復讐の魔王

やま

最終話 

 帝国の戦争から1週間後
 グランディーク王国王都


「ちっ、勇者たちは何を一体何をしているんだ!? 奴なら直ぐに帰って来られるから、連絡を寄越すと言っていたはずなのに」


「彼らなら帰って来ないよ」


「だ、誰だっ!?」


 僕の声に慌てて立ち上がるデンベル。デンベルがいる一室は、かつてユフィーの父である陛下と母である王妃が使っていた部屋を使っていた。


 かつては父上たちとユフィー、そして陛下たちと楽しく話し合った事もある部屋だ。その部屋を今は目の前で僕を睨みつけてくるデブが好き放題に使っていた。


 こいつの趣味なのかはわからないが、部屋の中にいる侍女たちは以前の服装とは違い、スカートの丈は短く、胸元は大きく開いているものを着させられていた。


 その侍女たちは突然現れた僕に怯えている。中には見知った顔もいた。以前ユフィーたちに支えていた侍女だ。


「……何者だ貴様。それにどうやってここへと入って来た!」


 侍女たちを見ていると、唾を撒き散らしながら怒鳴るデンベル。ああ、そういえば今はローブで顔を隠していた。僕は頭に被っているローブを脱ぐ。


 僕の顔を見たデンベルは訝しげな表情を浮かべる。しかし、侍女たちの中には僕の顔を見て驚きの表情を浮かべ、涙を流す者もいた。


「僕の顔を忘れたのかデンベル。まあ、お前が殺した奴の顔なんて覚えてないか」


「わしが殺した奴だと?」


「まあ、別に覚えていなくてもいいよ。どうせ殺すから」


 僕は右手に炎心剣を召喚して、デンベルへと迫る。デンベルは慌てて逃げようとするけど椅子に足を絡ませてその場に倒れる。


 喚きながら手を伸ばしてくる……魔法を放つ気か。僕は気が付いていない振りをして迫ると、デンベルは火の玉を放って来た。よりにもよって火魔法か。僕は特に抵抗する事なく受けた。


 その光景を見たデンベルは笑い声を上げ、侍女たちは悲鳴を上げているけど、この程度の火が僕に効くわけがないじゃないか。それよりも上の憤怒の炎を使っているのだから。


 僕はそのまま煙から出て行き、デンベルに剣を振る。笑っていたデンベルも、僕を見て固まり、剣を振るったのを見て目を瞑る。


 そして、宙を舞う腕。デンベルの右腕を切り落としたのだ。目を瞑っていたデンベルも直ぐに痛みが来たのか叫ぼうとするけど、その前に転移で移動し、デンベルを蹴り飛ばす。


 壁に激突したデンベルは、その時頭でも打ったのか血を流して気を失った。僕はデンベルに近づき切った右腕を焼く。出血死で死なれたら面白くないしね。


 デンベルは焼かれる痛みに目を覚まして、その痛みで再び気を失うのを何度か繰り返して最後には気を失った。そのデンベルの首を掴み引きずっていると、僕の前に座り込む侍女たち。


「……エルフリート様……生きていらしたのですね」


「ああ、久し振りだね、ミスティ。君も無事でよかったよ。今からこの国を取り返すよ」


「は、はいっ!」


 部屋の扉を蹴り飛ばすと、外に送っていた炎心騎士が整列しており、足下には部屋の前を守っていた兵士が倒れている。殺してはいないようだ。まあ、デンベルの考えに染まっているようなら殺すけど。


「エル」


「ユリィー」


 侍女たちを引き連れて城の中を歩いていると、前から別のところに転移させていたユリィーたちがやって来た。


 ユリィーというのはユリィーティアの略称だ。そして、前の名前はユフィーリア、またはマリンティアである。


 帝国での戦いの後、クロヴィスたちとは一時休戦になった。理由としては僕が復讐を終わらせるためと、壊滅的な被害を受けた帝国を立て直すため。


 帝都がかなりの被害で機能しなくても、他の領地があるため何とかなるし、周りの国も攻めては来ないだろう。


 僕も帝国に特に思う事はないため、了承した。まあ、立て直した後、奴の野望の通り攻めて来たらその時は許さないけど。


 その時、マリアの事も聞いた。氷帝との戦いで死にかけたところ、精霊であるユフィーに助けられたと。その時、生前の姿に戻っていたのは、僕の魔力を吸収したからだそうだ。そのおかげで上位の精霊に成長する事が出来たらしい。


 そして、死にかけのマリアを助けるため、ユフィーがマリアと同化したという。そのため、マリアでありユフィーであるため、どちらかの名前を呼ぶという事が出来ないため、ヘルガーさんと話し合って名前を考えたのだ。


 それが、ユリィーティア。ユーフィリアとマリンティアの名前を借りて付けた。ユリィーもそれで納得してくれて、ずっとそう呼んでいる。


「見つけた?」


「ええ、でも、もう彼女は……地下で異形を生み出す母体にされていたわ。異形たちは全部倒して、彼女は殺したわ。もう、呻き声をあげる事しか出来なかったから」


「……そうか。わかったよ。マユミの事はこいつのせいで死んだ事にしよう」


 最後の生き残りであるマユミを探してもらったのだけど、やっぱり他の勇者たちのように異形たちはの犠牲になっていたようだ。しかも、男たちに比べて悲惨な事に。


 見つけた時はユリィーたちの判断に任せていたけど、無理矢理生かすより、ユリィーの判断の方がいいだろう。


 それから、僕たちは王都の住民を王城へと集めた。炎心騎士が王都を囲うように立ち、少しずつ中へと集めさせたのだ。


 周りを炎心騎士が囲んでいるため、不安そうにする住民たち。その中で僕はデンベルを引きづりながら皆が見ることが出来る玉座の間のテラスへとやって来た。


 隣にはユリィーが立ち、後ろにルイーザ、マリーシャ、ミミ、カグヤ、クラリスが続く。


 初めは誰が来たかわからなかった住民たちだが、僕が掴んでいるデンベルを掴み上げると声が上がる。その姿を見てデンベルを助けようと来た兵士たちには、炎心騎士を行かせて止める。その間に僕は話を続ける。


「僕の名前はエルフリート・シュバルツ。この男、デンベルに潰されたシュバルツ家の生き残りだ! 僕はこの国を乗っ取ったデンベル・グランディークを殺すために戻って来た!」


 僕のこの言葉にどよめく住民たち。反応はそれぞれだった。僕や左右にいるマリーシャ、ルイーザを見て喜び涙を流す者もいれば、デンベルに従っている勇者に震える者もいる。これは、まだ、死んだ事を伝えていないからね。


 それから、僕たちが生きていて苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる者もいる。これは、ダンベルと甘い汁を啜っていた貴族たちに見られる、こいつらは全員内乱に加担したんだろうね。情報を聞き次第全員殺してやる。


「僕は前国王陛下や王妃様、父上たちを殺したこいつを許さない。現に加担した勇者たちは全員殺した。後はこいつと、それに加担した貴族をすべて殺す」


 僕はそう言い気を失っているデンベルを殴って起こす。目を覚ましたデンベルは眼下に広がる住民たちに驚き、そして僕に掴まれている現状に驚く。そして、何かを喚こうとするけど、その前に首を絞める。叫ばれてもうるさいだけだからね。


「僕はこいつを殺してこの国の王になる。前国王陛下のように、この国を守れるように。もう2度と勇者を召喚しなくても良いように、強く皆を守れる国を作るために!」


 僕はテラスからデンベルを放り投げ、憤怒の炎で燃やす。僕の怒りが篭った炎は、デンベルを一瞬で焼く事はせずにじわじわと身も心も焼いていった。死ぬ恐怖を身に味わいながら死ね。


 僕の復讐が終わってから1週間後に、前国王陛下や王妃、父上たちなど、デンベルの反乱によって亡くなった人たちの国葬を行った。


 陛下たちは葬式はしたけど、父上たちは犯罪者としてされなかった。死体は王都に来た時に既に焼いてしまって残っていないけど、気持ちだけでも正式にしてあげたかったから。


 それに立ち会えなかったユリィーやルイーザにマリーシャも、涙を流しながらみんなの冥福を祈ってくれた。


 僕はそのまま、国王となり、ユリィーを王妃として王国中に報告した。ルイーザ、マリーシャ、ミミにカグヤ、クラリスは側室として。


 彼女たちを側室にしたのは僕の眷属だとか、勇者に恨みを持っている者から守るためとか、色々と理由はあるが、やっぱり僕の側にいてほしかったからだ。


 そして、僕たちは今からゼルテア帝国のクロヴィス、魔国ベルヘイムのヘルガーさんたちと会談を行う。クロヴィスは一時的だろうけど、話し合いをするため。


 ハヤテ、僕が君の代わりにこの国を、大切な人を守っていくよ。もう、君みたいな勇者という被害を出さないため、君が守ろうとしたものを2度と壊さないため。僕は戦う。


「エル、行きましょう」


「ああ」


 大切なみんなと一緒に。

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