復讐の魔王

やま

78.氷帝再び

「……これは酷いな」


 帝都へと転移して来た僕たちが初めに見た光景は、炎に包まれた帝都だった。逃げ惑う住民たちを襲う王国兵と、住民を守ろうとする帝国兵が入り乱れて、帝都の中は叫び声と悲鳴が木霊していた。その上


「あの白いのって」


「ええ、大墳墓で現れた化け物でしょうね」


 マリーシャの言葉にマリアが答える。確かにあれは、大墳墓で現れた化け物だ。顔が無くのっぺらとした化け物が、敵味方関係無く襲っていた。


「どうする、エル兄上。このまま放っておくか?」


 その光景を見ていると、ルイーザがそう尋ねて来た。帝国の兵士や住民、グランディークの兵士がどうなろうと、知った事ではないけど、マコトの仕業だと思うと腹が立つね。


「僕がやるよ」


 僕は外壁から飛び降り街へと入る。僕が入った事に気が付いた異形の化け物たちが、一斉に迫って来た。それを気にする事なく魔力を集めて憤怒の炎心剣を右手に持ち、僕の見える範囲にいる異形たちへと空間を繋げる。


「炎転斬!」


 そして、魔力を圧縮した斬撃を放つ。放たれた斬撃を光魔法で転移させ、繋いだ空間を移動させる。次々と転移していく斬撃に切り刻まれる異形。


 しかし、これは今僕の見える範囲だけだ。ある程度倒したら別のところから湧いてくる。結局は元凶を倒さないと意味がないってわけか。


 更にわらわらと集まって来た異形たち。もう一度斬撃を放とうとした時に、後ろから矢と氷の雨が降り注ぎ、地面からは氷の棘が伸びて来た。


 僕はその場から跳びのき氷の棘を避ける。氷の棘に突き刺さるものや、氷と矢の雨に頭を潰された異形の死体が残る中、辺りの気温が下がるのがわかる。そして、その元凶が姿を現した。


「魔力を感じてまさかとは思ったが、来ていたとはな、魔王よ」


 帝国の四帝の1人、氷帝メディスが細剣を構えながらやって来た。彼女が魔力を漂わせるだけで辺りの気温が下がっていく。


 まさか、こんな早くに現れるとは。四帝はもう少し皇城に近づかないと現れないと思っていたけど。さて、どうしたものかと考えていると、僕の肩に置かれる手。振り向くと、マリアがニヤリと獰猛な笑みを浮かべていた。


「マリア?」


「ここは任せて頂戴、エル。彼女は私が相手するわ」


 マリアはそういうと腰のドライシスを抜き構える。そして、辺りにマリアの魔力が漂う。メディスと同じように氷魔法が得意なはずなのに、どうしてか彼女の魔力は暖かく感じる。


「あなたはやるべき事があるでしょ? ふふ、そう心配しないで。彼女を倒したら後を追いかけるから」


 マリアはそう言うけど、メディスとの実力は五分といったところだろう。それに……いや、彼女がそう言ってくれているんだ。僕が信じないでどうするんだよ。


 敵であるメディスの前だけど、僕はマリアを抱き締める。マリアは驚きながらも抱きしめ返してくれた。そして、黙ったまま離れた僕たちは、そのまま先を目指す。


 突然の行動に呆気にとられていたメディスだが、流石に抜けようとする僕たちを見逃す事は無く、止めようとしてくるけど、竜の翼を広げたマリアがメディスへと迫る。


「早く行きなさい!」


 僕たちはマリアの声を背に受けながら先へと進む。僕たちが離れた瞬間、一気に背後が寒くなる。死んだらダメだからね、マリア。


 ◇◇◇


「……中々やるな。その翼、竜人か?」


「私はハーフよ。闇の支配者であるヴァンパイアロードと、竜族の中でも最強の一角、青竜王のね!」


 私は下がるメディスへと氷の剣を放つ。メディスは剣の先端から氷を柔らかく伸ばして鞭のように振るう。放った氷の剣は全てはたき落とされたけど、私は翼をはためかせ、ジグザグに飛びながらメディスへと迫る。


 メディスは器用に氷の鞭を振るい、私の食べる範囲を制限してくる。さすがは四帝ね。だけどその程度じゃあ止められないわよ!


「アイスウィング!」


 竜の翼を氷で強化して鞭を切り刻む。そのまま翼をはためかせ、氷風の刃を放つ。メディスは氷の壁をつくり刃を防ぎ、そして、返してくるように壁から氷の刃を放って来た。


 私は更に高く飛び上がり、氷の刃を避ける。空からメディスを見下ろしていると、ニヤリと笑みを浮かべるメディスの姿があった。


「ククッ、まさか真正面から氷で挑んでくる者がいるとは思わなかったぞ。これなら、私も本気で戦えそうだ。私の力に凍らされるなよ?」


 メディスがそう言った瞬間に、辺りの気温が一気に下がった。氷魔法を使う私はまだ大丈夫だけど、メディスを中心に辺りの建物や地面が凍っていく。


 魔力だけで辺りを凍らせていくメディス。これが彼女の本気ってわけね。それなら、私も本気を出さなきゃね。

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