復讐の魔王
80.皇城の前で
「……奴らは」
炎帝をカグヤたちに任せてからも、湧いて出てくる異形たちを倒して、ようやく皇城に辿り着いた僕たち、ルイーザが目の前の光景に呟いた言葉がこれだった。
城壁から入ったところから皇城の入り口まで続くグランディーク兵と異形たちの死体。そして、その死体の中で戦う3人の姿。
1人は今生きている最後の四帝の1人、両腕と魔力で作った腕で合計4本の剣を持ち、迫る攻撃を防ぎ、敵を切り裂く男、剣帝のラゲルが異形の姿の2人の相手をしていた。
その剣帝ラゲルが相手している2人も僕は見覚えがある。僕だけでなくルイーザやマリーシャもだ。2人には当然話しているからね。2人の兄の最後を。
ラゲルが相手していたのは、マコトと一緒に召喚された2人、アルを殺した勇者タダシとビルを殺した勇者リュウジたった。
アルの妹であるルイーザはタダシを、ビルの妹であるマリーシャはリュウジを睨むが、動き出す事は出来なかった。僕も少し戸惑っている。
理由は、僕たちの知っている2人の姿とかけ離れていたからだ。でも、冷静に考えれば分かる事だった。強欲の力を手に入れたマコトから与えられたのだろう……異形の力を。
ハヤテの言葉が気になった僕は、魔国に帰っている時にヘルガーさんから強欲の力について聞いていた。強欲の力は自分が手に入れた力を別のものに与える事が出来ると。
多分その結果が2人の姿なのだろう。人間だった頃の倍ぐらいの大きさになっているタダシに、気持ち悪いくらい腕が増えているリュウジ。
ラゲルに切り裂かれるが、瞬く間に元の姿に戻る2人。普通に気持ち悪いね。僕は炎心剣に黒炎を纏わせて3人へ纏めて放つ。
気が付いたラゲルは直ぐにその場から離れて黒炎を避けるけど、2人は避けるどころか、ラゲルを追おうとして焼かれた。
僕の炎でその場で焼き崩れている2人。あれだけ殺したかった2人なのに、これだけあっけなく死ぬと、なんとも言えなくなる。こんなんじゃあアルもビルも浮かばれやしない。
もっと痛めつけて、泣き叫ぶまで切り刻んでから殺してやればよかった。少し後悔していると、両手を握られる感覚。左右を見ればマリーシャとルイーザが僕の手を握っていた。
「ありがとうございます、エル兄さん。ビル兄さんの仇をとってくれて」
「ああ、これでアル兄上も天国で喜んでくれるだろう」
2人は笑みを浮かべながらそう言ってくれる。そうだね。2人は喜んでくれているだろうかな。それだったら嬉しいのだけど。少し離れたところでクラリスが寂しそうにしているけど、今だけは許してほしい。そう思っていたのに、邪魔をしてくる人物が1人いた。
「まさか、魔王までやってくるとは、面倒な事になったな」
少し離れたところで剣を構えていたラゲルだった。そしてそのまま向かって来て、剣を振り下ろしてくる。左上から振り下ろしてくる剣を、弾くと右側の2本の剣で突きを放って来た。
僕は下がりながらクロバを逆手で引き抜き、右側の剣を逸らす。防がれたラゲルは僕から距離を取るために下がりながら、4本の剣で斬撃を放ってくる。僕は炎の壁を作り斬撃を防ぐのと同時に、僕の姿をラゲルの視界から消す。
僕は既に転移をラゲルへと貼り付けていたため、転移を発動する。自分の直ぐ横に現れた僕に驚くラゲルだけど、僕が勇者の子孫なのを思い出したのか、直ぐに剣を振ってくる。だけど、体勢が悪い状態での攻撃なんて当たるわけがない。
ラゲルの腕を掴み、地面へと叩きつける。背中から叩きつけられたラゲルは空気を漏らすが、直ぐに立ち上がろうとする。当然させないけど。
ラゲルが立ち上がる前に胸元を蹴り飛ばす。両腕、魔力腕をそれぞれ交差させて防ごうとするが、耐え切れずに吹き飛んでいく。
ラゲルが吹き飛ばされた事で砂煙が立ち込める中、中からボソボソと声が聞こえてくる。
「あー、だりぃな。だがあの人からここを任されたからには、やらねえとなぁ」
面倒臭そうな声だが、その声に反するように膨れ上がる魔力。そして砂煙の中から現れたラゲル。見た目は変わらないが、手に持つ4本の剣が変わっていた。それぞれ、火、水、風、土の魔力を纏う剣。あの4本の剣はそれぞれの属性を持つ魔剣だったのか。
奴が本気を出したのを見て、僕も油断せず構えようとするけど、僕の前に立つ3人の影。ルイーザたちそれぞれが武器を構えて立っていたのだ。
「エル兄上、ここは私たちに任せてくれないか?」
「私たちが剣帝を止めます」
「わ、私も予言の力でサポートします!」
そう言って先を促してくる3人。だけど、3人の言葉に伯爵領の時の事を思い出した。地下に落とされたから彷徨っている間に、ラゲルと戦ったルイーザたち。あの時はクラリスではなくてミミだったけど、勇者であるミミがいても、負けたのだ。そんな相手を彼女たちだけに任せるなんて……
「兄上は前の事を考えているのだろう。だけど、あれから私たちは何もしなかったわけではない」
「そうですよ。私たちも色々な人に師事をして少しは強くなったつもりです。もう、エル兄さんに守ってばかりの私たちではありません」
……その言い方はなんだか悲しくなるけど、確かに彼女たちはヘルガーさんの部下たちと訓練をして強くなっている……ここは、彼女たちに任せよう。マリアやカグヤたちのように信じなくちゃね。
「わかったよ。ラゲルは3人に任せる。だけど」
「「「必ず生き残る!」」」
僕が言おうとした言葉を3人が揃えて言う。僕は苦笑いしながら頷き、城の中を目指す。ラゲルが邪魔をしようとするけど、マリーシャが魔法を放って牽制し、そこへルイーザが迫る。任せたよ、みんな。
炎帝をカグヤたちに任せてからも、湧いて出てくる異形たちを倒して、ようやく皇城に辿り着いた僕たち、ルイーザが目の前の光景に呟いた言葉がこれだった。
城壁から入ったところから皇城の入り口まで続くグランディーク兵と異形たちの死体。そして、その死体の中で戦う3人の姿。
1人は今生きている最後の四帝の1人、両腕と魔力で作った腕で合計4本の剣を持ち、迫る攻撃を防ぎ、敵を切り裂く男、剣帝のラゲルが異形の姿の2人の相手をしていた。
その剣帝ラゲルが相手している2人も僕は見覚えがある。僕だけでなくルイーザやマリーシャもだ。2人には当然話しているからね。2人の兄の最後を。
ラゲルが相手していたのは、マコトと一緒に召喚された2人、アルを殺した勇者タダシとビルを殺した勇者リュウジたった。
アルの妹であるルイーザはタダシを、ビルの妹であるマリーシャはリュウジを睨むが、動き出す事は出来なかった。僕も少し戸惑っている。
理由は、僕たちの知っている2人の姿とかけ離れていたからだ。でも、冷静に考えれば分かる事だった。強欲の力を手に入れたマコトから与えられたのだろう……異形の力を。
ハヤテの言葉が気になった僕は、魔国に帰っている時にヘルガーさんから強欲の力について聞いていた。強欲の力は自分が手に入れた力を別のものに与える事が出来ると。
多分その結果が2人の姿なのだろう。人間だった頃の倍ぐらいの大きさになっているタダシに、気持ち悪いくらい腕が増えているリュウジ。
ラゲルに切り裂かれるが、瞬く間に元の姿に戻る2人。普通に気持ち悪いね。僕は炎心剣に黒炎を纏わせて3人へ纏めて放つ。
気が付いたラゲルは直ぐにその場から離れて黒炎を避けるけど、2人は避けるどころか、ラゲルを追おうとして焼かれた。
僕の炎でその場で焼き崩れている2人。あれだけ殺したかった2人なのに、これだけあっけなく死ぬと、なんとも言えなくなる。こんなんじゃあアルもビルも浮かばれやしない。
もっと痛めつけて、泣き叫ぶまで切り刻んでから殺してやればよかった。少し後悔していると、両手を握られる感覚。左右を見ればマリーシャとルイーザが僕の手を握っていた。
「ありがとうございます、エル兄さん。ビル兄さんの仇をとってくれて」
「ああ、これでアル兄上も天国で喜んでくれるだろう」
2人は笑みを浮かべながらそう言ってくれる。そうだね。2人は喜んでくれているだろうかな。それだったら嬉しいのだけど。少し離れたところでクラリスが寂しそうにしているけど、今だけは許してほしい。そう思っていたのに、邪魔をしてくる人物が1人いた。
「まさか、魔王までやってくるとは、面倒な事になったな」
少し離れたところで剣を構えていたラゲルだった。そしてそのまま向かって来て、剣を振り下ろしてくる。左上から振り下ろしてくる剣を、弾くと右側の2本の剣で突きを放って来た。
僕は下がりながらクロバを逆手で引き抜き、右側の剣を逸らす。防がれたラゲルは僕から距離を取るために下がりながら、4本の剣で斬撃を放ってくる。僕は炎の壁を作り斬撃を防ぐのと同時に、僕の姿をラゲルの視界から消す。
僕は既に転移をラゲルへと貼り付けていたため、転移を発動する。自分の直ぐ横に現れた僕に驚くラゲルだけど、僕が勇者の子孫なのを思い出したのか、直ぐに剣を振ってくる。だけど、体勢が悪い状態での攻撃なんて当たるわけがない。
ラゲルの腕を掴み、地面へと叩きつける。背中から叩きつけられたラゲルは空気を漏らすが、直ぐに立ち上がろうとする。当然させないけど。
ラゲルが立ち上がる前に胸元を蹴り飛ばす。両腕、魔力腕をそれぞれ交差させて防ごうとするが、耐え切れずに吹き飛んでいく。
ラゲルが吹き飛ばされた事で砂煙が立ち込める中、中からボソボソと声が聞こえてくる。
「あー、だりぃな。だがあの人からここを任されたからには、やらねえとなぁ」
面倒臭そうな声だが、その声に反するように膨れ上がる魔力。そして砂煙の中から現れたラゲル。見た目は変わらないが、手に持つ4本の剣が変わっていた。それぞれ、火、水、風、土の魔力を纏う剣。あの4本の剣はそれぞれの属性を持つ魔剣だったのか。
奴が本気を出したのを見て、僕も油断せず構えようとするけど、僕の前に立つ3人の影。ルイーザたちそれぞれが武器を構えて立っていたのだ。
「エル兄上、ここは私たちに任せてくれないか?」
「私たちが剣帝を止めます」
「わ、私も予言の力でサポートします!」
そう言って先を促してくる3人。だけど、3人の言葉に伯爵領の時の事を思い出した。地下に落とされたから彷徨っている間に、ラゲルと戦ったルイーザたち。あの時はクラリスではなくてミミだったけど、勇者であるミミがいても、負けたのだ。そんな相手を彼女たちだけに任せるなんて……
「兄上は前の事を考えているのだろう。だけど、あれから私たちは何もしなかったわけではない」
「そうですよ。私たちも色々な人に師事をして少しは強くなったつもりです。もう、エル兄さんに守ってばかりの私たちではありません」
……その言い方はなんだか悲しくなるけど、確かに彼女たちはヘルガーさんの部下たちと訓練をして強くなっている……ここは、彼女たちに任せよう。マリアやカグヤたちのように信じなくちゃね。
「わかったよ。ラゲルは3人に任せる。だけど」
「「「必ず生き残る!」」」
僕が言おうとした言葉を3人が揃えて言う。僕は苦笑いしながら頷き、城の中を目指す。ラゲルが邪魔をしようとするけど、マリーシャが魔法を放って牽制し、そこへルイーザが迫る。任せたよ、みんな。
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