまりにも突然な話にびっくりした俺は、イスターシャに聞き返してしまった。イスターシャはそういう質問がされるのを予測していたのか、自然と指を鳴らす。すると、俺たちの隣に突然机と椅子が現れた。
「少し長くなるから座って話しましょ」
そのまま優雅に座るイスターシャ。足を組んで座る姿はまさに女神だった。布のような物しか着ていないため、足の組んだ姿は眼福だった。腰から伸びるすらっとした綺麗な足。思わずガン見してしまった。
「……人の足見てないでさっさと座りなさい」
「あっ、はい、すみません」
ギロッと睨まれては何も言えない。素直に謝って俺も椅子に座る。イスターシャはそんな俺を見て溜息を吐く。小さい声で「この子で大丈夫かしら?」と呟いているが、それは内容によるぜ。
「まあ、良いわ。まず私たちが主神としている世界の名前は、デストア。あなたが元いた世界には無い剣と魔法が存在する世界よ」
うむ、やっぱり異世界といえばそうでないとな。やっぱり魔法は使ってみたいよな。
「その世界には人族と魔族に分かれているの。人族は言葉の通りあなたたちでいう人間たちの事で、魔族はそれ以外の種族の事を言うの。あなたの世界の書物の中にあるエルフやドワーフ、獣人なども魔族に当てはまるわ。そして、私たちの世界には八神と呼ばれる神がいるわ」
イスターシャはそう言い、デストアにいる神々を教えてくれた。
まずは本人である魔神イスターシャ。
次に闘神レイヴェルト。
賢神レガリス。
獣神アドガルド。
龍神ランドルフ。
精霊神アルティネーゼ。
造神ヘパルガス。
そして人神エスティア。
この八神がデストアで信仰されている神様たちらしい。それぞれの種族が様々な神様を信仰しているらしいのだけど、この中で人神エスティアが1番信仰が多いらしい。
「人族が多いからね。それにエスティアは甘いから、自分に信仰してくれる人にはすぐに加護を与えてしまうの。私たちも努力している人には加護を与えるけど、エスティアはその基準が低過ぎるの」
それから1時間ぐらいその人神エスティアについての愚痴が始まった。直ぐに男神に言いよるとか、ド天然で男神の前で直ぐにHなドジをするとか様々だ。そのHなドジ見てみたいです。
イスターシャの綺麗な女神とは違って愛らしい女神らしく、男神たちは、保護欲が唆られるらしい。イスターシャや他の女神からしたらあざといらしいけど。
「問題が起きたのは600年前。私たち神は人間たちと同じように皆良い神様ばかりじゃないわ。他の世界を手に入れようとする神や、戦うのを見るのが好きな神もいる。600年前にもそんな神がデストアに攻めてきたわ」
深刻そうに頭に手をやるイスターシャ。机に肘を付けているため、体が前屈みになり大きな胸が机の上に載っている。やば、谷間やばっ!
「ちゃんと聞いているの!?」
「あっ、はい、聞いています! ありがとうございます!」
「何がありがとうよ、ったく。私たち神は世界に直接関与する事は禁止されているのよ。力を制限すれば出来るけど、そんなの雀の涙ほど。やる神はいないわ。だから基本間接的に干渉していくの。さっき言ったように加護を与えたりしてね。
その神は私たちの世界に干渉するために色々な事をして来たわ。その中の1つに魔物に神の力を与えた神魔獣とした」
「……神魔獣」
「ええ、それはもうかなりの強さを誇ったわ。世界の中でも最強と言われる者たちで向かっても逃げるのが精一杯で勝てなかった。このままではデストアは他の神に取られる、という時に行ったのが勇者召喚だった。
エスティアが他の男神から聞いた方法で、神の力に耐えられる者を呼び出せば神魔獣にも勝てると。私たちが何かを言う前に、エスティアは天啓を人族に与えて、勇者召喚を行わせた。その結果、その勇者によって神魔獣は倒されて、他の神はデストアから手を引いたのだけど、そこから世界が荒れ始めた。
そんな神魔獣を倒せる程の勇者が物凄く良い人ならば良かったのかもしれないけど、そんな事があるはずもなく、勇者は欲を出した。結果、自分の国を作ったわ。別にそれだけなら構わなかったのだけど、まあ、その勇者が結構酷くてね。人妻であろうが幼女であろうが、自分が認めた女性は力づくで手に入れていった。その結果何が起きたと思う?」
「……争いか?」
「まあ、間違っては無いわね。女性を取られた者、国はその勇者の国と争ったわ。だけど、当然神魔獣を倒すほどの勇者には勝てる訳もなく、いくつもの国が潰れて、勇者の国に飲み込まれていった。
ただ、勇者も当然不死じゃない。召喚されたから40年後に亡くなったわ。勇者は亡くなった。亡くなったけど問題が無くなったわけじゃなかったわ。
次に起きたのが勇者が建てた国の相続争いだった。その馬鹿勇者が何十人と妻を作って孕ませたせいで、誰が後継者になるかの血みどろの争いが行われたわ。人族だけでなく他の種族も巻き込まれての大きな争いが何十年と続いたわ。
その争いを見て悲しんだエスティアはどうしたと思う?」
この話の流れ。そしてもう死んだような目で呆れた声を出すイスターシャ。
「まさか……」
「あなたが思っている通り、様々な国に勇者召喚を教えたのよ。ただ、人族の国だけにね。結果、人族は争いながらも力を持っていった。勇者の子供にも普通の人以上に力を宿していたからそれも拍車をかけて。
そして、それに巻き込まれた多種族は正反対に数を減らしていく。元々そんな数も多くなかった多種族は魔族として1つの国になる事しか助かる道がなかった。
今はデストアには十数人の勇者とその何倍にもなる勇者の子孫がいるわ」
「そうなる前にそのエスティアを止める事は出来なかったのかよ? 同じ神様なんだろ?」
「無理ね。私たちの力は治めている世界の信仰によって変わってくる。そうなったら1番多いのは人族の殆どから信仰されているエスティアには勝てない。私やレイヴェルトなどは人族からも信仰されているけど、それでも、力は及ばないわ。エスティア以外が束になっても多分勝てないでしょうね」
悲しそうに目を伏せるイスターシャ。色々と手を尽くしたけど駄目だったのだろう。
「それでみんなで話し合った結果、エスティアと同じ事をしたくなかったけど、神の力に耐えられる者を召喚する事にしたの」
「……それが俺?」
「他にも沢山いたのだけどね。その中からくじで選んだわ」
……おい、さっきまでのシリアスな話はどこに行った? ニコッと微笑みやがって。綺麗で見惚れてしまったじゃねえか!
「だからあなたには勇者とその子孫たちを止めて欲しいの。これが、神を代表して魔神イスターシャからのお願いよ」
「それを断ったら?」
「別に他の人にお願いするだけよ。まだ、候補は沢山いるからね。ほら、くじ箱も用意しているわよ」
手元に箱を持つイスターシャ。箱を振ると中からしゃらしゃらと音がする。どうする? と首を傾げてくるが、俺の答えは決まっている!
「勿論、行くに決まっているだろ! 俺が勇者を止めてやる!」
「あっ、本当? いやー、助かったわ。それじゃあはい」
俺の返事を聞いたイスターシャはさっきまでの真剣な顔から一転、微笑みながら近づいてきて俺のでこにチュッとキスをして来た。その瞬間、俺の体に暖かいものが流れてくるのと同時に、意識がぼやけてきた。
「あなたには勇者と戦うための力を与えるけど、制約はかけさせてもらうわ。能力は『勇者に対してのみ各ステータス100倍』って能力よ。それ以外は努力しなさい。後、最低5人勇者を止めてくれないと、あなた、童貞から卒業出来ないからね。もしヤろうとしたら、あなたの大事なところに激痛が走るから」
意識が薄れて行く中、イスターシャのそんな声が聞こえて来た。さっきまでの話からして、チートを使っての無双を防ぐためと、無駄に子供を増やすのを止めるためか! くそっ、軽く嵌められた! 俺は薄れゆく意識の中、少し後悔していた。
◇◇◇
「行ったか?」
「……珍しいわね。レイヴェルトが来るなんて。奥さんたちから怒られるわよ?」
「ちょっと話すくらい怒らないさ。それにそんな心配する事はない。イスターシャだけでなく、俺たちの力も少しずつ渡したんだ。そう簡単には死なないさ。俺もアステルに転生された時は彼と同じぐらいだったからな」
「それでもアステル先輩の力をもらっていたんでしょ?……はぁ、あなたの言う通りだと良いんだけど、心配だわ」
あまりにも突然な話にびっくりした俺は、イスターシャに聞き返してしまった。イスターシャはそういう質問がされるのを予測していたのか、自然と指を鳴らす。すると、俺たちの隣に突然机と椅子が現れた。
「少し長くなるから座って話しましょ」
そのまま優雅に座るイスターシャ。足を組んで座る姿はまさに女神だった。布のような物しか着ていないため、足の組んだ姿は眼福だった。腰から伸びるすらっとした綺麗な足。思わずガン見してしまった。
「……人の足見てないでさっさと座りなさい」
「あっ、はい、すみません」
ギロッと睨まれては何も言えない。素直に謝って俺も椅子に座る。イスターシャはそんな俺を見て溜息を吐く。小さい声で「この子で大丈夫かしら?」と呟いているが、それは内容によるぜ。
「まあ、良いわ。まず私たちが主神としている世界の名前は、デストア。あなたが元いた世界には無い剣と魔法が存在する世界よ」
うむ、やっぱり異世界といえばそうでないとな。やっぱり魔法は使ってみたいよな。
「その世界には人族と魔族に分かれているの。人族は言葉の通りあなたたちでいう人間たちの事で、魔族はそれ以外の種族の事を言うの。あなたの世界の書物の中にあるエルフやドワーフ、獣人なども魔族に当てはまるわ。そして、私たちの世界には八神と呼ばれる神がいるわ」
イスターシャはそう言い、デストアにいる神々を教えてくれた。
まずは本人である魔神イスターシャ。
次に闘神レイヴェルト。
賢神レガリス。
獣神アドガルド。
龍神ランドルフ。
精霊神アルティネーゼ。
造神ヘパルガス。
そして人神エスティア。
この八神がデストアで信仰されている神様たちらしい。それぞれの種族が様々な神様を信仰しているらしいのだけど、この中で人神エスティアが1番信仰が多いらしい。
「人族が多いからね。それにエスティアは甘いから、自分に信仰してくれる人にはすぐに加護を与えてしまうの。私たちも努力している人には加護を与えるけど、エスティアはその基準が低過ぎるの」
それから1時間ぐらいその人神エスティアについての愚痴が始まった。直ぐに男神に言いよるとか、ド天然で男神の前で直ぐにHなドジをするとか様々だ。そのHなドジ見てみたいです。
イスターシャの綺麗な女神とは違って愛らしい女神らしく、男神たちは、保護欲が唆られるらしい。イスターシャや他の女神からしたらあざといらしいけど。
「問題が起きたのは600年前。私たち神は人間たちと同じように皆良い神様ばかりじゃないわ。他の世界を手に入れようとする神や、戦うのを見るのが好きな神もいる。600年前にもそんな神がデストアに攻めてきたわ」
深刻そうに頭に手をやるイスターシャ。机に肘を付けているため、体が前屈みになり大きな胸が机の上に載っている。やば、谷間やばっ!
「ちゃんと聞いているの!?」
「あっ、はい、聞いています! ありがとうございます!」
「何がありがとうよ、ったく。私たち神は世界に直接関与する事は禁止されているのよ。力を制限すれば出来るけど、そんなの雀の涙ほど。やる神はいないわ。だから基本間接的に干渉していくの。さっき言ったように加護を与えたりしてね。
その神は私たちの世界に干渉するために色々な事をして来たわ。その中の1つに魔物に神の力を与えた神魔獣とした」
「……神魔獣」
「ええ、それはもうかなりの強さを誇ったわ。世界の中でも最強と言われる者たちで向かっても逃げるのが精一杯で勝てなかった。このままではデストアは他の神に取られる、という時に行ったのが勇者召喚だった。
エスティアが他の男神から聞いた方法で、神の力に耐えられる者を呼び出せば神魔獣にも勝てると。私たちが何かを言う前に、エスティアは天啓を人族に与えて、勇者召喚を行わせた。その結果、その勇者によって神魔獣は倒されて、他の神はデストアから手を引いたのだけど、そこから世界が荒れ始めた。
そんな神魔獣を倒せる程の勇者が物凄く良い人ならば良かったのかもしれないけど、そんな事があるはずもなく、勇者は欲を出した。結果、自分の国を作ったわ。別にそれだけなら構わなかったのだけど、まあ、その勇者が結構酷くてね。人妻であろうが幼女であろうが、自分が認めた女性は力づくで手に入れていった。その結果何が起きたと思う?」
「……争いか?」
「まあ、間違っては無いわね。女性を取られた者、国はその勇者の国と争ったわ。だけど、当然神魔獣を倒すほどの勇者には勝てる訳もなく、いくつもの国が潰れて、勇者の国に飲み込まれていった。
ただ、勇者も当然不死じゃない。召喚されたから40年後に亡くなったわ。勇者は亡くなった。亡くなったけど問題が無くなったわけじゃなかったわ。
次に起きたのが勇者が建てた国の相続争いだった。その馬鹿勇者が何十人と妻を作って孕ませたせいで、誰が後継者になるかの血みどろの争いが行われたわ。人族だけでなく他の種族も巻き込まれての大きな争いが何十年と続いたわ。
その争いを見て悲しんだエスティアはどうしたと思う?」
この話の流れ。そしてもう死んだような目で呆れた声を出すイスターシャ。
「まさか……」
「あなたが思っている通り、様々な国に勇者召喚を教えたのよ。ただ、人族の国だけにね。結果、人族は争いながらも力を持っていった。勇者の子供にも普通の人以上に力を宿していたからそれも拍車をかけて。
そして、それに巻き込まれた多種族は正反対に数を減らしていく。元々そんな数も多くなかった多種族は魔族として1つの国になる事しか助かる道がなかった。
今はデストアには十数人の勇者とその何倍にもなる勇者の子孫がいるわ」
「そうなる前にそのエスティアを止める事は出来なかったのかよ? 同じ神様なんだろ?」
「無理ね。私たちの力は治めている世界の信仰によって変わってくる。そうなったら1番多いのは人族の殆どから信仰されているエスティアには勝てない。私やレイヴェルトなどは人族からも信仰されているけど、それでも、力は及ばないわ。エスティア以外が束になっても多分勝てないでしょうね」
悲しそうに目を伏せるイスターシャ。色々と手を尽くしたけど駄目だったのだろう。
「それでみんなで話し合った結果、エスティアと同じ事をしたくなかったけど、神の力に耐えられる者を召喚する事にしたの」
「……それが俺?」
「他にも沢山いたのだけどね。その中からくじで選んだわ」
……おい、さっきまでのシリアスな話はどこに行った? ニコッと微笑みやがって。綺麗で見惚れてしまったじゃねえか!
「だからあなたには勇者とその子孫たちを止めて欲しいの。これが、神を代表して魔神イスターシャからのお願いよ」
「それを断ったら?」
「別に他の人にお願いするだけよ。まだ、候補は沢山いるからね。ほら、くじ箱も用意しているわよ」
手元に箱を持つイスターシャ。箱を振ると中からしゃらしゃらと音がする。どうする? と首を傾げてくるが、俺の答えは決まっている!
「勿論、行くに決まっているだろ! 俺が勇者を止めてやる!」
「あっ、本当? いやー、助かったわ。それじゃあはい」
俺の返事を聞いたイスターシャはさっきまでの真剣な顔から一転、微笑みながら近づいてきて俺のでこにチュッとキスをして来た。その瞬間、俺の体に暖かいものが流れてくるのと同時に、意識がぼやけてきた。
「あなたには勇者と戦うための力を与えるけど、制約はかけさせてもらうわ。能力は『勇者に対してのみ各ステータス100倍』って能力よ。それ以外は努力しなさい。後、最低5人勇者を止めてくれないと、あなた、童貞から卒業出来ないからね。もしヤろうとしたら、あなたの大事なところに激痛が走るから」
意識が薄れて行く中、イスターシャのそんな声が聞こえて来た。さっきまでの話からして、チートを使っての無双を防ぐためと、無駄に子供を増やすのを止めるためか! くそっ、軽く嵌められた! 俺は薄れゆく意識の中、少し後悔していた。
◇◇◇
「行ったか?」
「……珍しいわね。レイヴェルトが来るなんて。奥さんたちから怒られるわよ?」
「ちょっと話すくらい怒らないさ。それにそんな心配する事はない。イスターシャだけでなく、俺たちの力も少しずつ渡したんだ。そう簡単には死なないさ。俺もアステルに転生された時は彼と同じぐらいだったからな」
「それでもアステル先輩の力をもらっていたんでしょ?……はぁ、あなたの言う通りだと良いんだけど、心配だわ」
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