復讐の魔王

やま

85.魔王たちVS異形の勇者

「ちっ、鬱陶しい!」


 天井を突き破り、どこかへと走り出したマコトの後を追う僕。奴が出す異形のせいで見失ってしまったけど、奴から放たれる気配を追う。しばらくマコトの後を追いかけて辿り着いたのは、見覚えのある部屋だった。


 僕が辿り着いたのは、玉座の間だった。その中で争う音が轟く。争っているのは当然、異形の姿のマコトと、このゼルテア帝国の皇帝、クロヴィスだ。


 クロヴィスを捕まえようと、マコトが背から手を伸ばすが、全て瞬く間に切り落とされる。マコトは体中を切られるが、それを治すための再生を繰り返して、体から煙を出していた。


 そして、クロヴィスに蹴り飛ばされるマコト。壁を貫き姿を消した。だけど、一方的に攻めていたクロヴィスの表情は険しく、壁の向こうへと姿を消したマコトの魔力は更に膨れ上がっていた。


「ちっ、進化が始まったか」


「進化?」


 僕はクロヴィスの呟きに思わず反応してしまった。まあ、クロヴィスは僕がこの部屋に入って来たことに気がついているからいいのだけど。


「お前も知っているだろう、魔族はある程度成長し限界を超えると、進化する事を。強欲は歴代吸収した魔族の力を利用して強制的に進化する事が出来るんだよ。ほら、来るぞ!」


 クロヴィスがそう言った瞬間、僕たちを軽く握り潰せるくらいの大きさの腕が2本伸びてきて、僕とクロヴィスを掴もうとしてくる。


 僕もクロヴィスもその場から飛び退くが、床を叩いた腕を更に向かって来た。鬱陶しいなこいつ! そう思い炎心剣を叩きつけるように振り下ろす。さっきまでならこれで切り裂く事が出来たが、炎心剣が腕に触れた瞬間、柔らかい衝撃と共に弾かれてしまった。


 柔らかい弾力に戸惑っていると、既に目の前に腕が迫って来た。今から転移では間に合わないので、炎心剣を盾にして防ぐが、今度は途轍もない衝撃が全身を襲う。


 何とか腕を弾く事に成功するが、今度は捕らえるために僕を巻き取ろうとしてくる。流石にこれを受けるわけにはいかない。


 すぐに転移で避け、マコトの前に移動する。そして下から炎心剣を振り上げる。先ほどと同じように柔らかい感触が手に伝わり、先ほどと違うのが、炎心剣が体に触れた瞬間、体中から鋭い針が飛び出して来た事だ。


 直ぐに後ろに飛んで避けたが、少し掠ってしまった。僕はそのままマコトから距離を取る。離れたところではクロヴィスも迫る腕を避けていた。


 進化したマコトは、四足歩行の動物のような両手両足に変わり、僕たちに迫って来た大きな腕を2本、肩から生やしている。背からは頭の方へと向かって棘のような牙のようなものが生えており、腰からは尻尾が生えていた。蜘蛛の次は四足歩行の動物型か。


 その姿の通り、かなりの速さでクロヴィスの方へと向かって行くマコト。肩の腕をクロヴィスへと伸ばしつつ、背から生えている牙を矢のように放つ。


 クロヴィスは迫る腕を光心剣で左右に弾きつつ、放たれた牙を左手で発動する魔力の盾で防ぐ。ただ、その間に迫っていたマコトが真っ直ぐ突進した。


 クロヴィスは光心剣で突進を受け止めるが、力は進化したマコトの方が上のようで、そのまま押される。僕はそれを見ながら炎心剣に魔力を集め炎を纏わせる。


 そして、クロヴィスへと迫るマコトの側面に移動して、炎心剣を振り下ろす。少し反発があるが、この魔力量ならマコトの肉を切り裂く事に成功した。


 ただ、僕の剣が触れた瞬間先ほどのように棘が飛び出してその場から離れなければいけなくなるのだが。僕が攻撃したため、マコトが怯んだ隙にマコトから離れるクロヴィス。僕が付けた傷は既に治ろうと煙を立てていた。


 そして今度は僕の方へと向くマコト。先ほどのように腕を伸ばそうとするが、その隙をついてクロヴィスがマコトの尻尾を切り落とした。


 マコトは尻尾を切り落とされた事により、矛先を切った本人であるクロヴィスへと向ける。だが、今度は僕から意識を逸らしている。


 僕は先ほどのクロヴィスのように、気配を殺してマコトへと迫る。そして、後ろからマコトの後ろ左足を炎心剣で切り裂く。全てを切り落とす事は出来なかったが、半ば以上は切り裂く事が出来た。


 足が切られてバランスを崩したマコトへと、クロヴィスが蹴りを放つ。顔をしたから蹴り上げられたマコトは体を逸らす。そこへクロヴィスが何度も光心剣を振るう。棘も飛び出すが、同じように切り裂いていく。ああ、ああすれば良かったね。


 それからは一方的だった。マコトは本能のまま動くためか、まるでそう設定されているかのように攻撃した者へと攻撃をするせいで、僕かクロヴィス、どちらかに必ず隙を見せる。その隙をついて僕かクロヴィスが攻撃を仕掛けるため、マコトは僕たちに翻弄されっぱなしだ。


 クロヴィスと共闘するような感じは何だか嫌だけど、今は仕方ないと割り切っている。気が付けばマコトの怪我の修復が間に合わないほど、僕とクロヴィスは切りつけていた。


 その場に倒れこむマコト。後はトドメを刺すだけか。そう思っていると、突然動き始める肩の腕。今までで1番の速さだったため、僕もクロヴィスも腕に捕まってしまった。そして、それと同時に再びマコトの体が膨れ上がる。


 マコトの体は今までにない程膨れ上がり、城を粉々に壊していく。もう、城の中では収まり切らなかったのだ。


 ここに来る前に見た異形の巨人のようだけど、中から放たれている魔力は桁違いだ。何となくだけど、これがマコトの最後の進化だろう。 


 僕は炎の爆発で掴んでいる腕を吹き飛ばす。クロヴィスも、闇魔法で腕を消し飛ばしていた。今いるのはマコトの背の上だ。かなり大きくなったマコトは数ある建物どころか、城よりもでかくなってしまった。そのため、僕たちは背になる事が出来たのだけど。


 この巨人の頭にマコトの体が生えている。あそこをどうにかすれば倒せると思う。ただ、背からわらわらと現れる異形たち。これを突破しない事には向こうには行けない。そう考えていたら


「手を貸せ、憤怒の魔王」


 隣にクロヴィスがやって来て、隣に立ち、そんな事を言って来る。


「これ以上、帝都を壊させるわけにはいかねえ。本当はお前なぞに頼みたくはないが、今俺について来られるのはお前だけだ」


 そう言い僕を見て来るクロヴィス。僕はその言葉を聞いて周りを見渡す。粉々に崩れた建物。所々赤く染まる地面。今も戦い続けながらこちらの様子を伺う兵士たち。そして、ここからでも見える僕の仲間たち。みんな突然現れたマコトを見ている。


 別にこの国がどうなろうと僕には関係無いけど、早くマコトを殺さないと、みんなに被害が出るかもしれない。そうなるくらいなら


「わかったよ。やってあげる」


 クロヴィスを手を組むぐらいどうという事は無い。僕もクロヴィスも剣を構えて、マコトに向かって走り出す。


 さあ、マコト。お前を殺してやる!

「復讐の魔王」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く