復讐の魔王
77.最後の戦いへ
「アイスランス!!」
「フレイムランス!!」
四方から放たれるそれぞれの魔法の槍。僕は槍が迫る中、一歩も動かない。動かないまま自身の周りに光魔法を発動する。
転移の魔法を自分の周りに展開し、魔法の槍を転移させる。魔法の槍は僕の体を通り抜けたように過ぎ去り地面へと突き刺さる。
「はぁっ!」
槍の後ろに隠れて迫ってくるルイーザ。ルイーザの剣が僕の体に触れる瞬間に僕は少し横にズレるように転移する……これは別に転移しなくて普通に避けるのでもいいか。
そんな事を思いながらもルイーザの腕を掴み、地面へと叩きつける。叩きつけると言っても敵にやるようなものではなく、痛みがないようにだけど。きゃっ! と、可愛らしい悲鳴をあげながら地面に倒れるルイーザ。
「死ね」
そんな中で1人だけ本気で僕を殺しに来ている女性。軌道を変えながら全て僕の急所へと放ってくる矢を、転移させて矢同士ぶつけて避けると舌打ちが聞こえてくる。あいつ。
「ふぅ……流石ね、エル。そんな方法で魔法を避けられたらどうしようも出来ないわよ」
そう言い苦笑いしながら近づいてくるマリア。その隣にはマリーシャもいて、似たような表情を浮かべていた。
ハヤテ・シュバルツに戦い方を教えてもらったから2ヶ月。ハヤテのおかげで帝国から無理矢理カグヤを連れて帰って来られた僕は、みんなを連れて一旦魔国ベルヘイムへと帰って来た。
帰って来たのはいつものメンバーであるマリア、マリーシャ、ルイーザ、ミミに加えて、無理矢理連れて来たカグヤにクラリスだ。
クラリスはてっきり墓守の一族の皆と一緒に残るのかと思ったけど、大叔母様が彼女を送り出したのだ。色々なものを見て学んでくるようにと。
魔国へ帰って来てからは、ヘルガーさんにハヤテの戦い方を聞いて自分の体を馴染ませる訓練をこの2ヶ月はやって来た。
当然、ハヤテとは体格も魔力量も戦い方も違うから、ハヤテの真似をするのではなく、自分の戦い方の幅を広げるための訓練を。まあ、それでもハヤテの戦い方から学べる部分は多い。色んな部分を参考にさせてもらっている。
「でも、まだまだだよ。本物の動きに比べたら」
僕の中に残るハヤテの動き。あれに比べたらまだまだだと自分では思ってしまう。
「まあ、そう卑下する事はねえよ」
自分の力について考えていると、後ろから声をかけられる。振り返るとヘルガーさんが立っていた。側にはドッペルゲンガーのペルスさんも一緒に。ペルスさんはグランディーク王国で諜報員をしている人だ。その人がここにいるって事はグランディークで何かあったのだろうか?
「ありがとうございます、ヘルガーさん。それで何かあったのですか? ペルスさんがここにいるって事は?」
「ああ、グランディークとゼルテアとの戦争が始まった」
「なっ!?」
……それは突然すぎるだろう。だけど、あのクロヴィスの雰囲気からいつ起きてもおかしくないとも思える。そう思っていたが
「仕掛けたのはグランディークからだ。奴らは宣戦布告も無しに、ゼルテアとの国境を攻め入った。出遅れたゼルテアは押され続けたが、四帝の1人、武帝を送らせた。奴は、昔から生きる魔族の中で、ウィルベルトと長い付き合いの者で、かなりの強さを持つ男で、一時はグランディークを押し返したが……」
そこで言い淀むヘルガーさん。まさか……
「武帝は勇者マコトに敗北、殺された」
ヘルガーさんの言葉に静まり返る僕たち。武帝ってあよ白髪の老人だよね。対峙した感じだとかなりの実力を持っていたと思う。それこそ獣王クラスの実力を。それをどうやって?
「エルが不思議に思うのも当然だ。ペルスの報告の中にも奴が勝てる要素は無かった……ついこの間までは」
「何かあったのですか?」
「お前も知っているはずだ。お前も目の前で目撃していたからな。奴が……勇者マコトが強くなった理由は、強欲に選ばれたからだよ」
その言葉に僕はハヤテからの言葉を思い出す。強欲だけは人間にも使える、という言葉を。あの時は考えもしなかったけど、まさかよりにもよってマコトが選ばれるなんて。
……いや、マコトだからこそ強欲に選ばれたのか。自分が強くなるためだからと、笑いながら僕の親友を殺した奴だからこそ。
気が付けば、血が滴るほど拳を握りしめ、辺りに魔力を放っていた。ヘルガーさんが庇ってくれなければ、みんなに迷惑をかけていたところだ……ふぅ、落ち着かないと。今ここで怒っても仕方ない。これからどうするか考えないと。
「マコトたちは今どこに?」
「奴らは帝国内へと入り、帝都を目指している。ウィルベルトも、帝都で迎え撃つつもりなのか、そこに兵士を集めているようだ。ただ」
「マコトには光魔法があります。奴だけですが、1人帝都の中へと入る事が出来ます」
「ああ。まあ、長年ハヤテと争って来たウィルベルトだ。転移の対処は出来ているだろう。それでお前はどうするつもりだ?」
真剣な眼差しで尋ねてくるヘルガーさん。そんなの答えは決まっている。僕の目的は蘇ってからはただひとつ。
「行きますよ、マコトを殺しにね」
待っていろよ、マコト。必ず僕の手でお前の息の根を止めてやる。
「フレイムランス!!」
四方から放たれるそれぞれの魔法の槍。僕は槍が迫る中、一歩も動かない。動かないまま自身の周りに光魔法を発動する。
転移の魔法を自分の周りに展開し、魔法の槍を転移させる。魔法の槍は僕の体を通り抜けたように過ぎ去り地面へと突き刺さる。
「はぁっ!」
槍の後ろに隠れて迫ってくるルイーザ。ルイーザの剣が僕の体に触れる瞬間に僕は少し横にズレるように転移する……これは別に転移しなくて普通に避けるのでもいいか。
そんな事を思いながらもルイーザの腕を掴み、地面へと叩きつける。叩きつけると言っても敵にやるようなものではなく、痛みがないようにだけど。きゃっ! と、可愛らしい悲鳴をあげながら地面に倒れるルイーザ。
「死ね」
そんな中で1人だけ本気で僕を殺しに来ている女性。軌道を変えながら全て僕の急所へと放ってくる矢を、転移させて矢同士ぶつけて避けると舌打ちが聞こえてくる。あいつ。
「ふぅ……流石ね、エル。そんな方法で魔法を避けられたらどうしようも出来ないわよ」
そう言い苦笑いしながら近づいてくるマリア。その隣にはマリーシャもいて、似たような表情を浮かべていた。
ハヤテ・シュバルツに戦い方を教えてもらったから2ヶ月。ハヤテのおかげで帝国から無理矢理カグヤを連れて帰って来られた僕は、みんなを連れて一旦魔国ベルヘイムへと帰って来た。
帰って来たのはいつものメンバーであるマリア、マリーシャ、ルイーザ、ミミに加えて、無理矢理連れて来たカグヤにクラリスだ。
クラリスはてっきり墓守の一族の皆と一緒に残るのかと思ったけど、大叔母様が彼女を送り出したのだ。色々なものを見て学んでくるようにと。
魔国へ帰って来てからは、ヘルガーさんにハヤテの戦い方を聞いて自分の体を馴染ませる訓練をこの2ヶ月はやって来た。
当然、ハヤテとは体格も魔力量も戦い方も違うから、ハヤテの真似をするのではなく、自分の戦い方の幅を広げるための訓練を。まあ、それでもハヤテの戦い方から学べる部分は多い。色んな部分を参考にさせてもらっている。
「でも、まだまだだよ。本物の動きに比べたら」
僕の中に残るハヤテの動き。あれに比べたらまだまだだと自分では思ってしまう。
「まあ、そう卑下する事はねえよ」
自分の力について考えていると、後ろから声をかけられる。振り返るとヘルガーさんが立っていた。側にはドッペルゲンガーのペルスさんも一緒に。ペルスさんはグランディーク王国で諜報員をしている人だ。その人がここにいるって事はグランディークで何かあったのだろうか?
「ありがとうございます、ヘルガーさん。それで何かあったのですか? ペルスさんがここにいるって事は?」
「ああ、グランディークとゼルテアとの戦争が始まった」
「なっ!?」
……それは突然すぎるだろう。だけど、あのクロヴィスの雰囲気からいつ起きてもおかしくないとも思える。そう思っていたが
「仕掛けたのはグランディークからだ。奴らは宣戦布告も無しに、ゼルテアとの国境を攻め入った。出遅れたゼルテアは押され続けたが、四帝の1人、武帝を送らせた。奴は、昔から生きる魔族の中で、ウィルベルトと長い付き合いの者で、かなりの強さを持つ男で、一時はグランディークを押し返したが……」
そこで言い淀むヘルガーさん。まさか……
「武帝は勇者マコトに敗北、殺された」
ヘルガーさんの言葉に静まり返る僕たち。武帝ってあよ白髪の老人だよね。対峙した感じだとかなりの実力を持っていたと思う。それこそ獣王クラスの実力を。それをどうやって?
「エルが不思議に思うのも当然だ。ペルスの報告の中にも奴が勝てる要素は無かった……ついこの間までは」
「何かあったのですか?」
「お前も知っているはずだ。お前も目の前で目撃していたからな。奴が……勇者マコトが強くなった理由は、強欲に選ばれたからだよ」
その言葉に僕はハヤテからの言葉を思い出す。強欲だけは人間にも使える、という言葉を。あの時は考えもしなかったけど、まさかよりにもよってマコトが選ばれるなんて。
……いや、マコトだからこそ強欲に選ばれたのか。自分が強くなるためだからと、笑いながら僕の親友を殺した奴だからこそ。
気が付けば、血が滴るほど拳を握りしめ、辺りに魔力を放っていた。ヘルガーさんが庇ってくれなければ、みんなに迷惑をかけていたところだ……ふぅ、落ち着かないと。今ここで怒っても仕方ない。これからどうするか考えないと。
「マコトたちは今どこに?」
「奴らは帝国内へと入り、帝都を目指している。ウィルベルトも、帝都で迎え撃つつもりなのか、そこに兵士を集めているようだ。ただ」
「マコトには光魔法があります。奴だけですが、1人帝都の中へと入る事が出来ます」
「ああ。まあ、長年ハヤテと争って来たウィルベルトだ。転移の対処は出来ているだろう。それでお前はどうするつもりだ?」
真剣な眼差しで尋ねてくるヘルガーさん。そんなの答えは決まっている。僕の目的は蘇ってからはただひとつ。
「行きますよ、マコトを殺しにね」
待っていろよ、マコト。必ず僕の手でお前の息の根を止めてやる。
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