復讐の魔王

やま

86.力を合わせて

「はぁっ!」


「おらぁっ!」


 僕とクロヴィスは迫る異形たちを切り倒していく。ただ、前までの比ではない速さで増えていく異形たち。ちっ、こっちが倒すより、増える方が速い。しかも、今までのに比べて力や再生の速度が速い。そのせいで、僕もクロヴィスも攻めあぐねている。


 その間、マコトは帝都を歩き回る。足元の建物や人間たちをまるでゴミのように気にせず踏み潰していく。こいつは外へ向かおうとしているようだ。いくら関係無いからといってもその光景を見るのは腹が立つ。


 ただ、流石にこのままだと数に押し切られるため、僕は炎心剣をマコトの背へと突き刺す。そして僕のしもべを召喚する。


「焼き尽くせ、炎心騎士フレイムリッター!」


 炎で作られた騎士を500体ほど召喚し、異形たちへと向かわせる。異形たちと殴り合い斬り合う炎心騎士たち。力を異形たちより少し強いように魔力を注いでいるため、異形たちを次々と倒していく。


 異形たちの攻めが少し緩んだため、僕とクロヴィスはマコトのところへと目指す。その時、マコトの足元で炎や氷の魔法が炸裂していた。その衝撃で体制を崩したマコト。


 マコトの足元を見れば、氷帝であるメディスとマリ……ア? マリアに似た女性が立っており、2人でマコトの前足へと攻撃を仕掛けていた。


 マリアに似た女性は髪が紺色で、左右違う瞳、マリアの面影を残してはいるが、どこか懐かしい面影も見える。それに懐かしい魔力も。あれは……ユフィーなのか?


 わからない。わからないが、絶対に味方なのは確信出来る。それに、とても大切に思う。早く話したい気持ちが湧き上がって来るけど、今は取り敢えずマコトを殺さなければ。


 メディスとマリアが放った魔法でマコトが大勢を崩したため、背中から異形が落ちていく。異形は背から落ちたくらいでは死なずに、マコトと同じように外へ向かおうとするけど、そこに、走り抜ける2人の影に、放たれる矢と魔法が降り注ぐ。


 走り抜けていく影は剣帝とルイーザだった。ルイーザは血を飲んでいるのか目を赤く輝かせ、異形を切り刻み、剣帝は魔剣を発動して切っていく。


 そして、その2人を助けるように魔法と矢を放つのは、マリーシャにカグヤだった。2人が剣帝とルイーザの背後から迫る異形たちを倒していく。


 更には、ゼルテア帝国兵とグランディーク王国兵が、互いの争いをやめ、力を合わせて迫る異形を倒していた。


 ただ、それが煩わしいのか、マコトが咆哮を放つ。揺れる地面。そして、マコトの体からさっきの小さかった時のように棘が放たれた。


 ただ、先ほどと違うのは、さっきは矢ぐらいの大きさだったが、今は普通の槍の大きさぐらいだったのだ。その槍のような棘が数百と兵士たちへと降り注ぐ。


 あそこにはマリアやルイーザもいるため、あの棘をどうにかしようと向かおうと思ったが、その必要は無かった。


 突然現れた炎の壁に焼かれるか、見えない壁に阻まれて弾かれるか、どちらかの方法で棘はそれ以上進まなかったからだ。


 その魔法を発動していたのは、炎の壁の方は炎帝で、見えない壁の方はミミだった。2人の防御魔法に、槍の棘は全て阻まれた。


「はっ、やるじゃねえか、あいつら。お前の仲間もな」


「これで、人間を殺すのはやめる気になったか?」


「まさか。それとこれは話が別だ。ただ、人間の中でも使える奴がいるという事は再確認出来た。そいつらは助けてやってもいい」


 そう言い再びマコトに向かって走り出すクロヴィス。まあ僕には関係ない人に対しては良いけど。僕もクロヴィスの後を追うようにマコトへと向かう。


 僕たちが近づくにつれて暴れるマコト。異形たちもそれに合わせて攻撃が激しくなっていく。


 僕もクロヴィスも流石に連戦に次ぐ連戦で、少しずつ体力が削られていき、体にも傷が増えていく。


「おらっ! どうした、憤怒よ! 動きが鈍ってるぞ!」


「誰が! お前こそ、歳のせいか動きが悪いぞ、クロヴィス!」


 2人で言い合いながらも、異形を蹴散らしマコトへと近づく。マコトと言ってももう本人の意志はない。ただ体がそこにあるだけ。


 気が付けば僕らの背後にはマリアと氷帝が来ていた。2人は僕たちの方へと異形が来ないように止めてくれていた。そして、こんな時だけど僕はマリアから目が離せなかった。


「マリア……ユフィーなのか?」


「ええ、やっと会えました、エル! 本当は今すぐに抱きつきたいのだけど、ここを抜けてからにしましょ。あっ、ただ、私はマリンティアでありユフィーよ」


 そう言い異形の方へと戻るマリア。どういう事かはわからなかったが、今はユフィーに出会えた事を喜ぼう。そしてもっと話をするためにこいつを……殺す。


 僕は空に向けて炎心剣を掲げる。炎心剣の切っ先から炎が噴き出ていき、空に1つの球体を作っていく。その僕の隣で同じように光心剣に魔力を集めるクロヴィス。奴からも本気の技を放つ気なのだろう。


「いくぞ、憤怒」


「ああ」




 そして2人同時に、マコトへと剣を、自身の最強の技を放つ。


日輪大葬サンズ・デストラクション!」


「暗光天撃斬!」


 2人の技がマコトへと降り注ぐと、巨体は悲鳴を上げながら消し飛んでいく。魔力を纏い抵抗してくるが、僕とクロヴィスの最強の技の前では、こちらの方が上だった。


 もう2度と強欲が復活しないように、全てを消し炭に変えてやる! 周りでは氷帝にマリア、炎帝にミミが周りに被害が及ばないようにマコトを囲うように防壁を作ってくれていた。


「はぁぁっ!」


「うぉぉっ!」


 2人の技がマコトを貫く。そこから更にマコトの体は消し飛んでいき、マコトを消滅させる事が出来た。


 ……これで、勇者の男たちは全員殺した。残るはグランディークに残るあいつらだけだ。奴らを絶対に殺す。

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